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2011年01月09日(日)更新

『水を飲む人は井戸を掘った人の恩を忘れない』

1972年に日中の国交が正常化するとき、周恩来首相が「我が国では
水を飲むときには井戸を掘った人を忘れない」と謝意を伝えたとされて
います。この背景というか出所を初めて知りましたが、この言葉を何かで
読んでとても心に響き、今日までずっと記憶にありました。

日本では長く「水と安全はタダ」といわれてきて、私も日頃「水」に感謝
することを忘れがちなのですが、世界193カ国で水道水が飲めるのは
わずか11カ国とのこと。中でも日本の水の品質はずば抜けていて、しかも
全国で高いレベルで管理・供給されています。

石油などは代替燃料が次々と開発されていますが、水は他の何物にも置きか
えることの出来ない「生命のもと」です。
このように質量ともに水は一応充足されているように見える恵まれた我が国
ですが、翻って輸入される食糧、飼料、木材などは生成の過程で大量に原産
地の貴重な水を費消していることになるという事実を知りました。
いわば日本は一方で大量に水を輸入してきたことになるわけです。

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「21世紀、水が最も重要な資源になる」といわれています。東京都が
世界一の技術とシステムを誇る「東京水道」をアジア各国にビジネス展開
しようと動き出している、という記事を『致知 2月号」(致知出版社)
に猪瀬副知事が書いています。

新幹線などもそうですが、車両や軌道の高度な技術もさることながら、その
極限まで高められた「運行システム」こそが断然世界のトップなのです。
日本の「水道」は、漏水率だけとってもロンドンの10~20%,発展途上国
の40~60%にくらべわずか3%だそうで、電気などとともに高度な技術と
システムによる管理が営々と積み上げられてきたことがわかります。

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私たちは、井戸を掘った人たちの苦労を思い起こし、そしてそれを世界最高
のシステムにまで高めた日本人として誇りを持ち、今その技術やシステム
を「発展途上国の病の40%が浄水されていない水が原因」といわれている
世界の水に苦しむ人たちへ提供することが、考えようによっては金で水を
奪ってきたことに対する恩返しなのではないか、とそんな風に年の初めに
考えさせられました。


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2010年10月05日(火)更新

『雲水日記』・・本。

最近、ワタクシ的にはこんなに面白い本はありませんでした。
『雲水日記』(禅文化研究所刊)~絵で見る禅の修行生活~というサブ
タイトルがついています。

帯に「禅堂入門から僧堂の歳時記まで、古来からの伝統に従って行われる
禅の専門道場での修業生活を96枚の飄逸な漫画で描く」とあります。

画・文を書かれたのは、佐藤義英という禅僧で、京都東福寺(臨済宗)で
修行ののち、三重県上野市法泉寺に住職されましたが、病を得て昭和42年
47歳で世を去られました。病床にあった10年の間に、東福寺での修業体験
をもとにこの絵日記風の画文を書きあげられたそうです。

「雲水日記」絵で見る禅の修行生活 画・文=佐藤義英
写真【本の表紙】「雲水日記」絵で見る禅の修行生活 画・文=佐藤義英

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茶・華道、料理など禅の文化は現代の私達の生活に深く根付いていますが、
何より興味を惹かれるのはそのシンプルで究極のエコとも言うべき日常。

一般の人の飾り立てた余計なものばかりの「衣・食・住」から、これだけ
あれば生きて行けるという「基本」に徹するための粗衣粗食と「起きて
半畳、寝て一畳」といわれる僧堂での生活は、そのままが修行の一環。
「己事究明」に必要なもの以外は一切排除されるというわけです。

禅師、禅僧となるには、学歴や社会でどのような地位にあろうと一切関係
なく、全て専門道場での修業を終えなければならず、宗門の大学を卒業した
としても関係ないと書かれています。

エッソ石油の副社長から、60歳を過ぎて金沢の大乗寺で修行され、総持寺の
要職まで務められた松野宗純師が、近くの越前市地蔵院住職をお勤めになら
れた数年間、「地蔵人間塾」でお話をお聞きしたことがあります。
現代版寺子屋のようなもので、禅に対する興味が深まりました。

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本は、志を立てて郷関を出るという「初行脚(はつあんぎゃ)」に始まり、
戒律と鳴らしものといわれる鐘や太鼓や打板の合図によって一定のリズム
に乗りながら整然と一日の生活が流れる様子も描かれていますが、そこは
枯淡の境地には程遠い新米雲水、失敗談や公案に苦しむ姿、坐禅の法悦、
托鉢の喜びなどが生きいきと楽しいマンガと文章で活写されています。

私、「禅・禅宗」の教義などについてはほとんど門外漢、いわばフアンの
ような者ですが、行雲流水からきていると言われる雲水の修行生活日記は、
楽しい禅の案内書としてとても楽しめました。

実はこの本、調べてみると初版は1972年、40年近く前に書かれています。
ちょうどその頃から日本は高度成長に入り、物質的には栄華を極める時代
になっていきます。その半面、失ったものも多いとされていますが、その
後の40年の間に雲水たちの日常に変化があったのかどうかも気になるとこ
ろです。しかし日本に入ってからでも七百年以上の歴史を持つ宗教的思想
の禅が簡単に変わるとも思えません。

宗派のサイトがあり、弁事(私用外出)のついででしょうか、雲水がマック
でくつろぐ現代的な風景なども目にすることがありますが、それはあくまで
表面上のこと、厳しい僧堂での修業は、今もほとんど変わっていないのでは
と想像しています。

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大掃除をしてかなりの書籍・雑誌の類を処分しました。積み上げた本の
中に、私が買った覚えがない本が見えたのがこの「雲水日記」でした。
亡父の居室だった部屋を娘たちが始末したのでそこにあったのでしょう。

父あてのはがきがはさんであり、近所の禅寺から頂いたもののようです。
見つけたのもありがたい仏縁。いいものを残してもらったと感謝です。

禅の修行生活 入門編「安単」
禅の修行生活 - 入門編 -「安単」





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2010年07月31日(土)更新

『断捨離』(その2)何でも捨てればよいのか?

前号で耳慣れぬ言葉として「断捨離」についていろいろ教えられることが
多かったことを書きました。

・・『モノは、入口でストップの「断」 いらないモノは、捨てるの「捨」
モノから離れて、片づけから自由になるの「離」。
難しかった行法哲学が、日常の暮らしの中に落ちていきました。
収納に焦点をあてるのではなく、モノに焦点をあてるのでもなく、自分と
モノとの関係に焦点をあてるのが断捨離だと気付いたのです。
(やましたひでこ著 『ようこそ断捨離へ』「序の章」P-19より)

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全くその通りだと思いますが、この2冊の本が示しているのは、すぐれて
個人の生活、住まいと自分の関係をもっとご機嫌なものにするために書かれ
ていることがほとんどだということです。

もちろん仕事、職場でも整理、整頓・・など5Sの大切さはいうまでもあり
ませんが、“自分とモノとの関係に焦点をあてるのが断捨離”というなら、
当社などの仕事では、古い資料が役にたつケースはかなり多いですし、顧客
との打ち合わせなどで「イメージの摺り合わせ、共有」ではモノが仲立ち
することも少なくありません。

若い人は「古いモノは捨てろ」「邪魔!」と言わんばかりですが、ではモノ
に頼らず、顧客の頭の中にあるイメージを的確に描いてみせる表現力と広範
な知識を持っていますか、と言いたいのです。

もう一つ、モノを通して人間関係が成立し、その後少なからずビジネスに
結び付いた例もあります。

例えば、自分にふさわしくない高額なものはありませんが、書や絵画、
工藝品、書籍などは実際に購入することで作者と一段と近くなるきっかけ
ができ、生涯のお付き合いが生まれたり、当社の仕事を思いだして下さって
ご用命をいただくこともあります。単に見ただけでは深いお付き合いには
ならないでしょう。お互い様です。作者も生活しているのですから。

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~一層求められる「アナログ感覚」~

「佐藤可士和のクリエイティブシンキング」(日本経済新聞出版社刊)の
ブックレビュー(週刊ポスト最新号)で、佐藤さんは次のように述べてい
ます。

『例えば農業に関して何か知りたいという時に、僕らはネットを調べて
わかったような気になる。でも実際はネットの文面を読んだだけで
“読んだ”と“わかった”は違うということにもみんな薄々気づいているん
ですよ。だったら30分でも畑に出て芋の一本も掘った方が情報量は莫大で
そういうリアルな実体験や手触りを伴った「わかる」や<アナログ感覚>
が、今後一層求められていくと思います』

週末は家族で貸農園へ行く、というのが佐藤さんの目下の趣味のようで、
そこからの言葉だと思いますが、進化する情報端末で「事足れり」と考え
ているなら「モノづくり」はできないし、これから優位に立つことも出来
ないと思います。

自分の目で見る、自分の手で持ってみる・・そういうアナログ実体験の
ない人にモノは作れないし、作っても人を共感させることは出来ないでし
ょう。

そもそも買わなければ(断)捨てる(捨)も、もちろん(離)もありませ
ん。(しかし企業経営者としては不景気は困る。自分は買わないけれど、
他人には買って欲しい・・というワケですネ)

ともあれ、私の場合ですが、モノから学んだこと、モノを通して多くの人と
も知り合い、それが少なからず経営に役だってきたこともあったと思ってい
ます。

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2010年07月27日(火)更新

『断捨離』~モノ・コト・ヒト、そして心の片づけ術(その1)

断捨離=“だんしゃり”と読むんだそうで、皆さん結構ご存知らしいんで
すが、この言葉、私は先日初めて知りました。

クラター(がらくた)コンサルタントと称する著者やましたひでこさんの
『新・片づけ術ー断捨離』『ようこそ断捨離へ』を読んでみました。
(新・片づけ術・・は昨年12月の初版から半年で15刷のベストセラー。
世の中、いかに片づけに悩んでいる人が多いかの証明?)

新・片づけ術「断捨離」やましたひでこ (著)  ようこそ断捨離へ モノ・コト・ヒト、そして心の片づけ術 やましたひでこ (著)
写真 『新・片づけ術 断捨離』 『ようこそ断捨離へ』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

きっかけは先日朝のTVのワイドショウで出てきた話題「断捨離」。

おもしろかったのは、床の上に衣類が山積みになってる映像を見ながら、
男性のキャスターが、「このようになかなか片づけられない悩みをお持ち
のお宅も多いですよね」と話し始めて、しばらくすると「・・・・・」と
なり、「あれ?これ僕の部屋だ!!」と、顔を真っ赤にして「誰?だれが
ここ撮ったの?いやー参ったなあ」と大慌て。そりゃー許可したのは奥さん
に違いありません。「TVでかっこいいこと言ってますけど、ホントに片づ
けられないんですよ」という奥さんの怒りが、“公開処刑”という形にな
ったに違いありません。
キャスターのあの大慌てぶり→ご帰宅後二人はどうなったでしょうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

著者は一時流行した「収納」「収納術」では問題は解決しないと言います。
本の帯にあるように「つかわないモノは手放す! ためらっている自分に
踏ん切りをつける!」。・・ウーン、その通りなんですけれど。

長年の間に本や衣類、趣味の道具など結構モノがたまり、しかもなかなか
整理しにくくなってくると、人が主役かモノが主役かわからない=人の目
よりも「これは何か間違っているんじゃないか?」と自問自答するように
なります。

でもそれぞれに「愛着」や「思い出」もあるし。(著者は、それは愛着では
なく執着ではありませんか、と。・・そう言われればそうかも)

著者は「全て心の問題」と、そこを明快に「断」じ、納得させてくれます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

内容豊富ですが、サワリから。
『断捨離とは、不要・不適・不快なモノとの関係を、文字通り、断ち・捨て
・離れ、引き算の解決方法によって停滞を取り除き、住まいの、暮らしの、
身体の、気持ちの、人生の、新陳代謝を促進する・・・』

あるいは『モノの片づけを通して自分を知り、心の混沌を整理して人生を
快適にする行動技術』であり、『家のガラクタを片づけることで、心の
ガラクタをも整理して、人生をご機嫌へと入れ替える方法~そのためには
「断」=入ってくる要らないモノを断つ。「捨」=家にはびこるガラクタ
を捨てる。

そして「断」と「捨」を繰り返した結果訪れる状態を、「離」=モノへの
執着から離れ、ゆとりある“自在”の空間にある私』へと導くのが断捨離
なのです。と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 やましたひでこさんは、大学在学中にヨガ道場で、心の執着を手放す
「断行・捨行・離行」に出会い、これを片づけ術として誰もが実践できる
ようにした、と紹介にあります。東京出身ですが、結婚を機に今は私の近く
石川県小松市にお住まいということでさらに親しみが。

北陸地方の方言「むたむた(取り散らかしたもの、ガラクタ)」・・実感
があっていい言葉だとやましたさんは笑う・・を断捨離することは、時間
の軸を今に戻し、重要軸を自分に据えていくこと。
それは今の自分にふさわしいというモノ選びにつながるはず、とおっしゃる。
そして、モノから始める、コト、ヒト、全て、自分との関係の
 問い直しをしてはどうか
、と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

有り余るモノに埋没しかかっている日本人。一方で日本からの援助物資の
ネームがついたままの学童体操着を嬉しそうに着ている最貧国の子供たち。
(本文から)

この2冊の本は、単なる「収納術」や「片づけ術」のノウハウ本にとどまら
ず、モノを手放せばそれだけスペースが広くなると同時に心が軽くなり、
ご機嫌な日々を手にすることが可能になりますよ、というのがテーマのよう
です。

「断捨離」・・このあともいろいろ考えてみたいと思います。

当分ダンシャリストの
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2010年07月21日(水)更新

「型にはめる」ことの是非

『幼い頃から、「型」にはまった人間になるなと教え込まれて育った。
物事にとらわれない、自由な発想で人生を切り開けと、そう言われ続けて
きた。戦後民主主義の旗の下、いわゆる団塊の世代は、何よりも「型」に
はまったことは悪であると、叩きこまれたのである。
だがそういう教育を施された人間が成人し、職に就き、結婚し、家庭を
持って子供をもうけ、育て上げて見たものは、無節操で自分勝手な若い
世代の、無残な姿であった。
コンビニの前で無様に座りこむ若者たち。公衆の面前でのあからさまな
愛情表現。若い女性たちの、人目をはばからぬ電車内での化粧。
親が子を殺し、子が親をあやめる凄惨な事件の頻発。
これらは何を意味するのか。

確かな規範を持たずに国を動かしてきた大人たちの、自信のなさと、無節
操、安易な金儲け主義、間違った個人主義。そしてそれらの元にある教育の
荒廃。これらの連鎖によって、かかる事態は引き起こされたと断言できる。
要するに我々は失敗したのである。 』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いやー、なかなか手厳しいことをおっしゃるのは『男の作法』(こう書房)
の著者、馬場啓一さん。“はじめに・・人生には型がある。人生の型を
覚えよ”と題した前書きの冒頭部分を引用させてもらいました。

著者自身1948年生まれの団塊世代なので、40項目にわたる服装、酒、
人間関係の深耕、ビジネスマナー、読書や趣味、女性との付き合い方まで
硬軟取り混ぜて「男の作法」を説かれていますが、いわば団塊世代の忸怩
たる思いを、『我々がもっとしっかりしていたら、という悔恨が、本書を
 書かせたのだ。』という前書き最後の一文に凝縮しています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私は著者より6歳も年上なので、いわゆる団塊世代ではありませんが、
その世代とともに仕事をしてきたし、近い感覚も持っていると思います。
カナイはモロ団塊世代です。

確かにどのような教育を受けてきたか、というのは10年、20年後に
現れるものでしょう。もちろん学校教育だけでなく家庭、社会からのもの
も含めてですが。

団塊ジュニアについて「我々とは違うなあ」と思うことはしばしばありま
すが、「我々は失敗したか」という点になると正直よくわかりません。

「今時の若い者は・・」というフレーズは縄文時代からあった、という
笑い話もあるくらいですから。

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「型」については、古典、伝統芸能を学ぶものには常々「守・波・離」
(しゅはり)として大切なものとされています。

受け継がれたものを守り、現代に合わなくなったものを捨て去り、新しく、
独自の工夫を加え、そして今までの「型」を越える。

当社は以前は「型屋(染型屋)」と呼称されていました。「型」は得意
なんですが、通常の仕事や生活で「型にはめる」是非については・・・
よく考えてみたい「案件」ですナ。


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2010年06月15日(火)更新

逆鱗に触れる

『逆鱗(げきりん)とは、伝説上の神獣である「竜(龍)」の81枚の
鱗(うろこ)のうち、あごの下に1枚だけ逆さに生えるとされる鱗のこと
をいう。「竜」は、元来人間に危害を与えることはないが、喉元の「逆鱗」
に触れられることを非常に嫌うため、これに触られた場合には激高し、触れ
た者を即座に殺すとされた』・・・(Wikipedia)

出典は「韓非子」なので、君主と臣下との間の事柄として用いられるよう
ですから、現代においては「課長の逆鱗に触れた」などは誤用でしょう。
せいぜい「社長の逆鱗に触れた」くらいが適当な表現かも知れません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「逆鱗に触れた事例」として、千利休の自刃が痛ましく思い出されます。
太閤秀吉から、思いがけず理由も定かではない不興をかい、切腹に追い
込まれるその辺の真相は謎とされていますが、公表された二つの罪状の
他に、秀吉の側近として振る舞ったことが、関白秀吉の武将間で進行した
権力闘争に巻き込まれたという見方もあるとか。

秀吉の茶頭(さどう)にまで登りつめた利休は、従軍もしているようで、
秀吉から下賜されたと言われる立派な鎧兜が表千家に残っています。
実際には戦闘に加わるというより、陣中にあって茶の湯が武将に一時の
慰安と命の再生を実感させる、というのが大きな役目だったようです。

それにしても、稀代の目利き・毒舌家で利休の高弟だった山上宗二も、利休
のとりなしで一時は秀吉との関係も修復されましたが、結局は耳と鼻をそが
れて斬首されるという、戦国武将の世界とはいえ、「茶の世界」とはおよそ
結び付かない残忍さです。秀吉の猜疑心のなせるわざだったのでしょうか。

現代のビジネス世界においては、殺されこそしませんが、それでも社主や
ファウンダーとか言われる人の「逆鱗に触れた?」と思われるような非情な
人事も時にはニュースになります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「茶を点てて飲む」という、日常生活の俗事のなかに究極の“美”を作り
上げようとした利休、その無念の最後は、“日本人の美意識”という形で
多くの茶道愛好家のみならず、「華道」などと共に庶民にも受け継がれ、
「クールジャパン」の本質を形作るものの一つとなったように思います。

最近、面白く読んだ「茶の湯」関係の本。

千利休 その人と芸術 山上宗二記(現代語全文完訳)
写真 <千利休 その人と芸術> <山上宗二記(現代語全文完訳)>

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2010年03月09日(火)更新

林望著 『節約の王道』 

日曜の夜、欲しい本があったので書店に行く。ついでに林望さんの『節約の王道』
(日経プレミアシリーズ)を買う。

帰ってPCでチェックしたら本体780円の新書版が、アマゾンのユーズドで250円、
『節約の王道』とは程遠いです。

節約の王道(日経プレミアシリーズ) 林望 著

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「なるほど」「あ、自分もそうしている、そう考えている」という点も多かったのですが、
例によって“あとがき”から先に読むと納得と自省の一文が書いてあります。

『・・節約というのは、いってみれば、そういうふうに生活すべてにわたって、まずは
「直視せよ」ということなのである。ほんとうに、こういう生活は合理的なのか、理性
的で文化的なのであるか、果たしてどこか間違ってるところはないのか、自分の
身の丈にあった生活をしているのか、無駄なことに無用の力やお金を使っていない
のか、そういうふうに無限に自省し、直視し、そして宜しからざるところあらば、悪し
きは廃するに躊躇せず、宜しく改むるに逡巡せず、それが言ってみれば節約の
王道である』・・・。

林望先生の風貌もあって、あとがきは夏目漱石を読んでいる感じですが、中身は
とても平易で楽しめる本でした。
節約を説く“哲学書”→780円は安い。本はいいですね。

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このブログで連載400回になりました。節目に、何か気の利いたことを書こう、と
思いましたが、そういうふうに考えるとブログも重荷になるのかも。

読んでくださる方に心から感謝申し上げます。







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2010年03月05日(金)更新

「藤田健吾!」生徒の一人が叫ぶ。「ハイ!」クラス全員が応える。

卒業式のシーズン。
諏訪中央病院の名誉院長鎌田實先生が『週刊ポスト3・12日号』に書かれた
コラム、「ジタバタしない」“泣きながら食べたロールケーキ”は涙なくして読めませ
んでした。(引用させていただきます)

要約すると、
藤田健吾くん(静岡)は、子供のころからサッカーがうまく、ヨーロッパ遠征にも
選ばれるほどだった。しかし、中学3年生で上咽頭がんを発病、その後もサッカー
を続けたが、07年10月9日、彼は17歳で亡くなる。

07年、静岡での鎌田先生の講演会後の楽屋を訪ねた健吾くんのお母さんが、
その後も先生と何度か手紙を交わすようになり、彼の死後発見されたブログの
「翼を失った鳥」の詩に、鎌田先生は、何とかサッカーを続けようと必死にもがいて
いる彼の姿が見えた、と書かれています。

そしてブログは<サッカー部の仲間は、永遠に僕の宝物です。本当にありがとう>
と結ばれていたという。

亡くなって5カ月後の卒業式も感動的だった。
職員会議で健吾くんの名を呼ばないという方針は決まっていた。
それでも幼稚園から一緒だったクラスメートは遺影を制服の中に秘めて入場。

クラス全員の名前を担任が呼び終えた瞬間、生徒の一人が「藤田健吾!」と叫ん
だ。これにクラス全員が「ハイ!」と応えた。
健吾くんの告別式のときに練られたという。   「健吾と一緒に卒業しよう」。

健吾くんが生きていれば、今年は成人式。健吾くんの友人たちは、3年経っても
彼を忘れていなかった。新成人で作る実行委員会は、成人の集いに、ご両親を
招待した。 という。

ご両親は、そのお礼に成人105名全員に紅白のロールケーキを配ったそうで、
鎌田先生にも手紙とともにお母さんから送られてきて、先生は泣きながらロール
ケーキを食べたとあります。

 ================

話は変わりますが、今日の日経39面に、“景気低迷 高3生、袋小路”「大学断念
・・・就職も困難」という記事が載っています。
「今までにない事態」として現場の進路指導の先生が悲鳴をあげている、と。

素晴らしい健吾くんやその仲間たち、後輩が「社会に出られない」という現実。
私達が作ってきたもの、求めてきた社会とはこういうものではなかったはず、という
思いが私の胸を締め付けます。


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2010年01月13日(水)更新

『男おひとりさま道』、『今日よりよい明日はない』

年末、本屋さんで数冊の雑誌と本を買いましたが、雑誌の一冊は初めて手にした
「日経ビジネス Associe」。

特集として“ビジネスの地力を高める大人の教養&マナー2010”と表紙に大書
してあり、どうやら若いビジネスマン向けの雑誌のようです。

記事に関連する特別付録として、1年間で52の課題に挑む「教養促成プログラム」
という小さな小冊子がついています。(マニュアルと呼ぶべきか)

「懐石料理の店で食べる」~和室で懐石料理を食べてみる。座布団の座り方や
箸使いなど作法を守りながら、相手との会話や季節の食材を十分に楽しもう~
という風に、それぞれに解説および指南があります。

以下、「歌舞伎」、「文楽」、「友人とシェークスピアの演劇を観に行く」、「ワイン」、
「日本庭園」、「映画」、「オペラ」の観賞などと続きますが、読むべき本として
『カラマーゾフの兄弟』、『論語』、『古事記』、『徒然草』、『坂の上の雲』はともかく、
『方法序説』、『陰鬱礼賛』、『イスラーム文化』、『ブッダのことば』、
『ガリア戦記』、『二重らせん』、『新訳 君主論』・・・などなど20冊あまり。

驚きました。だいたい私には初めて聞く書名のものも何冊かあり、こうなると教養
以前の問題。 「ふ~む」と唸ってしまいました。

趣味欄は「読書」でなく、単なる「本好き」にしといてよかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一流ビジネスマンになるのも大変だな、「促成」であり「速成」ではいけませんので
ますますご苦労さまです。

エチケット・マナーも身につけねばなりません。うるさいスポーツとしてゴルフがあり
ますが、先輩からの教えは「エチケットとは人に迷惑をかけないこと。マナーとは
人を不愉快にさせないこと」。・・ビジネスでもまあこれくらいでOKでないかと。

これに、あと、問われれば(ここが大事ですが)、「熱く語れるものを二つほど」持
っていれば、若い人ならそんなに「無教養」ではないんではないか、と思った次第。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 さて、勿論上のリストにはありませんが、正月休みに面白く読んだ本。

「男おひとりさま道」上野千鶴子 著(法研)

著者は還暦を過ぎた「おひとりさま」。著書『おひとりさまの老後』(2007年)は75
万部のベストセラーでちょっと読んでみたい気もしましたが、『男おひとりさま道』は
その続編です。 前期高齢者男子の私としては、ドレドレなにが書かれてあるのか
と思って読んでみました。

ちゃんと「おひとりさま」になる準備はできてますか?なんとも答えようがありません。
女性(カナイ)の方が平均寿命が長く、さらに歳の差が加わるので、私の方が「おひ
とりさま」なる可能性は小さいと思ってますが、先のことは誰にもわかりません。
このあたりの男女の心理、機微についても面白く書かれています。

一つだけ、「インターネット」について全くといっていいほど触れられていないのは
残念。老後の結構大きな「ヒマつぶし」「ボケ防止」にいいと思うんですが。


 もう一冊は大好きなエッセイスト・画家の玉村豊男さんの新書版『今日よりよい
明日はない』。

「今日よりよい明日はない」玉村豊男 著(集英社新書)

相変わらずエスプリの利いた、あっという間に飲み終え、いや読み終えてしまう
「好みのワイン」のような本。

本のタイトルになった、著者が20年前ポルトガルのある小さいホテルで働く若い
バーテンダーと交わした会話をご紹介します。
                  *   *   *
「いくつ?」 「21になりました」 「若いね」 「それほどでもありません」 「将来は、
なにになりたいの?」 「将来?・・・さあ、わかりません」 「若いんだから、夢が
あるでしょ」 「夢・・・・ですか。 とくにありません。 結婚して、子供をもって、平穏
に暮らせればそれでいいです」 「そういうもの?」 「ポルトガルには、今日より
よい明日はない、という言葉があります。 毎日を満足して暮らせれば、それで
十分だと思います」  --私(著者)にとって、この会話は衝撃的でした。今日
よりよい明日はない。そんな言葉をよりによって21歳の青年に教わるとは・・・。

本の帯には“人生80年時代、「すでに成熟した社会」の、今日を豊かに生きる!”
とあります。

 



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2009年10月21日(水)更新

ターゲットからパートナーへ

前々回のブログで、モノをつくる設備や技術、知識をもつ側(たとえば当社)が、
買い手(主に個人)や注文者の意向・企図をできるだけ実現してあげる、即ち
「モノづくり」から「コトづくりへの協力」の方向へ舵を切るには、作り手が「寄り添う」
といった感覚が必要なのでは、と「寄り添う」といった言葉を深い考えもなく使いました。

思いがけずブランディングをコンサルするクエストリーの櫻田社長様から
「同感です!」とコメントまでいただいて恐縮してしまいましたが、昨日入手した本
の目次に「!」と目にとまった項目がありました。

その本は、青木貞茂著「文化の力」(NTT出版 本体@1600-)で、繊研新聞の
評者の激賞があって買ったのですが、まだ少し読みかけたところです。

帯(コシマキ)に、“茂木健一郎氏絶賛!『時代を突き動かす衝動のど真ん中に、
「文化」の総合力を見る。卓越した論考は、現代における「マーケティングの新約
聖書」と呼ぶにふさわしい。読め。感じろ。そして、跳べ。日本人に大いなる勇気と
希望を与えてくれる本が登場した。』” とあります。

「文化の力 -カルチュラル・マーケティングの方法-」(NTT出版 本体@1600-)

どうなんでしょうか、まだ読了していないので責任は持てませんが。
昨年5月の初版ですから、すでにお読みになられた方もおられるかも知れません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

目にとまった項目とは「ターゲットからパートナーへ」(P161)で、マーケティング
では対象とする顧客を「ターゲット(標的)」という言い方をすることがよくあるが、
これは戦争用語であり使うべきではない。顧客はシューティングの対象などでは
ない、と。  「顧客を撃ってどうする!!」

「マーケティング」を勉強したこともない人間(私)が、こういう外来語を軽々に
使うこと自体が「文化的」でないのでしょうが、それより浮かんだ言葉「寄り添う」
が「パートナー」という意味だとすればうまい具合に合致するな、と思った次第。
(これも英語ですが)

「ターゲットからパートナーへ」を意訳すると、「標的から同志へ」?、「標的から
連れ合いへ(そういえば女房は標的だったかな)」?・・ あまりピンときませんが。

ともかく「顧客をターゲットではなく、パートナーとして」のスタンス(また英語だ)で、
一度自社の「モノづくり」を顧客からの視点で考えてみたいと思います。






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「知るは喜び、調べるは楽しみ、分かるは感動、学ぶは一生」とか。高齢者の仲間入りの年齢ですが、仕事でも趣味でもICT時代の恩恵に感謝しています。趣味・・本好き、水彩画、ゴルフ('05までJGA委員、現在中部ゴルフ連盟ジュニア育成委員ほか。エポック・・還暦のアルバトロス、'06...

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