株式会社横山工藝 代表取締役 横山 国男 の日記 | 経営者会報 (社長ブログ)
「プリント道」45年余。新たな自身の夢と後継者への手紙-(株)横山工藝社長 横山国男のブログ
「人・モノ・私」-1。 ”石田縞”と母さんの夜なべ
♪母さんが夜なべをして手袋編んでくれた・・・・という懐かしい唄がありますね。
夜なべの語源はよく知りませんが、現代でいうと「残業」みたいなものでしょうが、
そういう味気ない言葉ではニュアンスが伝わりません。
私たちの年代で、この唄から連想するのは、季節は冬、外は木枯らしか雪、
場所は囲炉裏端、綿入れの半纏を着た頬っぺたの赤い子供たち。
母親がいるシーンとしては「里の秋」もとても好きですが、今の子供たちにはなか
なかイメージするのは難しいでしょう。
子供の頃、私の家は市街と農村の境目ぐらいにあり、中学校はまわりはすべて
田圃、親戚には農家もありましたので、農家、農作業はなじみ深いものでした。
雪深い土地なので、このあたりの農家は冬はもっぱら家の中で「むしろ」「縄」など、
春になると必要になるものを、時には「夜なべ」までして手作りしたようです。
・・・・・・・・・・・・・・・・
福井市に隣接する鯖江市に「石田地区」というところがあります。
ここで昔から織っていたのが「石田縞」といわれる綿の小幅の素朴な織物。
たしか「石田藩」というのも聞いたことがありますから、「小藩」の物産としての
位置付けがあったかも知れません。
詳しくは知らないのですが、おそらく産業とか企業というスケールではなく、
農家の女性の副業として、「いざり機(はた)」と呼ばれる手織り機で織られて
いたものと勝手に想像しているのですが、かなり前に姿を消してしまいました。
高度成長期には、採算のとれる仕事ではなくなったからだと思います。
写真のような柄は子供のころの布団に見覚えがありますから、おもに布団の
側(がわ)、紺無地のものは、このへんでいう「さっくり」という上半身は柔道着
のようなもの、下は股引のような農作業着としてよく見かけました。
昔は結構農家で副業として「機を織った」ようですね。私は工業高校で「紡織科」
でしたから、実習でよく機を織りましたが、小幅のこのような綿織物を織るのも
楽しいものでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
このような「手機(てばた)」で織られたものには、「信州紬」や「白山牛首紬」
などが現在も工芸品に近い伝統織物として(その多くは機械式織機)残っては
いますが、「石田縞」のような素朴な織物は以前は各地にありました。
母親は「縞割」といって、その糸の本数や配列を、小布の見本を貼った和紙の
小ぶりの帳面に「覚え」として書きつけました。それが「縞帳」と呼ばれるもので、
娘が嫁入りする時、持たせたという話もあります。
中にはコレクター垂涎のものもあり、美しい「デザイン帳」ともいえるものもあり
ます。
おそらく世界各地にこのような例があり、バティックやマドラスチェックなどもそう
いう形で伝えていったのではないかと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
残念ながら私は若い頃、そのような貴重なものという認識がありませんでした
ので、何も持っていないのですが、写真の織物は最近「謝礼」として2mほど
頂いたものです。
「古い呉服屋さんから、石田縞を一反譲って頂いたので、これを改装するホテル
のロビーに飾りたいが、どんな方法がいいですかね、やってもらえませんか」と
いうご相談があり、当社では経験がないので、パネルに仕立てる工房をご紹介
しました。
「もし、余り布が出たら頂戴できませんか」とお願いしておきましたところ、余りは
ほとんど出なかったので、その呉服屋さんにわざわざお願いして、残っていた別
の柄のものを探し出して届けて下さったものです。
手で撫でると節があり、ちょっとゴワゴワしていますが、「絹もの」とはまた違った
土の匂い、おふくろを思い起こさせる「優しさ」を感じさせていいモノです。
横山国男
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/
【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
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