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2008年07月22日(火)更新

シカゴよいとこ一度はおいで。

明日(23日)から、北米のシカゴ・ボストンへ行くので今日午後成田へ。
留守中、ブログを少し書き溜めて、なんて思っていましたが、出発間際に176回目
を書いている始末で情けないもんです。従って次回ブログは8月に入ってからと
いうことになるわけで、どうもなにかと思いどうりに片付けられなくなってきました。

シカゴには次女夫婦がおり、どうやら日本への転勤も近そうなので、一度来ないか
というので「決心」したのです。決心とは我ながら大げさとも思いますが、歳をとると
何事もテキパキとはいかず、聞けば入出国も、テロ以降最近かなり時間がかかる
ようです。しかし最初に話があったとき、「夏休みだし、二人のワンパクを連れて
いくか」などと不用意に発言したため、すかさず長女から「お願いします」と言われ
て計画は後戻りできなくなりました。

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それでも有意義な旅行になるかも、と思う一つはシカゴ市内エバンストンに「国際
 ロータリー(R.I)」の本部があることです。200カ国、クラブ数3万2千余、会員
総数121万のいわばロータリアンにとって総本山みたいな所ですから、ちょっと
外から眺めるだけでも、と考えておりましたら、娘婿がレターを出したようで、見学
の手筈が整ってしまいました。そうなるとクラブのバナーなども用意し、案内して
下さる方への小さなお土産も、などと考えないわけにはいきません。

来年クラブの会長を予定されているので、帰国後は早速「R,I見聞記」のスピーチ
(卓話)もプログラムに組まれました。あまり熱心なロータリアンではないので機中
でにわか勉強です。

もう一つは、9歳と5歳の孫(長女の男の子)に、「アメリカ」を見せてやれることです。
子供のいない次女のご亭主からメールが来て、夏休みの宿題を心配してくれて
「社会科は“ボストン茶会事件”など解りますかね」と聞かれましたが、私にも解り
ません、と言いました。それより今「鉱石ラジオ」に夢中です、貴兄の趣味の電子
部品でいろいろ遊ぶあれはきっと喜びますよ、と返事しました。近くの大きな森も
最高ですね、と。

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「国に何かしてもらうより、自分はどうしたらいいかを真剣に考える時がきたのです」

と尊敬するQさんの言がありますが、この子たちが成人する時、日本はどうなって
いるでしょうか。高齢化の進行は老害をますますひどくしているかも知れませんし、
日本人としての誇りや自信も今より持ち得ない時代になっているかも知れません。
どちらにしても、肌の色が違う多くの人間(シカゴは人口290万人、ニューヨーク、
ロスに最近抜かれて全米第3位)と高層ビル、ボストンの学校、ダウンタウンなど
を歩いて「世界は広い。頼れるのは自分自身。」とこの旅行で理屈抜きに体感し
たものが僅かでも頭の片隅に残ってくれたら、ジジババからのいいプレゼント
だったと思いたいのです。

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昨夜、ディスカバリーチャンネルから出ているDVD「多忙を極める国際空港」という
シカゴ・オヘア空港の舞台裏を見ました。なんと一日の利用客20万人、年間7千万
人の旅行者、1億5千万個の手荷物、90万回の離発着という巨大空港のようです
が、旅行者の知らないバックヤードで、多くの人間がこの巨大な空港を支えている
ドキュメントは興味深いものでした。

娘婿もこの空港にいるので、「着いたら飛行機のドアのところまで行きますよ」と
メールがきました。英語に自信がないのでお二人さんあとはよろしくお願いします。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
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2008年07月16日(水)更新

どこ吹く風。

以前から欲しかった写真集「桂離宮・修学院離宮」(京都新聞創刊125周年記念
出版)が、アマゾンから届いたのでワクワクしながら拾い読みしていると、書家の
吉川壽一君が飄々と現れました。(今や高名な書家ですが、小学校以来60年
近い親友なので“君”で許してもらいます。当社のアドバイザリースタッフです。)

「京都の門川新市長と会ってきた」とのこと。この2月に桝本前市長を僅差で破り、
初当選しましたが、二代続けての市教委出身市長とか。
「京都創生」がコンセプト。和服姿で執務室におられたそうですが、その一端なの
でしょうか。それとも公務でお茶席などがひかえておられたのかも知れません。

ただ桝本市政の12年間で94人の職員が逮捕された(京都新聞)そうで、市民か
らの信頼回復は容易ではなさそうです。
地方の教育委員会といえば、大分県が大混乱の真っ最中、中には夫婦で関与し、
悪くすると免職となり、数千万円の退職金がパーになるかも知れませんから、
割の合わない話です。

私は公務員とか先生になりたい、という気持ちに一度もなったことがありませんが、
官庁とは関係ない好きな“モノを作る仕事”に就けて本当に幸せだとあらためて思
います。
ただ自身の出世や子供の幸福を考えない人は少ないと思いますので、切羽詰れ
ば私もヒョットしてそれに近いことをしたかも知れませんから、賄賂社会と噂される
中国を笑う資格はありません。

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吉川君の市長との会話で「市長から“風”という字を書いてもらえませんか、と言わ
れたんやけど、偶然この秋東京で個展をやるテーマを“風”にしようかと考えていた
ところなんでビックリした」とのこと。

言われてみると「風」っていいですね。文字もデザインとして面白い。
空気が動くのが風ですが、台風、暴風はともかく、新風、涼風、さわやかな風など
人の心を軽くさせます。

今、東京の高校の「よさこいチーム」から、長半纏の注文が来ていて、試作品が
私の前に架けられています。背中に大きく赤地に金でプリントを依頼されたのが、
「風神雷神図」。風神が大きな袋を腰に抱えて大風を送っている図をリデザインし
ました。神というより鬼に見えますが、愛嬌があって迫力ありますね。

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ところで流行語になった「K・Y」・・場の空気が読めないという意で結構使われて
いるようですが、語意が似ている「どこ吹く風」というのもあります。

食品の表示や産地偽装、今回の大分県の教職員のワイロ問題、社会保険庁の
不始末などなどこれだけ世間で話題になり、指弾を浴びているのに「どこ吹く風」と
思っている人たちがいるように見えるのには暗澹とした気持ちにさせられます。
感性が錆付いているんでしょうか。

「見て見ぬふり」と「どこ吹く風」の連鎖、今の日本には経済だけでなく、社会全体
に「逆風」が吹き始めているように思います。

横山国男

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2008年07月13日(日)更新

タスポとお婆さんと飴玉。

タスポが導入されましたが、平均25%ほどしか利用者がないので、自販機しか
置いていないタバコ屋さんが苦境に陥っているそうです。(コンビニなどへ流れた)
中には、高齢の店主さんが「売り上げは80%も減った。80万円もかけてタスポに
対応したのにもうやってゆけない。年金だけではとても生活できないし」と嘆いてい
るのもTVで見ました。

これを機会に禁煙したり、主目的である未成年者の喫煙防止などにどれだけ効果
が出ているのか現況を知りませんが、建築基準法改正、消費者金融の法改正に
次ぐ「官製不況」・・・「お上もひどいことをする」と、上述のタバコ屋さんなどは思っ
ているに違いありません。自販機大国の日本ですから、もし外国の人がこの問題
を考察するときは一様に「自販機メーカーとそれにからむ利権政治家の仕業」と
考えるのが普通、という論調もあります。

作家の曽野綾子さんが、高齢運転者の“もみじマーク”や“タスポ”を配るなどと
聞くたびに、「いかにもT大アホウ学部の馬鹿が考えそうなことだ」と罵っている、と
ご主人の三浦朱門さんがある総合雑誌で話しているのも最近読みました。

ことの是非は分かりませんが、またひとつ高齢者の働き口が無くなったことだけは
確かなようです。

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私が小学生の低学年のころ、母から夕方時々お使いに出されました。
職人だった父の晩酌用の酒を切らしたので買ってきて、ということでガラス製の
フラスコのようなビンを抱いて、300メートルほど山沿いの暗い道を、怖いので
小走りに行くのです。

途中、2,3軒の民家もありましたが、やがて灯りが点いている「何でも屋」が見えて
きます。(本業は米屋さん。塩、タバコ、ほうきとかざるなどの荒物、せんべい、飴
などの駄菓子、何でもあったように思います。だから近隣の子供は“何でも屋”と
言っていました)。

店に入るといつもの腰が90度くらい曲がったお婆さんが「おう、坊 よう来たな、
酒か」と言って、精米機の前で一升枡で米を袋に入れる作業をやめて、樽から
酒を移してくれました。過酷な農作業で腰が曲がったのでしょうが、それでも70歳
前でしたでしょう。もちろん大店ですから息子もそのお嫁さんも働いています。

それから数年後、このお婆さんはタバコのケースの前にいつも座るようになりまし
た。夏でも毛布のようなものを膝にかけて、日がな一日外を見ていましたが、おだ
やかな印象がかすかに残っています。

このように昔は年金もありませんでしたが、家の者全てが、働ける間はなにかふさ
わしい仕事を与えられて、生涯を全うしたように思います。
勤労を尊ぶ「真宗王国」ならではの背景もあったかも知れません。

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かって「日本の物価が高いのは人件費がかかりすぎる、多段階の流通も無くさな
くてはならない。アメリカのスーパーやSPA(製造ー直販)こそこれからの時代・・・」
この意見に真っ向から異を唱えたフランスだったかの学者が、「そうではない、
沢山の商店や問屋さんなどが雇用を吸収しているのだ。それを壊せばその分は
社会的なコスト(税や福祉の費用)となってはねかえるのだ」というような発言を
していて「こっちの方が正しいんじゃないか」と思ったことがあります。

お金の問題というよりも、「まだ自分は家や地域で必要とされている」という喜びと
誇りが、どれだけ人間をして真っ当な生涯を手にするか、ということと深い関係が
あるような気がしたからです。

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「何でも屋」で父の酒を貰い受ける時、いつもお婆さんは目の前の大きなガラスの
ビンの中から「飴玉」を一つとって「ほい」と言ってくれたものです。
私は飴玉をほおばりながら、また急いで家に帰りました。


横山国男

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2008年07月11日(金)更新

「スカーレット リボン」。

リボンやテープ、ネームなどの素材にプリントするためのシルクスクリーン版を、
長年地場の多くの業者さんへお納めしているのは、当社の主力事業の一つでも
あります。感謝に堪えません。

先日、テーブルの上に、カナイがケーキの箱にかけるきれいな「真紅のリボン」が
置かれてあるのを見て、頭の中をフッとある曲がよぎり、それはいつまでもリフレ
インして私を悩ませました。

スカーレットリボン アンディ・ウイリアムス

40年も前の小さな白黒TVの画面、レーガン大統領が「アンディの声を国宝に
 宣言」と称えた、「ムーンリバー」「シャレード」「酒とバラの日々」などで大好きな
アンディ・ウイリアムスがソフトなハスキーがかった声で歌っていました。

 曲は「スカーレット リボン」。一人の少女がベッドに入る前、ひざまづいて「神様、
どうか紅いヘアーリボンをください。お願いします」というような、絵本のような歌詞
だったと記憶しています。たったその時一回聞いただけですが、感動して、以来
ズーッと特徴あるフレーズとメロディの一部が耳に残っていたのです。

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こんな時、インターネットは便利ですね。いろいろ調べて最後に北軽井沢でペンシ
ョンを経営されているSさんが、アンディ・ウイリアムスのおそらくは日本で唯一の
本格的サイト「Wonderful World Of Andy Williamas」を開かれている
ページに行き着きました。

しかし発売された多くのアルバムの曲目を調べても「スカーレット リボン」は入って
いません。思い余ってアンディのことなら何でもと思われる管理人のSさんにメール
を送りました。

翌朝、丁寧な返事のメールがきました。「随分、昔のことをよく記憶されていますネ。
フアンとして嬉しい限りです。ご回答出来なかったものですから、掲示板にコピー
しました。下のURLにフアンの方が返事をしていただきました。私も初めて聴き
ましたが、素晴らしい曲でした。特にぺりー・コモのが良かったです」とあります(?)。

そして「パソコン若葉マーク(紅葉マーク?)」の私を仰天させたのは、ご案内して
いただいた“YouTube”。
ダイナ・ショア、ハリー・ベラフォンテ、ペリー・コモ、ブラウンズなどが「スカーレット
 リボン」をそれぞれの味で歌っています。中でも私にはアメリカが元気だった
’50~60年代の、笑顔100%そばかす美人=ドリス・デイが最高でした。



でもアンディ版はありません。
フアンの方の返事を見ると、アンディは「スカーレット リボン」をおそらくレコーディ
ングしていないのでは、と書いてあります。あの膨大な楽曲を歌ったアンディが
私の大好きな「スカーレット リボン」はレコーディングしていないなんて。

でもあれは間違いなく「アンディ ウイリアムス ショウ」だったはず。 親日家で、
味の素のコマーシャルなどでお茶の間にも絶大な人気のあったアンディ。
日本公演で唄ったのかも知れません。しかしこの話題でコメントを寄せられた
人は、見てないけど一様にアンディの「スカーレット リボン」を聞いてみたいと
書かれていて、私は思いがけずちょっと得をしたような気分でした。

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娘たちは「古ーい! レトロー!」と言うでしょうね。でもあの頃は最高だったんです。
『現在65歳以上のアメリカ人の四分の三が一人暮らしで、次にいつ食事ができる
かわからない「飢餓人口」に属するという。(文藝春秋6月号「世界同時貧困」 堤
未果さんの記事から)』・・そんなアメリカじゃなかった。我々には憧れの国だった。

マーティー・ロビンスの「ホワイト スポーツコート」はあくまで明るく、「上流社会」の
グレース・ケリーは高貴で美しく、ビング・クロスビー、アステアもまだまだ元気でした。
それからダスティン・ホフマン、キャサリン・ロスの「卒業」へ。(’67年。 アン・バン
クロフトの妖艶さにドキドキしました)。etc,etc。。。。
そしてリチャード・ドライファスの「アメリカン・グラフイティ」は’73年でした。

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かってPGAゴルフ「アンデイ・ウイリアムス サンディエゴ オープン」を主宰して、
チャリティにも熱心だったアンディ・ウイリアムスも今や80歳!。

あの長い顔とやや足が短いようにもみえる、しかし人懐っこい笑顔で、相変わらず
歌やゴルフの人生を楽しんでいるに違いありません。

横山国男

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2008年07月09日(水)更新

写真家・・土門拳の「風貌」。

何かを表現する仕事に憧れました。ました、というのはもうそのような時間は残って
いないし、第一表現する仕事、例えば画家とか音楽家とか映画監督とかの作品を
生み出すパワーみたいなものは常人の域をはるかに超えていますし、そうでなけ
れば人に感動など与えられるはずもありません。天与の才能は無論のことですが、
両方とも持ち得ないのであれば、プロの仕事を尊敬をもって見させていただくだけ
ということになります。

土門拳という写真家がいて、私達の若いころは木村伊兵衛とか入江泰吉、秋山
庄太郎などとともに大変な人気がありました。晩年脳梗塞から立ち直り、左手で
本業のカメラはもちろん、絵や書、骨董にも才長けた人だったようですが、後年
再び脳血栓に倒れ、11年間昏々と眠り続け、’90年、80歳でこの世を去りました。
出身地の山形県酒田市に全作品を集めた「土門拳記念館」があるそうなので、
いつかは訪れてみたい所の一つです。

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 黒澤明が仕事に入ると、当初の予算と製作日数は次々と膨れ上がり、延びて
会社(東宝)と常に悶着を起こしていたのと同様、土門拳も「日本工房」時代、その
後の独立以降も機材、フイルム、スタッフ経費などハンパではなかったようです。
現在のようにモノが溢れ、デジタルでどんなことでもできる時代ではありませんし、
特に戦前は良質なものは高価な輸入品に頼ることになります。しかしこのような
不自由と常に戦いながら自己の表現にこだわり続けた情熱こそ、後世にも残る
作品を生み出した原動力になっていたのも間違いないと思います。何不自由ない
というのは情熱、情動の敵かもしれません。

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土門拳の作品集では「風貌」が好きです。中でも“電力の鬼”松永安佐衛門は素晴
らしいので、時々引っ張り出して眺めます。日本人の顔、明治人の風貌を感じさせ
てくれます。(本当の事業家になるには、4トウ・・闘病、倒産、投獄、放蕩の経験
なくしては事業家とは言えん、と言ったと伝えられ、美の追求者でもあった松永
安佐衛門翁その人に魅力を覚えるせいかも知れませんが。)
「風貌」松永安佐衛門ー1 「風貌」松永安佐衛門ー2

昭和57年小学館から発刊されたこの土門拳全集(全13巻)9ー「風貌」には次の
ような編集後記があり、考えさせられます。少し長くなりますがご紹介します。

『本巻の風貌(一)に登場する肖像は、もはや私たちの周囲では見られない顔、
と言うよりは殆ど存在しない顔ではないかと、改めて認識させられました。
明治、大正、昭和の日本文化を支え、リードしてきた先達の風貌に共通するのは、
「素朴」「柔和」「厳格」「孤独」が同居する「人間の顔」です。
不幸にして私たちは、このような巨像に接することはできません。この素晴らしい
顔が消失しつつあるのは、日本から、何か大切なものがなくなりつつあるのでは
ないかと、思うのは私ひとりの感傷でしょうか。
それにしても、「風貌」には様々なエピソードが生まれました。多分それは、土門
先生が、諸国武者修行に旅立つ、剣客の心境からきたものではないでしょうか。
一瞬の立会いの、刃と刃の切り結んだ火花の結晶が、「作品」と言えるのでしょう。
この「風貌」は、まぎれもなく日本肖像写真の傑作です。大変な努力があったにせ
よ、これほど傑出した被写体と多く出会えたことは、写真家冥利につきるでしょう。』
(G)

と、ここまで入力して、「ウーン、こういう文章を書けるというのもカッコいいなあ、
ブログも向上するかも。来世は編集者というのもありか」と思う軽薄な私がおり
ました。

横山国男

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2008年07月03日(木)更新

『神様、この会社が社会のお役に立たないのであれば、

どうぞつぶしてください』・・ダスキンの創業者である鈴木清一氏は、創業時こう祈
ったそうだが、本来あるべき創業の精神とはこのようなものだろう。「はじめに心
ありき」なのだ。(後略)

この文章は、谷口正和さんの新著「日本へ回帰する時代」(繊研新聞社1800円)
の“創業へ。そもそも何のために始めたのか”に、はじめに「心」あり、と小題を
つけて書かれているものです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

谷口さんは1942年京都生まれ(私と同年)、武蔵野美大を出て現在マーケティング
 コンサルタントとしてご活躍中ですが、3年ほど前、福井県産業支援センターが
企画した「デザインワークショップ」に参加し、講義を拝聴して深い共感をおぼえ、
ご著書の殆どを読ませていただきました。当社は谷口さんの持論を実践、実現
しようとしているといっても過言ではありません。

要は「量産・量販・低価格競争に未来はない。経済活動とその所産である「文明」
ではなく、これからは精神活動とその所産である「文化」を経済・経営の柱に据え、
そこへ回帰していく。すでにその兆候は表れている」という主旨で、私も同感です。

もう一つ「直感」の時代に入ってきた、として、
「特に女性リードの時代においては、ますます直感的判断が重視されるようになる
だろう。いかに政治家や企業家が、とうとうと理論を述べても、テレビの前の女性
たちは直感的に嘘か本当かを見抜いている。「3秒」もあれば十分なのだ。
それは言葉としてのロジックを聞いているのではなく、見た目や表情といった視覚
的要素を見ているからだ。聞いているのではない、見ているのである。言葉は嘘を
つけるが、表情は嘘をつけない。とても動物的ではないだろうか。(後略)

この意見は、賢い消費者が増えているのだ、お客様第一と口では言いながら、
結局は作り手、売り手側の論理が透けて見えるようでは成功しませんよ、という事
だと思います。

著者の意図とは少し論旨が外れるかも知れませんが、恰好のサンプルがあります。
一連の「食品偽装問題」などで、次々とTVカメラの前に立たされた「社長さん」の姿
です。中には「何で?」という表情の経営者もおられましたが、そういう人たちは、
本書でも紹介されている松下幸之助翁の次の言葉、即ち「経営者としての王道」
を踏み外したのではないか、と自戒をこめて思うこの頃です。

『経営というものは、天地自然の理にしたがい、世間大衆の声を聞き、社内の衆知
を集めて、なすべきことを行っていけば、必ず成功するものである』。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

話は冒頭に戻りますが、鈴木清一さんのような「祈りの経営」を実践されておられる
静謐な経営者も内外にきっと多くおられるのでしょうね。 私には程遠いことですが。

横山国男

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2008年07月02日(水)更新

水を考え、絵を考える。

瑞々しい=みずみずしい・・・・大好きな言葉。夏の雨、濡れた街路樹、虹、夏の
果物などなど。

石油の次の戦略物資は「水」ともいわれますが、日本は世界でも稀な水道水を直
に飲める国(他は米国のみとか)。年間の降雨量が豊富で、山岳部に降った水は
伏流水となって、中には100年もかかって除染され、ミネラルをたっぷり含み私達
の体に到達します。古来より「水神様」を祀ってきたのも頷けます。

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深山幽谷のみならず、里山の谷あいにも発生する霧、もやなど日本は水蒸気の
満ちる国でもあります。この水蒸気がおぼろげとか、かすみゆくとかの風景、遠景
を演出するのは、湿度の低いヨーロッパの平野部などと決定的に違うところ。
黒、闇をバックに描きあげてゆくレンブラントなどの泰西名画と絹本や和紙の白を
ベースに、遠景はうすれぼかされる大観などの日本画を比べればわかりやすい、
とも聞きました。(ヴィラデスト農園主の玉村豊男さんから)

乾燥地ではどこまでも堅固でクリアーに見える、水の国日本では水蒸気で遠くは
霞んでしまう、絵画の世界でも「水」は大きく関係しているのですね。
ともあれ、日本は水を大事にし、経済効率で木材を大量に輸入して彼の地の砂漠
化を助長することを止め、世界第2位の緑被率(国土に占める森林の割合が日本
は67%で1位はフインランドの69%、中国は14%と聞いたことがあります)有効な
活用を再度考えれば、未来は明るいと思います。

スイスは水力発電だけで余剰電力を隣国に売っているようですし、ドイツでは最近
半世紀も前の水車発電装置を再び動かし始めたところが数千箇所もあるといいま
す。水こそはクリーンなエネルギーの源泉でもあります。
           地球にとっても人間にとっても。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ところで水と言えばここのところズッと気になっている水彩画が2点。

マダガスカルの風景(1) マダガスカルの風景(2) 

「SEVEN SEAS」というラグジュアリー誌の中綴じの表紙になっていて、画家は
牧野伊三夫さんという人。雑誌「暮らしの手帖」、サントリーの機関紙「WHISKY
VOICE」などの表紙や挿絵でも高名な方のようです。(Wikipediaから)

パッと見たときから魅せられて、こんな水彩が描けたらと、たびたび取り出して眺
めています。真っ白な紙にシンプルに楽しそうに線と色が交じり合って、白くて強い
日差しの中、マダガスカルの街と人の風景が素敵です。

O先生(私の水彩画の先生)にお見せすると、「うーん、すごいね。なかなかこうは
描けないなあ。ヘタウマに見えるかもしれないけど全然違うんだよね」とか。
・・・・線が生きていて確信に満ちている、遊びはあるが無駄が無いんだそうです。
道の遠さを思い知らされますが、こちらはアマチュアなので、そこは気楽に水と絵
の具がつくる世界も出たとこ勝負、思いがけない喜びと失敗の一喜一憂が楽しい
のです。

若い時代、生活をするということの重みを軽くジャンプして、好きな道をまっしぐら
に進んだ人をこの歳になってうらやましく思いますが、サラリーマンから見れば私も
そう見えるかも知れません。

横山国男

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2008年07月02日(水)更新

7月1日は「半夏生(はんげしょう)」。

「半夏生」とは、二十四節気だけでは農作業の基準が分かりづらかったため、更に
細かく分けた七十二節気から生まれた言葉で、夏至を3つに分けた最後の3分の1
の期間を指す、すなわち夏至から数えて11日目の7月2日頃から七夕頃までの
5日間が半夏生で、田植えの時期の目安とされている。(日本文化いろは事典より)
農家の出だった母はいつも「ハゲンショ」と言っていたような気がします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

福井や金沢では1日からが「半夏生」。福井ではこの日“サバの丸焼き”を食べる
風習があります。発祥は奥越前の大野といわれていますが、江戸時代、田植えで
疲れた農民に栄養を取らせようと、藩主が推奨してから、と伝えられていますが、
大野市内の一軒の魚屋さんでもこの日1200本のサバを焼くといいますから、
全国版の「土用丑の日・うなぎ」の地方版ですね。生きのいい油の乗ったサバが
近くの海で豊富に採れることも背景にあるでしょう。

「恵方まき・まるかぶり寿司」のように、知恵のある人が現代に甦らせて、上手に
商売にしたという側面もあるかもしれませんが、最近元気の無い地方の「お店」に
とってはいいことだと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方、金沢(加賀地方)はこの日から「氷室(ひむろ)饅頭」が売り出されますが、
これはとても有名。(この日、金沢のDデパートの地下の和菓子屋さんはどこも
行列でした)。

7月1日(旧暦6月1日)、この日は藩政時代に加賀藩から幕府へ「氷」を献上する
ため江戸の藩邸へ出発する日。冬の間に「氷室」と呼ばれる半地下室に氷をため
ておいた室(むろ)から、氷を取り出し、筵と笹の葉に何重にもくるんで江戸へ。

無事将軍に届くために、神社に饅頭を供えて祈願すると同時に、暑い夏を越す
体力を養い、無病息災を願う意味もあったようです。
金沢の人は1個くらいでなく、この日はいくつも食べるようです。

毎年小松の仕入先のO君が、名店の「氷室まんじゅう」をたくさん届けてくれ、社員
も楽しみにしています。ありがとう。
あらかた食べてしまい、「あっ、カメラ」と思ったときには残り1コだけでした。

半夏生サバと氷室まんじゅう

横山国男

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会社概要

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個人プロフィール

「知るは喜び、調べるは楽しみ、分かるは感動、学ぶは一生」とか。高齢者の仲間入りの年齢ですが、仕事でも趣味でもICT時代の恩恵に感謝しています。趣味・・本好き、水彩画、ゴルフ('05までJGA委員、現在中部ゴルフ連盟ジュニア育成委員ほか。エポック・・還暦のアルバトロス、'06...

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