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2008年05月29日(木)更新

日増しに強まる地方のマイカー前提社会の崩壊。

先週末高校の同窓会の常任幹事会があり出席しましたが、私の恩師である
T先生(校長もされ、お歳は80歳を超えておられます)から、「創立100周年の
立派な記念事業も見届けることができ、こんなに嬉しいことはありません。
ついては今回をもってこの幹事会メンバーをやめさせていただきます。今後は
ぜひ若い卒業生諸君に大いに頑張って欲しいと思います」と挨拶されました。

会議を終えて簡単な食事会となり、隣席のT先生に「まだまだお元気ですのに」と
話かけますと、「実はね、もう車の運転が危ないの。特に夜はダメ。今日も帰り道
が心配です。タクシーじゃ金がかかりすぎるしね」とおっしゃいます。

確かに隣の市とは言え、それも郡部にお住まいなので、車は必需品なのですが、
続けて「もう近所に八百屋もない、ほとんどの商店がやめてしまって、買い物は
家内を乗っけて車で15分のスーパーまで行かなくてならんのやが。・・・そのうち
どうなるんやろか」。経済的なことより、高齢者夫婦二人の毎日の生活が「車」を
前提に成り立っている地方・地域の危うさを心細そうに話されました。

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当社はJR福井駅から車で10分もかからない住宅が密集した場所ですが、最近
古い家が取り壊された跡は、ほとんど駐車場か相続対策の貸家、賃貸アパート
に変わり、残った家では一人暮らしを含め、高齢の方がひっそりと住まいしています。

このあたりでも商店はもちろん、スーパーですら数少なくなり、高齢者の方なら
尚更歩いては買い物に行けないので車は手放せません。
その代わり、気がついてみると軽自動車がすごく増えました。ガソリンの高騰や
維持費を考えれば、買い物に使うだけなら傘代わりの軽で十分、ということでしょう。

しかし、これもなんとか車を運転できての話、介護施設や病院も老人の長期の
入所、入院はますます困難な方向へ向かっていますから、これから一体どういう
ことになるのでしょうか。

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郊外の一戸建てを処分し、中心市街地のマンションへ移られる高齢者も増えてき
たようですが、これもごく一部の余裕のある人の話。行政は100円で乗れるコミニ
ュティバスの路線を増やそうとしているようです。

今日も車で会社近くまで帰ってきますと、前を人が歩いているような速度で軽自動
車が走っています。広くない道、なんとか追い越してバックミラーをチラッと見ると、
ご近所のMさん夫婦、ハンドルにおおいかぶさるように前を見ています。
我々が考えていたより、ずっと早く「街全体が老人ホーム化する」恐れがすでに
地方都市でその兆候が出始めているように思います。

「100年安心の制度」というのが、たった数年前の“新年金制度”のうたい文句
だったように思いますが、それにしても冗談がすぎると思っている人は少なくない
でしょう。
人口減少、少子高齢化社会の到来は予測できたはずですが、さらに地方では、
高度成長期に公共交通機関の廃止が相次ぎ、(福井県は人口当たりの自家用車
所有率が全国トップです)車社会になったツケが、今我々に重い課題を突きつけて
いるように思えてなりません。

「長生きはリスクになった」という言葉がにわかに実感されるこのごろです。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2008年05月28日(水)更新

オルガン・メモリアルイヤーだそうです。N響コンサート。

2006年はモーツアルト生誕250年で盛大なイベントが日本でも目白押しでしたが、
’08年は「オルガン・メモリアルイヤー」なんだそうです。

昨夜(27日)は、県立音楽堂で「NHK交響楽団名曲コンサート~オルガンとともに」
というタイトルでオルガンの名曲を聴く機会に恵まれました。
福井県立音楽堂は音響の素晴らしさで、演奏家、音楽フアンから高い評価を得て
いるホールですが、もう一つは非常に立派なパイプオルガンが設置されていること
でも有名です。

音楽堂の建設や壮大なパイプオルガンの設置への情熱、それになにより福井の
「文化振興」に多大の貢献を続けてこられた小野グループ会長小野光太郎氏。
 ユトリロ、ブラマンク、フジタ、菱田春草、浜口陽三他、中でもビュッフエのコレク
ターとしても“小野コレクション”の質の高さはつとに有名です。氏の存在なくしては、
おそらく実現できなかった音楽堂ですが、さらに数年前、財団の基金運営で
「アルゼンチン債」で損失が発生した際も、個人的に多額の補填をされたような
報道にも接しました。

ドイツ共和国や英国王室から多くの勲章や称号も贈られている氏ですが、当夜も
私達の左手、ボックス席で静かに「オルガンの名曲」に耳を傾けておられました。

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さて、当夜の曲目は、
J.S.バッハの「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」、「小フーガト短調BWV
578」,それにヘンデル「オルガン協奏曲第6番 変ロ長調 作品4-6」という、
題名は知らなくともポピュラーな選曲、オルガンはシルヴァン・エリさん、指揮は
小泉和裕(客演)、フル編成ではありませんが、N響の管・弦を夢見心地で楽しみ
ました。

N響はまだ徳永二男さん(バイオリン)がコンマスだった時以来ですが、誕生85年
にもなるそうですね。世界的にも評価の高い交響楽団になりましたが、50年も前、
N響にも関係した近衛秀麿率いる「ABC交響楽団」を、暗くてせまい市の公会堂で
それでも感激して聴いた中学生時代、今は豪華なシャンデリアの下、快適な椅子
にもたれて、素晴らしい音を楽しめる幸運を喜ばずにはいられません。

オルガン曲のあとは、ヘンデルの組曲「水上の音楽」、休憩を挟んでラストは
ドヴォルザークの交響曲「新世界より」と、本当に久しぶりのクラシックをそれも
肩肘張らず楽しめたプログラムでした。

アンコール曲は再びオルガンが入って、これも美しい間奏曲、マスカーニの
「カヴァレリア・ルスティカーナ」一曲だけでしたが、十分心が満たされた夜でした。

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いつもメセナには力を入れて下さってますが、今回創業120周年を記念して協賛
されたこの名曲コンサート、チケットを下さったセーレン株式会社様に家内ともども
厚く御礼申し上げます。

横山国男

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2008年05月22日(木)更新

【明大生との毎週一問百答】・・訪問先では立って待つ。

<ご質問>
新たな人との出会いの場面において、大切にしていること、
心がけていることがありましたら、教えてください。
                          (明治大学商学部 大石絵美莉さん)



なるほどと思って10年来実行していることがあります。それは訪問先(特に初対
面、お願い事がある場合、懇意な間柄では未だないというときなど)へお伺いし、
応接間や商談室などへ通されたら、相手の方が出てこられるまで「立って待って
いる」ということです。
新入社員もそろそろ一人でいろいろな所へ「お伺い」する頃です。何かのお役に
立てば嬉しいですね。

これは私の座右の書の1冊「日本人のお行儀」(草柳大蔵著・グラフ社)に書かれて
いるエピソードで、以来努めて実行するようにしています。
戦後すぐのお話ですが、今も古くなっていないと思いますし、文章が素晴らしい
のでそのままご紹介します。

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「何故立って待つか」
昭和二十三、四年ごろ、私は雑誌の編集部員をしていたが、先輩に急用が出来て、
芦田均氏に依頼した原稿の受け取りにゆかされた。
 応接間に通され、ソファーにすわって読みかけの岩波文庫を読んでいると、芦田
夫人が手に原稿を持ってあらわれた。
「はい、これ」と渡され、礼を言って立ち去ろうとすると、「お待ちなさい」と夫人に声
をかけられた。
「あなたのお父さんはどんなお仕事をされていたの?」と問われて、門塀や墓石を
つくる石屋でしたと答えると、「そう、それではご存知ないのでしょうね」とやさしい
笑顔になって、夫人は教えてくれた。
「他家を訪問したときはね、そこのご主人が出てくるまで座らずに待つのが作法
です。家の方でも、お客様が手持ち無沙汰にならないように、絵を架けたり、花を
生けたりしているのです。これからは、書や絵や花をご覧になりながら、立って
待たれたらいかがですか」

この忠告をありがたく頂戴して、私は私なりに実行してきた。二十数年たって、文藝
春秋に人物論を連載しているとき、当時日本経済の要の位置にいた興銀頭取の
中山素平氏にインタビューを申し込んだ。
銀行の応接室で小林和作画伯の大きな絵を見ながら待っていると、頭取室から
中山氏が出てこられて、開口一番、こう言った。
「キミとは初対面だ。どんな男かと、キミをよく知っている三菱銀行の田実頭取
(故人)に電話で聞いてみた。こちらが出てくるまで応接間で立って待っている
男だよ、という田実さんの返事を聞いて、キミとあってみる気になったんだ。
あとで田実さんに礼を言っておき給え」 (引用終わり)

横山国男

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2008年05月21日(水)更新

ナイスガイ今田竜二の初優勝。

世界で最もレベルの高い「アメリカプロゴルフツアー」で、今田竜二がついに栄冠を
ものにしたニュースは日本のゴルフフアンを久しぶりに大いに湧かせ喜ばせました。

昨日(20日)は私も早朝5時過ぎからBS1の実況を観ていましたが、18番ホールの
難しいアプローチを1mほどにつけ、落ち着いてバーディーパットを沈めてトップタイ
になった時は、去年の同一大会でのプレーオフ(第2打を池ポチャしてZ・ジョンソン
に負けた)がよみがえり、ドキドキしました。

今田竜二はゲームを振り返って、特別なホールをあげませんでしたが、私は16番の
1打目フエアウエイバンカー、2打目グリーンバンカーと唯一のピンチを、落ち着いて
ピンそば60cほどに寄せ、パーをとった3打目のバンカーショットがハイライト
だった、と思っています。

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ゴルフを始めて間もないころでしたが、83年の「ハワイアンオープン」で劇的な
最終ホールでの逆転イーグルで日本人初優勝を決めた青木功(1勝)から、
丸山茂樹が01年初優勝(現在3勝)を挙げるまで、ほかの名手も挑戦しましたが、
18年もの月日がたってしまいました。

宮里藍、さくら、石川遼などの活躍で、今では「ジュニアゴルファー育成」が隆盛と
なり、「JGAジュニア会員」も2001年の6000名から、07年末には10000名を
超えるまでになっていますが、今田竜二が14歳で「マスターズに出たい、あの美し
いオーガスタで世界のプレーヤーと競いたい」という夢と希望を胸に、親の反対を
押し切って渡米した頃は、まだジュニアゴルフは一部のものでした。

それから17年、今回の優勝でついに自身の夢、マスターズ出場権も手にしまし
たが、これこそ「アメリカンドリーム」、ゴルフに限らずこの閉塞日本を突き破る
若いパワーが続いて欲しいと期待せずにはいられません。

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ハンサムで静かな今田竜二ですが、やはりインタビューでは少し興奮したので
しょう、プレーオフで倒した米国人ケニー・ペリーを2度も「ケニー・ペリーさん」と
言い直したのも微笑ましかったのですが、外国人プレーヤーも多いアメリカツアー
ではあっても、彼のそのような謙虚な態度が好感をもって受け入れられている
はずですし、ツアーメンバー、ご当地であるジョージアはもちろん、全米のゴルフ
フアンから祝福を得られたに違いありません。

かつて日本ツアーで予選落ちした丸山茂樹が、「こんなしょんべんコース」と放言して
物議をかもし厳重注意を受けましたが、丸山選手も米ツアーが長くなり、アメリカの
プロスポーツが、多くのボランティアに支えられ、ツアーやプレーヤーも毎年巨額の
チャリティを続けている現実を学んだことでしょう。(アーノルド・パーマーなどの支援
がなかったら成り立たない病院もあるのです)

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プレーオフは昨年と全く逆の展開となり、勝利の女神は今回今田竜二にほほ笑ん
だわけですが、ケニー・ペリー(9勝)は身長188cで15c差、体重も20kg多い
巨漢のトッププレーヤー、年齢だけ今田が17歳若い31歳ですが、ゴルフは経験
と記憶がものをいうスポーツですから、本当に今田竜二はよくやったと思います。

冷静なゲームプラン、研ぎ澄まされたアプローチの技術とパットの感性を持つ
笑顔のすばらしい「リュウジ・イマダ」から、これからも目が離せません。


横山国男

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2008年05月13日(火)更新

雑誌も読者とともに歳をとる。

何も手近に読むものがないと、カナイが購読している何種かの「婦人雑誌」でも手に
とります。特にラグジュアリー系といわれる「F画報」や「K画報」などは、上質紙に
美しいカラーの誌面、内容もなかなか楽しい記事があり、オジサンのセンスが少し
は磨かれるような気がしないでもありません。

そんな中、今月6月号をもって「主婦の友」が、創刊から91年の歴史に幕を下ろし、
休刊となったようです。(通巻1176号)
昔、読んだことがあるような記憶もありますが、ライフスタイルの変化が、息の根を
止めたようです。

毎月のように色々な分野、特に生活文化関連の新しい雑誌が創刊されるよう
ですが、なかなか100号、200号と続く雑誌は少ないようで、中には5号あたりで
早くも休刊宣言、ギブアップするケースもあるようです。(廃刊でなく休刊とするのは
苦心してつけた“誌名”をキープしたい、あるいは他社に使わせないという意図だと
聞いたこともあります)

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10年ほど前、「K画報」(今年創刊50年)の通販ページに、「トートバッグにペットの
写真をプリントします」という企画が採用され、綿のバッグが有名な京都の
「I 帆布店」さん製だったこともあって結構売れました。
現在のようにデジカメもまだ普及していませんし、オンデマンドのプリンターも手軽な
ものはない時代、編集部から送られたきた読者のペットの写真をスキャンして、
トリミングや画像補整、名前を入れてカラーコピー転写をしました。

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この企画で通販の責任者である、ベテランの編集者Iさんと何度か打ち合わせに
市ヶ谷の本社でお会いしたことがありますが、あるとき主力の「K画報」を手にとり、
「横山さん、雑誌も読者とともに歳をとるんですよ」と言われたのが、とても印象に
残っています。

中心の購読者層の年齢が上がっていけば、雑誌の方も当然それに対応するような
企画・編集になる、すると若い層の支持を得られないので「別冊」とか「ミスK画報」
などを出すことになるんですよ、というようなお話でした。

日本のファッションのブランドなどにもそのような傾向があるかも知れません。
好きなブランドでも対象年齢層を動かさなければ、いずれ古いお客さまは来店しな
くなるでしょう。このあたりは当然マーケティングが進んでおり、さらに年齢が上がっ
た顧客を引き続いて自社の購買層として確保するため新ブランド開発や戦略を練る
わけですね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昔に比べ、本を読まない人が増えている、情報は勿論のことネット上でも本が読める
という時代。
かって「週刊女性」編集長から「K画報」の編集長に就任し、リニューアルを成功
させて60万部雑誌にしたといわれる名編集者「諸井薫」(故人)のような人が出現
したとしても、出版を元気な時代に戻すことはもう無理なのでしょうか。

およそ1世紀、最後まで残った老舗の婦人生活雑誌の休刊(廃刊?)は、時代の
変化、世代の交代を実感させる出来事に思えます。

横山国男

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2008年05月12日(月)更新

「就職氷河期っ子」の叛乱・・待ってました。

先日、14年勤めた地元銀行を円満退社、外資系生保へ転職し、ライフプラン、
経営コンサルなどにも頑張りたいという挨拶状(決意状かな)を送ってくれたのは、
入行時、当社の取引支店へ配属されて以来の友人(と思っています)で将来を
すごく楽しみにしてきたYさん。

 W大の法学部を卒業、大手航空会社のパイロットの最終選考で、厳しい「眼」の
テストで望みをかなえられなかったと聞きましたが、郷里の銀行へ就職。
時代は平成不況の真っ只中、当時を「就職氷河期」とも称するようです。

娘の高校の先輩で、生徒会活動なども一緒にやったそうで、最初から親密になり
夜遅くまで飲みながら仕事のこと、趣味のことなど親子のような年齢差にもかかわ
らず、“話を合わせてくれました”。
実はこの資質が成功の第一歩だと私は考えていますので、今回の選択はとても
よかった、心配しなくても君は必ず成功するよ、と言ってあげたい気持ちです。

優秀なYさんはその後銀行が現在最も注力していると思われる「企業再建の
プロジェクト」担当となり、かなり勉強をされたことも今後大きく活かされていくこと
でしょう。「中小企業診断士」や「ファイナンシャルプランニング技能士」の資格も、
お客様との話に「利酒師」の資格も大いに役立つんじゃないですか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ところで私が常日頃不思議なのは、なぜ大企業、中企業などが「新卒」に拘るのか
です。七・五・三ともいわれるように、大卒の三割は入社三年以内に転職、転社し
てしまう現代、採用に伴う費用、OJT、先輩社員の少なからぬ指導や、新人に
ありがちな失敗の尻拭いまで企業にとって損失は大きいはずです。

優秀な人材であっても、就職時の景気に左右されて希望する会社へ入れないこと
は勿論、その後の人生にまで影響し、中にはすっかりやる気を失くし、転職をくり
返したあげく、フリーターをやっている団塊ジュニアもいるようですが、少子化の国
にとっても団塊世代の大量退職の企業にとっても重大な損失だと思わずにはいら
れません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「真の雇用の流動化」とは何をいうのでしょうか。僅か半世紀の間に先進し、成熟し、
高齢化し、もう目の前には真似てきた“モデル”が無い日本。
「中小企業・零細企業の経営者の多くが“立ち竦んでいる”」というのが実態では
ないでしょうか。ならば30代半ばの彼らの力を活かせばいいのでは、とも考える
のです。

自分たちのせいではない「就職氷河期っ子」のみなさん、頑張って一人でも逞しく
こんな閉塞した日本の現状を突き破ってください。

横山国男

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2008年05月08日(木)更新

素晴らしかった「黒沢明アート展」(2006)。

前回ブログで2年前に当時日本では福井でのみ開催された、巨匠黒沢明監督の
絵コンテ展「黒沢明アート展」が感動ものだったことを書きました。

このブログを書くため展覧会場(福井県立美術館)で買った「図録」と「T-シャツ」を
探しましたが、どうしても見つかりません。そのうち「あれ!?こんなところに」と
なるのは最近は日常茶飯事なのであまり気にしないことにしてますが。

T-シャツの図柄は「床几に腰かけた武将の甲冑姿」で、おそらく信玄の影武者を
プリントしたものですが、この絵は久米繊維さんのギャラリーの壁にもかかって
いました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

160点余りの絵コンテ(原画)は主にスケッチブックなどに描かれたものですが、墨、
水彩、アクリル、油絵と手法はいろいろ、ササッと描いたものもあれば、かなり時間
をかけて描かれたものもあります。そのほかに日本の代表的画像メーカーがインク
ジェットの最先端技術を駆使して2.5mx4mほどのフルカラー出力の拡大画が
精緻な解像度で30点近く展覧され、これもまた素晴らしいものでした。

このあとイタリアなど海外3ヶ所で展示されたようですから、原画はもちろん、日本
のデジタル印刷の高い技術にも驚嘆したことでしょう。

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前回ゴッホを凌駕するなどと書いたのは大袈裟ではありません。「ゴッホの自画像」
に似た「農夫」の絵は、きれいな赤と反対色(補色)の鮮やかなグリーンを輪郭の
要所に使い、ゴッホの絵には無い強烈な印象を受けましたし、「夢」の絵コンテ
では、街の上を飛んでゆく黒沢少年(と思われる)の幻想的な飛行体、俯瞰する
街並とのありそうでしかし現実にはない時空を感じさせて、今でも鮮やかに思い
起こすことができます。

深い哀しみを宿す眼光の武将、戦乱の中の女たち、軍馬と美しい旗指物、山、川、
炎上する城、槍衾、ハリネズミのようになった落ち武者など、もう百花繚乱手当た
り次第に沸き起こるイメージを絵にしたようにも見えるのですが、結局、稀代の
映画作家黒沢明監督の頭の中には、一本の映画の何万カットというシーンが全て
撮影前に出来上がっていて、そのイマジネーションで俳優を動かし、道具や光に
こだわり続けた完璧主義者のように私には思えます。

もちろん三船敏郎をはじめ、志村喬、宮口精二、加藤大介、藤原鎌足、千秋実など
“顔”ではなく素晴らしい「日本人の風貌(かお)」を持った名優たちも黒沢明監督の
絵コンテを作り上げる際の重要なモチーフだったに違いありません。

「影武者」の信玄公のコンテなどはどう見ても勝新太郎であり、この映画は勝信玄
が頓挫した段階で単なる「絵巻物」に変わったような気がします。双方にとって不幸
なことでした。仲代達也は「用心棒」が当たり役だったと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

もし、黒沢明自身が「本当は画家になりたかった」と語っているように、黒沢明画伯
が実現していたら、あの強烈で類稀な色彩感覚と深い精神性は、ゴッホというより
ルオーに近いのではないか、と2年経った今でもそんな楽しいことも想像させて
くれる、私にとっては思い出に残る素晴らしい展覧会でした。

横山国男

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2008年05月06日(火)更新

黒澤 明・クロサワアキラと戸田正寿さん。

この数年連休の初めに仙台へ旅行することが恒例になっていて、今年は仙台の
奥座敷といわれる秋保(あきう)温泉へ。

小松・仙台間は50分ほど、自宅からでも2時間ほどで仙台空港なのでとても便利
なのです。友人夫妻がどうしても現代和風建築の粋「茶寮宗園」へ案内したい、
とのことなのでこのような所へ泊まれるのは生涯一度あるかどうかわからないので
お供することに。

ただ、着いた日秋保カントリーでゴルフをした際、右ひざを傷めたようで、帰宅後の
連休後半はずっと自宅でカナイと花を植えたり、読書・TVの毎日でした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんな中、昨日のBS2「クロサワ・アーカイブス特集」を、TVの前でカナイとコーヒー
なぞを飲みながら5時間、トイレに立つ間も惜しみながら、喰い入るように観ました。

30本の監督した映画のほとんどを観、黒澤本もかなり持っていますが、何度観て
も飽きませんね。
夜9時過ぎからの「野良犬」も観て、忘れているシーンもあり、またまた引き込まれて
画面に釘付け状態、至福の「クロサワ デー」でした。

評論家でもない私が、このようなブログで「黒澤 明」「黒澤作品」「映画芸術」など
について、まして自身の人生に深く食い込んでいるであろう「クロサワ アキラ」と
いう日本が生んだ偉大な「映像作家」についてチョロッと語るなど不遜とさえ思い
ますが。

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ジョン・フォードとジョン・ウエインが作り出した「詩情」と同じように、黒澤作品では
「三船敏郎」が全てであったように今でも頑固に思っています。フアッションは勿論
その風貌、バランスがよく強靭な肉体は今時のイケメンなど足元にも及びません。

三船の剣サバキ(七人の侍の菊千代と用心棒や椿三十郎でのタチマワリ)、ジョン
・ウエインがライフルをずーっと馬上疾走するインディアンを追いながら引き金を
弾く独特の呼吸など「この監督にしてこの俳優あり」(その逆も)と感激したものです。

大体黒澤映画といえば、巻頭豪快な筆文字で書かれたタイトルと音楽で完全に
シビれてしまいますよね。映像と音楽で作られる映画は「総合芸術」といわれ
ますが、デジタルで何でも可能のように見える21世紀、我々は黒澤明のような
作家に再び会えるのでしょうか。

ホームシアターまがいのものを作ったので、これから黒澤明の全作品を少しずつ
鑑賞することを楽しみにしています。

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ちょうど2年前の5月、世界で4ヶ所でしか公開されなかった(日本では福井だけ)
黒澤明の2000点におよぶ絵コンテ原画から200点を展示した「黒澤明アート展」
が開かれ、さらに画家としての驚嘆すべき才能に触れました。中にはゴッホ以上
では、と思われる作品まであり、何度も会場を行きつ戻りつしました。

この稀有な展覧会がなぜ福井で開かれたかといいますと、この展覧会のアート
ディレクター戸田正寿さんが福井県坂井市出身だったご縁です。

私がこれまでに最も心に残る「広告デザイン」に40年も前の「フォルクスワーゲン」
の“かぶとむし(ビートル)”の広告(ビートルが機能を追求した結果のデザインで
あることを訴求するために、このような変な形でも人類が初めて月に足跡を着けた、
として月面着陸船を引き合いに出した広告)と、80年代初頭のサントリーローヤル
ウイスキーの広告「ランボー」がありますが、この「ランボーシリーズ」が戸田さんの
作品であることがわかり、ここでもランボーと黒澤映画がつながったような気がした
ものです。

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いつかブログで「黒澤明アート展」について書きたい、と思っていましたが、その気
になったので思い出を次回に。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
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会社概要

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個人プロフィール

「知るは喜び、調べるは楽しみ、分かるは感動、学ぶは一生」とか。高齢者の仲間入りの年齢ですが、仕事でも趣味でもICT時代の恩恵に感謝しています。趣味・・本好き、水彩画、ゴルフ('05までJGA委員、現在中部ゴルフ連盟ジュニア育成委員ほか。エポック・・還暦のアルバトロス、'06...

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