株式会社横山工藝 代表取締役 横山 国男 の日記 | 経営者会報 (社長ブログ)
「プリント道」45年余。新たな自身の夢と後継者への手紙-(株)横山工藝社長 横山国男のブログ
2007年07月16日(月)更新
倒産した会社社長(知人)にバッタリ合いました。
向こうから大きな書類カバンのようなものを提げてこちらに歩いて
来られるのはまぎれもないA社長さん。
昨年、大きな負債を抱えて行き詰ってしまい、それほどお付き合いの
ある方ではないのですが、温厚で話題も豊富、A社長のご友人が経営
する千葉の立派なゴルフ場へお供したこともあります。
私が先に気づきましたが、一瞬「たじろいだ」ような感じがあったのは
どんな風に言葉をかけるか、迷ったからです。
「やあ、横山さん、元気?」と明るく先に言われてしまいましたので、
こちらも「お久しぶりですねェ、Aさんこそお元気そうで」となんだか
つられてというか、ホッとしてというか、どちらにしても何事もなかった
ような雰囲気のまま、しばらく立ち話をしました。
丁度、法的な整理が済み、事業を引き継ぐ会社も現れてホッとされていた
のかもしれません。中国などへの地すべり的な産業移転の代表業種とも
いえるお仕事でしたから、時々「A社長さん、どうされているだろう」と
思い出すこともあったのです。
短い間でしたが、私の仕事のことなどもお尋ねになり、またご自身の計画や
インターネットの話題まで、「刀折れ、矢尽きた」「いっぺんに年老いた」等
の感じはあまりなく、本当に嬉しく思いました。
もちろん、債権者への責任を感じておられないはずがありません。また苦悩
の夜も数え切れないほどあったはずです。
しかしあらゆる手立てを講じても歴史の流れに勝てない局面もあるのではない
でしょうか。
事業の失敗から、ヌケガラのようになったり、まして自死を選ぶなどという
ことがあってはなりません。
「事業に命を懸ける」というのは「そのくらいの決意で」という分には賛成で
すが、「ビジネスはビジネス」とあらためて自分に言い聞かせました。
別れたあと「Aさん、頑張ってくださいね」というような気持ちで振り返り
ました。人通りの少ない午後の繁華街でしたが、でもやはりちょっとお体は
小さくなられたような気がしました。
横山国男
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【オーダー よさこい屋】
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2007年07月12日(木)更新
グーグルというインフラ
「ウェブ進化論」(梅田望夫著・ちくま新書)、「グーグル Google既存のビジネス
を破壊する」(佐々木俊尚著・文春新書)ともに昨年2月と4月の発行で、増刷が
すごいですから、既に多くの方がお読みになっていることでしょう。
結果、私の中に何がおきたか、といいますと、
1.自社の将来に明るい展望を持った。
2.愛読するブロガーが言われるように、個人的にもこれからの人生がネットの
おかげで豊かなものになりそう。
3.「パソコンスクール」に通いはじめた。
などですが、何といってもあらためて「グーグル」のすごさ、「検索エンジン」
などという範疇には収まらない、世界的な「情報インフラ」になりつつあることを
知りました。 一私企業なのに“全能の神か”とすら帯にあります。
何事も「光が強ければ影も濃くなる」ので、いいことばかりではないと思いますが、
1. 2.については、世界中の零細な企業・個人に大企業と伍してビジネスの
チャンスが生まれる(究極はC2Cと考えているので、我が意を得た感じがあります)
個人の生活面ではネット上に膨大な「人類の知」「情報の顕在化」がなされる結果、
豊かな老後を想像させるものがあります。
この小さなディスプレーの向こう側に、“私”という個人にとって「無限」とも思える
世界が広がっていると考えると、「革命」としか考えられません。
というわけで、高齢者の仲間入りを目の前にして、「パソコンスクール」に通いはじめ
ました。
若い人のように、パソコンを自在に扱えないのは悔しい思いがします。時間と費用は
覚悟の上です。
昔、仕事で「船積書類」をタイプしていましたので、何十年たってもキー操作は指が
覚えていてくれるのですが、その他のこと、たとえば「パソコン」や「インターネット」
などというもの自体が我々の年代には「謎」としか思えないのです。
スクールの帰り、書店で「特選街」という雑誌を手に取りました。8月号の
特集は“必勝!Google完璧活用術”“インターネットの不思議99”など。
買わずにはいられません。
横山国男
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2007年07月09日(月)更新
省エネを楽しくやる方法
今号は国語学者の金田一秀穂さん。
面白いと思ったのは、毎日の食事の記録ではなくて以下の文章です。
『6月8日(金)「・・・八王子の杏林大学へ車で出勤。いかに燃費よく
走るか、というのに目覚め、挑戦中。今日は帰途、調布でリッター13.2
キロメートルを記録。」・・・・』
ああ、これはいいかもしれない、と思いました。
毎日一定の距離を走るマイカー通勤のような場合、いかにガソリンの消費を
少なくして走れるか、に挑戦する・・・最も効率的な走り方や、渋滞時に発進、
停止を繰り返すことで燃費が悪くなるなら、家を早めに出るとか、急発進、
急加速、急停止など「急」のつくことは燃費にも当然悪いわけですし、第一
事故にもつながりかねません。
このように「省エネ・省資源」の記録に挑戦する、しかも家族を巻き込んで
楽しくやる、というのはなかなかいいかもしれません。
ごみも毎回体重計で量って、だんだん分量を減らしたり、水を切って出す
(特に水分の多い生ごみは当然焼却場の燃費を悪くします)、冷蔵庫など
は不要不急なもので一杯だと電気の使用量は当然増えますから、必要なものだけ
に限定するとか、電気・水・灯油・紙何でも使用量削減の「記録に挑戦する」
というのはいかがでしょうか。
家計簿のような「省エネ・省資源簿」があるといいですね。努力の跡がわかると
いうわけで、励みになります。
生きていること自体、あるいは快適な生活を享受していれば、何らかの環境に
対する負荷をかけていることは間違いないので、先進国に住む人はそろそろ
一人ひとりが考えなければならない時期にきていると思います。それも楽しく
やれれば長続きすると思うし、子供たちの環境意識教育にもプラスになること
は間違いありません。
横山国男
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2007年07月04日(水)更新
「年金問題」と「言志四録」
家を新築しても、ライフスタイルまで急に変えられるものではありませんから、立派なガレージにチョコンと小型車と軽自動車が納まっていたりするのを見ると、妙に納得するものがありますが、それにしても「年金問題」でさらに公務員の働きぶり、職業倫理への批判が強くなったように思います。
昔、公務員を揶揄して「休まず、遅れず、働かず」などと言われましたが、その上こう不祥事が続くと、時節柄世間の目はいっそう厳しくなっても仕方ありません。
例によって日本のマスコミは、社会保険庁などに集中砲火を浴びせていますが、かっての担当者も含め、ブログなどで反論する人はいないのでしょうか。
現職はともかく,退職者からでも「公務員側からの真っ当な話」も聞きたいものです。
・・・・・・・・・・・・・・・
神渡良平著『佐藤一斎「言志四録」を読む』(致知出版社)を読んでいますが、この年齢になるまで佐藤一斎をよく知らなかったことを恥じるというか、惜しいことをした、という思いです。
巻頭に近いところで「言志四録」を血とも肉ともなるまで自分のものとした西郷隆盛の話がでてきますが、隆盛の遺訓集「西郷南州遺訓」に素晴らしい言説がありますので引用させていただきます。
「廟堂に立ちて大政を為すは天道を行うものなれば、いささかとも私を挟みてはすまぬものなり。いかにも心を公平に操り、正道を踏み、広く賢人を選挙し、よくその職に任える人をあげて政柄を執らしむるは、すなわち天意なり。それゆえ真に賢人と認める以上はただちにわが職を譲るほどならではかなわぬものぞ」
(政府にあって国の政をするということは、天地自然の道を行うことであるから、たとえわずかであっても私心を差し挟んではならない。どんなことがあっても心を公平に保ち、正しい道を踏み行い、広く賢明な人を選び、その職務に忠実に耐えることができる人に政権を執らせることこそ、天意にかなうものである。だから本当に賢明で適任だと認める人がいたら、すぐにでも自分の職を譲るくらいでなくてはいけない・・著者意訳)
今月は参議院選挙ですね。 また役人の心構えについては、
「万民の上に位する者、己を慎み、品行を正しくし、驕奢を戒め、節倹をつとめ、職事に勤労して人民の標準となり、下民その勤労を気の毒に思うようならでは、政令は行われがたし」
(多くの国民の上に立つ者は、いつも自分の心を慎み、身の行いを正しくし、驕りや贅沢を戒め、無駄を省き、慎ましくすることに努め、仕事に励んで人々の手本となり、一般国民がその仕事ぶりや生活を気の毒に思うくらいにならなければ、政府の命令は行われにくいものである・・著者意訳)
西郷さんは本当にそう思い、実行したとありますが、経営者にとっても教えられることが多々あります。
なにもかも否定した戦後教育、今、維新の兆しすらないこの国、残念に思っている人も多いはずです。昔、元服の年頃にはこのような素養を持った日本人も少なからずいたことを思うと、あらためて「教え育む」ことの大事さを考えさせられる本です。
打ち続く不祥事・・先生だけでなく一般公務員にも倫理観、初心を忘れぬよう、免許更新制が必要な時代かも知れません。
横山国男
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2007年07月02日(月)更新
<吉川壽一個展に久米繊維工業・当社もコラボする>
SICILIA―SYO杲杲(コウコウ)展」が、東京九段南の「イタリア文化会館」で
6月29日から始まりました。
前夜の28日には会場でパーティーがあり、久米秀幸常務や私も出席しました
が、供された「吉川壽一書ラベル」の直送シチリアワインはとても品の良い美味しい
ものでした。
今回は昨年の中東ドバイの沙漠での書制作、個展に続いて、先ごろイタリアの
文化財団から「世界の7人の芸術家」の一人としてシチリアに招かれたことが
機縁となり、有名な現地ワイナリー「PLANETA」社の「日本におけるイタリア
2007」の催事として、全面的なバックアップを得た経緯があると聞いています。
彼(小学校の同級生でもあり、当社のアドバイザーでもあるので、こう呼ば
せてもらいますが)は「SYO ARTIST」と自称しているとおり、「毎日書道」の
前衛書部門の重鎮でもあるのですが、昔から目は世界に向いていました。
ビジネスの世界にいる我々と違い、書道界で60歳代の半ばは、「いよいよこれ
から」ということかも知れませんが、それにしてもそのエネルギーには驚嘆す
べきものがあります。
大いに飲み、食べ、あちこちで夢を語り、福井と東京で書教室を開き、毎年の
ように海外でも制作し、その成果を「個展」で発表、頼まれ事は嫌な顔ひとつ
せず、あらゆることを見聞きし(宮沢賢治か?)、超多忙の中、ほとんど毎日
「開運ひと文字HAPPY!」というブログを書き続けて3年足らずで今や1000回を
超えるという、博覧強記の「スーパーカリグラフイスト」。
コミック「書きくけこ」(講談社)のモデルにもなるはずです。
その仕事の質と量にケタ違いのものを感じて、“同じ時間を生きてきたのに”、と
うなだれるほかありませんが、さらに近年はますますアクセルを踏み込んでいる
感じがするのには理由があるように私には思えます。
ひとつは、NHK大河ドラマ「武蔵」の題字と各回のタイトルロールを一年間書い
て全国にその名が知られるようになったこと、もうひとつは刎頚の友ともいうべき、
吉田福井新聞社長を失ったこと(高校時代の同級生で最大の支援者でしたが、
3年前急逝)です。吉田社長とは私もゴルフ仲間でしたが、「無念の死」が吉川
壽一の背中を常に押し続けているように見えます。
吉田耿介氏は吉川壽一を評して「彼は床の間芸術家ではない。(略)あえて
名づければ“書の冒険家”だ」と書いたことがあります。
今回の展覧会では、久米繊維さんの「日本のTシャツ“楽”」シリーズに、当社が
壽一書を「アナログ魂デジタル才(彩)」でプリントした実験的な作品も数多く
展覧されています。
7月15日まで。ぜひご高覧ください。
花鳥風月「楽」
*「楽」字に花鳥風月4文字が隠されています。
吉川壽一は「文字遊び」の名人でもあり、すぐれたグラフィックデザイナーでもあることを示していると思います。
横山国男
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2007年06月27日(水)更新
<人・モノ・私(2)-アンチックの革トランク>
写真の「革トランク」は、日本製で1930年代大阪のBABAMANというメーカーのラベルが内側に貼ってあります。
ものすごく堅牢な作りで、内張りの生地(綿布)も完璧、今でも使えますが、これが空港のターンテーブルから出てきたら、皆さんきっと驚くでしょう。
これは10数年前、小松市の知り合いの骨董屋さんで見かけて即買いました。ラベルやシールの残った「革トランク」を手に入れたいと念願していましたので、小躍りして言い値で買いました。
持ち主はM.T.さんという大阪市の技師だったことがタグに残された名刺でわかります。トランク自体にもしっかりしたイニシャルの刻印があり、誂えで作ったものかもしれません。
ラベルを仔細に見ると、1938年、39年ごろヨーロッパへ旅行して(おそらく仕事だと思われます。地下鉄の関係者であることが名刺の肩書きにあります)N.Y.K.(日本郵船)のKASIMAMARUで渡欧したこと、しかも1等のキャビンだったようです。
ヨーロッパはナチスドイツの台頭で、戦雲色濃くなる時代、このカバンは持ち主とともに
ベルリン、ブラッセル、パリへ(ホテルのシールから)、そしてクイーン・エリザベス号やクイーン・メリー号を擁したイギリスの客船会社CUNARD LINEのラベルも貼ってありますから、ロンドンにも渡ったことでしょう。(ROYAL ALBERT DOCK LONDONのラベル)
いろいろ夢想は尽きず、楽しいものです。
あきれたカバン好きで、スーツケースだけでも大小7個ほど、その他ボストン、ブリーフケース、キャリーバッグ、ガーメントケース、などなど30個はくだらないと思いますが、
70年も経ているものはこれのみです。
横山国男
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2007年06月19日(火)更新
次の5年、”自社の環境問題”をテーマに頑張る
6月は世界的に「環境問題」を考える月として、国連その他、学者・研究者から
温暖化、資源の枯渇などに対する提言・警告が連日TV番組などで特集が組ま
れて、「これはえらいことになる」と思わざるを得ません。
日本でも6月を「環境月間」としています。
「年金問題」で頭がそっちの方へいってしまって、「それどころじゃない」という
ことかも知れませんが、資源の枯渇や、新興国のエネルギー需要の爆発的な
伸びが、価格の高騰、物価の押し上げにつながり、「年金暮らし」の甘い老後
などを夢見ていると、ひどい目にあうのでは、と思ったりします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
当り前のことですが、人間は自分が生きている間の体験や事象の変化しか
「実感」できないわけですが、どう考えても私の経営者としてのこの30年は、
(60年間日本は戦争には直接関係なかったことをのぞいても)、振り返って
「環境」という視点からみると、とんでもない時代だった、と。
私たちはこの点では”A級戦犯”として将来裁かれるかも知れません。
今時、盛大な創立記念のパーティーや、賀詞交歓の年賀会などは、株主から
クレームがつくという理由でも減ったそうですが、あの大量の食べ残しや、
もらっても困ってしまう記念品など、「こんなことをしているといつかはバチが
あたる」と考えたのは私一人ではないと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
先に豊かになった日本(物質的にですが)は、なかなか新興国に対して「資源・
エネルギーの大量消費」を「いけないこと・考えなければならないこと」として
強調できないウラミがありますが、ここはひとつ「自社・自分」からできることを
始めなくては、という気になっています。
3Lの排気量の車に乗って「なにを偉そうに」と言われれば、一言もありませんが、
これからの5年、「省エネ・省資材」をテーマに「コンパクトな会社・工場造り」を
目指すことに決めました。
近くの里山に登って(頂上の茶屋で時々昼飯を食べますが)、市街を見下ろすと、
わが社は周辺に民家が多いので、屋根が結構大きく見えます。
ここに「ソーラー設備」「雨水(中水)利用」など、いろいろなアイデアが浮かんで
きます。
いずれも高額な設備費がかかるでしょうから、おいそれとはいかないでしょうが、
何とか一部でも実現するのを「最後の仕事・地球への罪滅ぼし」にしたい、と
考えています。
親友の建築家で「環境問題の実務家」でもある友人が、「OA機器や湯沸かし
ポット、TVなどすべての待機電力をやめると原発3基が要らなくなる」とか言って
いましたが、とりあえずこのように小さなことから始めなくては、と思います。
その前に、コンセントを抜くため、山になっている本やガラクタの類を片付けなく
てはなりませんが。
横山国男
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2007年06月13日(水)更新
【明大生さんとの一問百答】・・・積善の家(企業)に余慶あり
<質問>
(明治大学商学部 名越蔵人さん)
企業が利益を追求することは当然と思いますが、昨今起きている企業不祥事を見ていると、利益を
過度に、あるいは容易に求める体質に原因があるように感じています。
みなさまは、企業の過剰な利益追求について、どう思われますか。
過剰な利益とは縁遠い地方の小企業主が考えていることです。
ご質問のなかに「体質」という言葉がありますが、簡単に言うと現代社会は
あまりに経済偏重、すべてを「カネ・マネー」というモノサシでしか計れない、
すなわち「拝金主義」が蔓延してしまった、ということにあると思います。
「積善の家に余慶あり」という諺は、「易経」にあるのだそうですが、その方の
素養がありませんので、ただなんとなく今回のご質問で思い浮かんだだけで
すが、「余慶」とは慶事の余ったものの意味のようで、「いいことがやってきま
すよ」の意とか。
「利益」を余慶と考え、「余計」とも解釈すれば、おのずと企業活動の目的や、
その結果としての利益、そして分配も正しいものになるのではないでしょうか。
「陰徳あれば陽報あり」という同様の諺もあるのを最近知りましたが、「積善・・
・・」と同じような意味で、ただどちらも「隠れて善行を積む」という意だそうです
から、私にはなかなか出来ないことですが、実践されておられる経営者個人、
企業もかなりあるのでは、と推察します。(当然表には出されませんので)
逆にいえば「余慶たる利益」は「積善」の結果からしか生まれないし、企業を
永続的に発展させようと思ったら、これが一番確実な方法かも知れません。
横山国男
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2007年06月12日(火)更新
「人・モノ・私」-1。 ”石田縞”と母さんの夜なべ
♪母さんが夜なべをして手袋編んでくれた・・・・という懐かしい唄がありますね。
夜なべの語源はよく知りませんが、現代でいうと「残業」みたいなものでしょうが、
そういう味気ない言葉ではニュアンスが伝わりません。
私たちの年代で、この唄から連想するのは、季節は冬、外は木枯らしか雪、
場所は囲炉裏端、綿入れの半纏を着た頬っぺたの赤い子供たち。
母親がいるシーンとしては「里の秋」もとても好きですが、今の子供たちにはなか
なかイメージするのは難しいでしょう。
子供の頃、私の家は市街と農村の境目ぐらいにあり、中学校はまわりはすべて
田圃、親戚には農家もありましたので、農家、農作業はなじみ深いものでした。
雪深い土地なので、このあたりの農家は冬はもっぱら家の中で「むしろ」「縄」など、
春になると必要になるものを、時には「夜なべ」までして手作りしたようです。
・・・・・・・・・・・・・・・・
福井市に隣接する鯖江市に「石田地区」というところがあります。
ここで昔から織っていたのが「石田縞」といわれる綿の小幅の素朴な織物。
たしか「石田藩」というのも聞いたことがありますから、「小藩」の物産としての
位置付けがあったかも知れません。
詳しくは知らないのですが、おそらく産業とか企業というスケールではなく、
農家の女性の副業として、「いざり機(はた)」と呼ばれる手織り機で織られて
いたものと勝手に想像しているのですが、かなり前に姿を消してしまいました。
高度成長期には、採算のとれる仕事ではなくなったからだと思います。
写真のような柄は子供のころの布団に見覚えがありますから、おもに布団の
側(がわ)、紺無地のものは、このへんでいう「さっくり」という上半身は柔道着
のようなもの、下は股引のような農作業着としてよく見かけました。
昔は結構農家で副業として「機を織った」ようですね。私は工業高校で「紡織科」
でしたから、実習でよく機を織りましたが、小幅のこのような綿織物を織るのも
楽しいものでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
このような「手機(てばた)」で織られたものには、「信州紬」や「白山牛首紬」
などが現在も工芸品に近い伝統織物として(その多くは機械式織機)残っては
いますが、「石田縞」のような素朴な織物は以前は各地にありました。
母親は「縞割」といって、その糸の本数や配列を、小布の見本を貼った和紙の
小ぶりの帳面に「覚え」として書きつけました。それが「縞帳」と呼ばれるもので、
娘が嫁入りする時、持たせたという話もあります。
中にはコレクター垂涎のものもあり、美しい「デザイン帳」ともいえるものもあり
ます。
おそらく世界各地にこのような例があり、バティックやマドラスチェックなどもそう
いう形で伝えていったのではないかと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
残念ながら私は若い頃、そのような貴重なものという認識がありませんでした
ので、何も持っていないのですが、写真の織物は最近「謝礼」として2mほど
頂いたものです。
「古い呉服屋さんから、石田縞を一反譲って頂いたので、これを改装するホテル
のロビーに飾りたいが、どんな方法がいいですかね、やってもらえませんか」と
いうご相談があり、当社では経験がないので、パネルに仕立てる工房をご紹介
しました。
「もし、余り布が出たら頂戴できませんか」とお願いしておきましたところ、余りは
ほとんど出なかったので、その呉服屋さんにわざわざお願いして、残っていた別
の柄のものを探し出して届けて下さったものです。
手で撫でると節があり、ちょっとゴワゴワしていますが、「絹もの」とはまた違った
土の匂い、おふくろを思い起こさせる「優しさ」を感じさせていいモノです。
横山国男
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2007年06月11日(月)更新
「中国が世界をメチャクチャにする」という本
元『フィナンシャル・タイムズ』北京支局長だったジェームズ・キングという人
の書いた「中国が世界をメチャクチャにする」(草思社 1600円+税)を
読みました。
一気に読ませる理由は、この本が著者(英国人)自身が山東大学に留学し、
その後中国や日本におけるジャーナリストとしてのキャリアと、勿論筆力の
故でしょうが、「現代中国人の特にビジネスにおける所業」を、著者自身が
全て中国と世界の各地で、実地に取材・検証している点にあると思いました。
その点では、ドキュメンタリーでもあるのですが、それにしても直載な表題です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この本を読んで考えさせられたことはいくつかありますが、二つほど。
一つは私自身の仕事と関連の深い、繊維・アパレル産地イタリアのプラート
に何が起きたか、です。(プラートは一つの典型的な例です)
プラートは10年ほど前、繊維を地場産業に持つ福井が、モデルとして盛んに
取り上げたことがあります。
しかし、この700年に及ぶ織物の伝統を持つヨーロッパの古い町が、ここわずか
5,6年のうちに繊維関連企業六千社が半分以下になってしまった、という事実
の陰には、中国でも特に起業家精神旺盛な「温州人」が、大挙して移住し、
どん底の下働きから、技術、ファッションビジネスのやり方まであっという間に
習得し、本国へ持ち帰って、強烈な低賃金を武器に世界に進出をはじめたこと
にあるようです。
わが愛すべきプラートのイタリア人にとっては、いったい何が起きたのか、
未だに夢の中での出来事ではないのか、と思っているかも知れません。
700年の歴史がたった5,6年で崩壊したのですから。
最初は蛇頭の手引きで、命がけで渡ってきた温州の少数の人たちが、低賃金
で長時間働いてくれるので、そのうち合法的に移民として、市の商工会議所
等が音頭をとって、積極的に受け入れたのです。
今やプラートの人口18万人のうち中国人は2万人、チャイナタウンが出現し、
帰化した人も多いようです。
二つ目はベオグラードの中国大使館がNATO軍によって誤爆された時の、
著者の親しい友人、中国人外交官(女性)のとった行動の記述です。
この外交官が反米デモの中に加わり、北京のアメリカ大使館に投石している
現場に出くわした著者が、友人とは思えない怒鳴り声に呆然と立ち尽くす
場面です。
アヘン戦争から1世紀半におよぶ屈辱を口にし、「中国人はいつか復讐を
果たすことを思い知らせてやる、その時初めて痛みがわかるだろう」と熱弁を
ふるった、と書かれています。
しかし、話はこれで終わりではなく、1ヶ月後にハーゲンダッツで再会した時、
WTO加盟協議の話題にふれ、彼女は「長い目で見て得になる譲歩をする
用意はあるのよ」と言った、とあります。
この本は私に最近の「反日デモ騒乱」や「日本の移民受け入れ原則拒否の
国是」について深く考えさせられる一冊でした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しかし、このあと、さらに二つの考えさせられることがありました。
信州松本に在住するSさんのブログを毎日楽しみにしているのですが、松本と
いう地方都市から、日本人の暮らしと投資感覚、興隆するアジアの経済に関
する的確な分析などに好感と尊敬を持って読んでいます。
先日Sさんのブログに中国本土からの学生と称する人から投稿があり、
「うーむ」と思いました。
「中国は政治は共産党一党独裁、経済は資本主義市場経済、これを矛盾と
いうのはたやすいですが、いったい13憶とも15憶とも言われる多民族国家の
人民が一斉に豊かになりたい、と走り出した現状をコントロールできるのは
強力な(軍の力もふくめて)現政治体制だからこそ」というような主旨のコメントが
載っていました。
そして
昨夜は、「中国琵琶」コンサートに行ってきました。
はじめての中国琵琶は私に遠いシルクロードを吹く風の音、隊商の鈴の音を
連想させて楽しいものでした。それになつかしい「蘇州夜曲」「夜来香」・・・・。
琵琶演奏の閻杰(えんき)さんをはじめ、二胡、これもはじめて聞いた中国古箏
奏者の皆さんはいずれも美人揃い、流暢な日本語でトークも上手、私の少し
とがった中国への思いを和らげてくれました。
お互いの「文化」を識り、尊重することも理解への第一歩・・・大事なことを
気づかせてくれた日でした。
横山国男
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