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2008年03月26日(水)更新

異動の季節

福井県の「地域産業=デザイン・工芸振興グループ」主査のFさんから、異動の
メールをいただきました。

1年前、デザインセンターから異動され、福井県の代表的産業である、合繊織物
の振興企画として3年目を迎えた「全国YOSAKO衣デザインコンペINふくい」の
推進役を勤めていただき、当社もいろいろお世話になりました。

3年ほど前、デザインセンターが主催する「ワークショップ」に、半年ほど参加させ
ていただいて以来のお付き合いでしたので、今度の短期間での異動は、私個人
としても驚きであり、残念なのですが、何よりご本人がビックリされたようです。

『今度は、なんと農林!販売開拓課であります。食べ物の世界であります。来週
からです。』とあり、『不安ですが、ちょっと関心しています』と、デザイン職である
ご自身のとまどいも少し語りながら、全庁あげて、デザインの事業ができれば
いいですね、とユーモアも交えて抱負も。

若いうちの色々な経験は、きっと仕事の幅を広げてくれるはず。頑張ってください。

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このように、Fさんからは今までの受講生に、ときどきメールが送られてきて、
セミナーの案内や、デザインに関する短い、しかし鋭い分析などもあって、楽しみ
にしていましたが、今回の「異動の報告」の中にも、次のような示唆に富んだ引用
がありました。

「デザインが、デザインであるうちはデザインでない」(佐藤 卓)

「ニッカ・ピュアモルト」の商品開発、「ロッテ・クールミントガム」や「明治・おいしい
牛乳」などのパッケージデザインなどでも著名なグラフイックデザイナー佐藤卓氏
(作秋“情熱大陸”にも登場)の語録だそうですが、気になってプロフイール、その
仕事観をちょっと知りたくなりました。

では、佐藤卓氏の言う「デザインとは何か」について、またまた教えられることが
多かった話は、長くなるので次のブログで。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2008年01月29日(火)更新

バーキンが“バーキン”を踏んづけた。

久しぶりに面白いTV番組を見せてもらいました。それは昨夜10時からの[SMAP
xSMAP](フジテレビ系)、フランスの女優ジェーン・バーキンがゲストとして登場
した「ビストロSMAP」のコーナーです。

セーターにダボッとしたパンツで、靴はどう見てもかなり履きこんだコンバースの
バスケットシューズ、靴紐を長くしてふくらはぎにまで巻きつけ、「バレーシューズ
みたいでいいでしょ」と。パンツを捲り上げれば、なんとグレーのタイツ(今はレギ
ンスというのかな)を穿いていらっしゃる。ここしばらくの東京の寒さ対策かも知れ
ませんが、日本のオヤジから見れば、モモヒキといわれかねないいでたちです。

「ナイル殺人事件」「地中海殺人事件」「美しき諍い女」などで、印象的なこの英国
生まれのフランスの名女優さんも、今や60過ぎとあれば、カッコつけないのかも
知れませんが、それよりフランクでスタッフに協力的で、とても人柄の良さが滲み
出て、好感を持ちました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

J・バーキンといえば、世界中の女性が憧れるエルメスのバッグ「バーキン」。
彼女と飛行機で隣り合わせたエルメスのデュマ前社長との出会いから、制作に至
った経緯も紹介し、持ち歩いている使い込んだ自分の「バーキン」の中身も、中居
クンが「見せて欲しい」と言うと、アッケラカンとテーブルの上にぶちまけて、驚きま
した。

和食を希望して、「おいしい、おいしい」を連発、出てくるものを次々と平らげる健啖
ぶり。勝負は木村拓哉・草薙剛のチームに軍配を上げましたが、ご褒美に持って
来させたのは、ブラウンとキャメル色の「バーキン」一個ずつ。
これには、さすがの木村、草薙の二人も興奮気味。

日本で買えば、先ごろまで一個80万円と聞いたことがあります。(今はユーロ高で
もっとするかも)。しかも一年待ちとか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

サプライズは続きます。木村クンが「これ、男でも持てますよね」「ウイ、モチロン
デス」と、二つのバッグをやにわに床に置くと、コンバースを履いた足でガンガン
踏みつけ、口を引っ張り、パンパン叩きます。

会場騒然、木村クンも「あーっ、バーキンが、・・・」と口あんぐり。
「ドウ、コレデチョットイイカンジデショ」 木村クンの顔を撫でる仕草は、顔の脂を
つけなさい、手垢のついた感じもいいものよ、いろいろぶらさげて楽しみなさい、
すなわち「長く使って自分のバッグにするのよ」・・・参りました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この衝撃的な映像をご覧になった「ブランド命」の日本女性は、眞に幸運だったと
思います。
なぜなら、「ブランドとはなにか」を一発でJ・バーキンが説明してくれたように私に
は思えたからです。

最高級の皮革と高度の縫製、「ブランド」と尊称されるバッグが簡単にへたるもの
ではない、という実証よりも、どのようなモノでもそれは所詮モノであり、大切なの
はそれを使う人間なのよ、ブランド品を使いこなして、ブランドに負けない人間で
あってこそのブランドなのよ、と言ってくれている気がしました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

長い間、食事や欲しいものを我慢し、憧れの「バーキン」を手に入れたい、と涙
ぐましい努力をするという話も聞きますが、私はケッコウそういうのは好きです。
昔からの日本人の「舶来品崇拝」「ブランド信仰」が、いいものとは何か、を学ぶ
のに大いに役立ってきたし、日本の高品質なもの作り、審美眼にも影響を与えて
きた結果、アジアでは一歩先んじているとも思います。

願わくば「ブランド」というものの本質を学ぶことによって、人と物の関係に思いを
致せば、さらに日本のモノつくりが磨かれる気がします。

横山国男

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2007年10月06日(土)更新

こしの都1500年・・「大祭の衣装作り」

継体天皇は応神天皇五世皇孫で、お生まれは近江の国(滋賀県)高嶋ですが、
御母が越前国(福井)の坂中井の娘で振姫(ふりひめ)と称されました。
3歳の時、御父が亡くなられたので、御母に従い越前に戻り、福井の北に隣接
する現坂井市丸岡町でお育ちになり、その容姿は威風堂々として大変徳の高い
お方に成長された、との言い伝えがあります。

成人の後は、勧業、治山・治水に意を尽くされ、当地越前開闢の祖とあがめられ
ましたが、58歳の時、数度の要請により第26代天皇として、河内の国樟葉宮
(くすはのみや)に移られ、ご即位されました。
当社の近くの「足羽(阿須波)神社」(あすわ)の御神体として現在も祀られており
ます。

継体天皇
継体天皇石像(足羽神社HPより)
足羽山より三国を望み、現代でも
福井の平和と発展を見守っています。

在位25年、名帝の名をほしいままにしましたが、御年82歳で山城国にて崩御、
本年は即位1500年にあたるということで、福井をはじめこの春から各種記念行事、
イベントが関わりのある各地で目白押しとなりました。

なかでもこの5日から、越前市(旧武生市、今立町)を中心に7日まで、「こしの都
1500年大祭」と銘打たれたイベントは、「国連関係の国際映画祭」、大陸からの
技術の伝来と交流をテーマにした「こしの都浪漫回廊パレード」と称する、日本海
の河野から持ちこんだ古代船に匠の技で再現した献上品を積み込み、1500人が
練り歩くパレードなど、盛りだくさんの行事が地域住民や国連からの来賓も参加し
て開催されています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この夏、7月も中旬だったと思いますが、実行委員会のM委員長さんから、突然
「パレード、式典用の衣装を作ってほしいので、今から伺います」とお電話があり、
お見えになりました。

広げられた「デザイン画」は当地の服装専門学校の生徒さんが描かれたコンク
ール入賞作品ですが同席した娘が頭を抱えてしまいました。
決められた予算のなかでやるには曲線が多く縫製もハンパではありません。
それに前後にイベントのロゴやマーキングがフルカラーで入っており、とても
可能とは思えなかったのでしょう。

「いつまでに必要ですか」とお尋ねすると「9月20日までにお願いします」とのこと、
納期までに十分な日にちもありません。

それからの2ヶ月は大奮戦、あらゆる加工方法を駆使して、なんとか期日までに
お納めしましたが、翻ってみるとずいぶん勉強もさせてもらいました。
また一つ事例が増えて、娘は成長したことでしょう。
思いがけず、Tシャツも数デザイン作らせていただくことになりました。

子供の頃、この足羽山の頂上近くにある、継体天皇像のところでよく遊びました。
巨像ですが5頭身くらいで、なんとなくちょっと怖い顔に見えましたが、今は
この古代史にも関わる記念すべき「大祭」での衣装やTシャツを作らせていただ
いて、優しい面持ちに見えるのは現金なものです。

以下は作品です。この休み中にパレードも見に行こうと思っています。

衣装 Tシャツ


横山国男

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2007年08月19日(日)更新

助田茂蔵さんの「野の花」“謄写版絵”をTシャツに

「謄写版」をご存知ですか。50歳以上の方なら、“ガリバン(版)”と
いえば「なつかしいなあ、昔はテストも町内会のお知らせも文集も全部
これだった」とインクのにおいまで甦ってくるような気がしますね。

「おい、横山、ちょっと残って手伝ってくれ」と中学の担任にいわれて、
“ガリ版刷り”を手伝った記憶もありますし、(インクは服などにつくと
絶対落ちず閉口したものですが)、若い頃「謄写版印刷教室」へ通ったことも
思い出です。

余談ですが、印刷の方式は凸版(活版、木版など)、凹版(グラビアなど)
平版(オフセット、リトグラフなど)孔版(シルクスクリーン、ステンシル、
伊勢型紙など)の4種でしたが、最近これに版不要のデジタル印刷が加わり
ました。謄写印刷は孔版印刷の代表でしたから、私の仕事であるシルクスク
リーンとは原理が同じ親類でもあります。

蝋引きした美濃紙という和紙(原紙)をヤスリ板の上に置き、「鉄筆」という
金属のペンでガリガリと文字を書くと、蝋が取れた部分からインクが降りて
印刷できるという日本人が発明した「簡易印刷機」の嚆矢ともいえるものです。

昭和40年頃には輪転式の高速簡易印刷機(確か“デュプロ”という商品名
でした)、さらにはコピー機が急速に普及してあっという間に姿を消しまし
た。所有している今や骨董品ともいうべきこのレトロな印刷機がこれです。

謄写版キット 謄写版キットの内部


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
助田茂蔵さんは現在93歳、福井市と隣接する鯖江市で元気に今でも毎日制作
しておられます。
56歳にしてはじめて絵筆をとられ、その後お仕事のご縁からだと思いますが、
「謄写版絵」を研究され、「謄写版印刷でこんなことまで可能なのか」という
独自の世界を創造された大先輩です。

助田茂蔵さんの人とそのお仕事、家族で作られる素晴らしいご本については、
季刊「銀花」誌の編集者田中栞さんの「Web謄写印刷館」に詳しいので、
ぜひお読みください。(ここでは触れていませんが、別に「シルクスクリーン
印刷工房」をお持ちのご長男は“虹の画家”靉嘔(アイオウ)作品の刷り師
としても高名な方です。)

この素敵な助田翁のボタニカルアート「野の花」シリーズを久米繊維さんの
オーガニックコットンTシャツの上に、当社のオンデマンドインクジェット
プリンターを駆使して美しいプリントTシャツに仕上げたのが、助田さんと
交友がある「ハマジイ」こと当社専務の浜本です。(専務のブログに作品を
掲載していますが、感動ものです)

このお盆期間中、鯖江のおそばやさん「だいこん舎(や)」さんで展示
(販売も)されましたので、家内とおそばも楽しみに行ってきました。

謄写版絵・プリントオーガニックT

そして驚いたのはオーガニックTとなんともいえない優しいマッチングを
魅せている「野の花Tシャツ」の美しさもさることながら、「だいこん舎」
さんの“大根おろしそば”の美味しさでした。

続きは明日に。

横山国男

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2007年07月02日(月)更新

<吉川壽一個展に久米繊維工業・当社もコラボする>

今や日本を代表する「書家」の一人、吉川壽一さんの個展「VIAGGIO IN
SICILIA―SYO杲杲(コウコウ)展」が、東京九段南の「イタリア文化会館」で
6月29日から始まりました。

前夜の28日には会場でパーティーがあり、久米秀幸常務や私も出席しました
が、供された「吉川壽一書ラベル」の直送シチリアワインはとても品の良い美味しい
ものでした。

レセプション スクリーンプリント・イタリア

今回は昨年の中東ドバイの沙漠での書制作、個展に続いて、先ごろイタリアの
文化財団から「世界の7人の芸術家」の一人としてシチリアに招かれたことが
機縁となり、有名な現地ワイナリー「PLANETA」社の「日本におけるイタリア
2007」の催事として、全面的なバックアップを得た経緯があると聞いています。



彼(小学校の同級生でもあり、当社のアドバイザーでもあるので、こう呼ば
せてもらいますが)は「SYO ARTIST」と自称しているとおり、「毎日書道」の
前衛書部門の重鎮でもあるのですが、昔から目は世界に向いていました。

ビジネスの世界にいる我々と違い、書道界で60歳代の半ばは、「いよいよこれ
から」ということかも知れませんが、それにしてもそのエネルギーには驚嘆す
べきものがあります。

大いに飲み、食べ、あちこちで夢を語り、福井と東京で書教室を開き、毎年の
ように海外でも制作し、その成果を「個展」で発表、頼まれ事は嫌な顔ひとつ
せず、あらゆることを見聞きし(宮沢賢治か?)、超多忙の中、ほとんど毎日
「開運ひと文字HAPPY!」というブログを書き続けて3年足らずで今や1000回を
超えるという、博覧強記の「スーパーカリグラフイスト」。
コミック「書きくけこ」(講談社)のモデルにもなるはずです。

その仕事の質と量にケタ違いのものを感じて、“同じ時間を生きてきたのに”、と
うなだれるほかありませんが、さらに近年はますますアクセルを踏み込んでいる
感じがするのには理由があるように私には思えます。

ひとつは、NHK大河ドラマ「武蔵」の題字と各回のタイトルロールを一年間書い
て全国にその名が知られるようになったこと、もうひとつは刎頚の友ともいうべき、
吉田福井新聞社長を失ったこと(高校時代の同級生で最大の支援者でしたが、
3年前急逝)です。吉田社長とは私もゴルフ仲間でしたが、「無念の死」が吉川
壽一の背中を常に押し続けているように見えます。

吉田耿介氏は吉川壽一を評して「彼は床の間芸術家ではない。(略)あえて
名づければ“書の冒険家”だ」と書いたことがあります。

今回の展覧会では、久米繊維さんの「日本のTシャツ“楽”」シリーズに、当社が
壽一書を「アナログ魂デジタル才(彩)」でプリントした実験的な作品も数多く
展覧されています。
7月15日まで。ぜひご高覧ください。



花鳥風月「楽」 
花鳥風月
*「楽」字に花鳥風月4文字が隠されています。
吉川壽一は「文字遊び」の名人でもあり、すぐれたグラフィックデザイナーでもあることを示していると思います。

横山国男

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2007年06月12日(火)更新

「人・モノ・私」-1。 ”石田縞”と母さんの夜なべ

♪母さんが夜なべをして手袋編んでくれた・・・・という懐かしい唄がありますね。
夜なべの語源はよく知りませんが、現代でいうと「残業」みたいなものでしょうが、
そういう味気ない言葉ではニュアンスが伝わりません。


私たちの年代で、この唄から連想するのは、季節は冬、外は木枯らしか雪、
場所は囲炉裏端、綿入れの半纏を着た頬っぺたの赤い子供たち。
母親がいるシーンとしては「里の秋」もとても好きですが、今の子供たちにはなか
なかイメージするのは難しいでしょう。

子供の頃、私の家は市街と農村の境目ぐらいにあり、中学校はまわりはすべて
田圃、親戚には農家もありましたので、農家、農作業はなじみ深いものでした。
雪深い土地なので、このあたりの農家は冬はもっぱら家の中で「むしろ」「縄」など、
春になると必要になるものを、時には「夜なべ」までして手作りしたようです。

             ・・・・・・・・・・・・・・・・

福井市に隣接する鯖江市に「石田地区」というところがあります。
ここで昔から織っていたのが「石田縞」といわれる綿の小幅の素朴な織物。
たしか「石田藩」というのも聞いたことがありますから、「小藩」の物産としての
位置付けがあったかも知れません。

石田縞1 石田縞2

詳しくは知らないのですが、おそらく産業とか企業というスケールではなく、
農家の女性の副業として、「いざり機(はた)」と呼ばれる手織り機で織られて
いたものと勝手に想像しているのですが、かなり前に姿を消してしまいました。
高度成長期には、採算のとれる仕事ではなくなったからだと思います。


写真のような柄は子供のころの布団に見覚えがありますから、おもに布団の
側(がわ)、紺無地のものは、このへんでいう「さっくり」という上半身は柔道着
のようなもの、下は股引のような農作業着としてよく見かけました。

昔は結構農家で副業として「機を織った」ようですね。私は工業高校で「紡織科」
でしたから、実習でよく機を織りましたが、小幅のこのような綿織物を織るのも
楽しいものでした。

               ・・・・・・・・・・・・・・・・・

このような「手機(てばた)」で織られたものには、「信州紬」や「白山牛首紬」
などが現在も工芸品に近い伝統織物として(その多くは機械式織機)残っては
いますが、「石田縞」のような素朴な織物は以前は各地にありました。

母親は「縞割」といって、その糸の本数や配列を、小布の見本を貼った和紙の
小ぶりの帳面に「覚え」として書きつけました。それが「縞帳」と呼ばれるもので、
娘が嫁入りする時、持たせたという話もあります。

中にはコレクター垂涎のものもあり、美しい「デザイン帳」ともいえるものもあり
ます。
おそらく世界各地にこのような例があり、バティックやマドラスチェックなどもそう
いう形で伝えていったのではないかと思います。

                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

残念ながら私は若い頃、そのような貴重なものという認識がありませんでした
ので、何も持っていないのですが、写真の織物は最近「謝礼」として2mほど
頂いたものです。

「古い呉服屋さんから、石田縞を一反譲って頂いたので、これを改装するホテル
のロビーに飾りたいが、どんな方法がいいですかね、やってもらえませんか」と
いうご相談があり、当社では経験がないので、パネルに仕立てる工房をご紹介
しました。

「もし、余り布が出たら頂戴できませんか」とお願いしておきましたところ、余りは
ほとんど出なかったので、その呉服屋さんにわざわざお願いして、残っていた別
の柄のものを探し出して届けて下さったものです。


手で撫でると節があり、ちょっとゴワゴワしていますが、「絹もの」とはまた違った
土の匂い、おふくろを思い起こさせる「優しさ」を感じさせていいモノです。


横山国男

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2007年05月23日(水)更新

リボン図書館

???「リボン図書館」?。リボンに関する書籍が集められた図書館でも、
リボンで作った本がある図書館でもありません。


この5月の半ば、パリ2区・ビクトワール広場、有力メゾンのブティックや、
ギャラリーの集まる一等地に、当社の有力な顧客であるS繊維工業さんが
ショールームを出されたのです。

「図書館」とはプリントリボン、ニットテープ、チロリアンテープ、パイピング、
コード、トリミングテープ、オリジナルスエード調人工皮革などなど私も
知らないないものもありますが、およそ3万4千点をまるで図書館の書架の
ように配列、展示した様を取材した業界紙の記者が「リボン図書館」と
名づけたようです。(繊研新聞5月12日・パリ松井通信員の記事から)


S繊維工業さんは、福井というより日本を代表する「服飾副資材メーカー」
さんです。最近は人工血管など医療分野へも進出されていますが、なんと
いってもアパレル(スポーツも含め)、ファッションになくてはならない
細幅織物、リボン、テープ、ユニフォームなどの袖や裾に使われるフライス
生地などの特殊品メーカーとして年々業容を拡大されてきました。

当社とのお取引も20年になりますが、ラッピングリボンやテープなどへの
「シルクスクリーンプリント製版」をさせていただいております。

クリスマスの金・銀の入ったリボン、オーガンジーなどの薄い生地のリボン、
婦人靴の水玉のリボンなど夢のような美しいプリントリボンは「包装の簡素
化」という逆風もあるのですが、決してなくならないものの一つでしょうし、
フアッションに使用される副資材のレベルは今や世界でも日本がリードし
ているのではないでしょうか。


S社長とはゴルフもご一緒したことがありますが、先日小松空港からの
帰り、お寿司屋さんでばったりお会いし、「ぶんか」という福井県の文化
広報誌でS社長さんが「歌舞伎が大好き」という巻頭コラムを書かれて
いたことをお話しているうち、私が「能楽好き」だということもわかって
大いに盛り上がりました。「いやー、知らなかったなあ。でも能はよう分らん。
歌舞伎がやっぱりいいわ」。

しかし「日本の芸能・伝統文化を大切に守り、その美と心を企業経営に
活かす」という点では完全一致でした。
きっとパリでの「オープニングパーティー」ではそのあたりのイベントも組み
込んだものだったに違いありません。

リボン リボン拡大

〈マイリボン〉
家内が趣味のパン・ケーキをラッピングする為に作りました。我が家の
白ネコ「コージー」もモチーフに。
“マイリボン”をお作りになりたい方はご相談ください。

横山国男

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2007年05月17日(木)更新

「山道」「間道」「綾錦」・・・伝統織物の今

先週末山登りやハイキングに行ったのではありません。京都の着物問屋さんを
見学しました。(タイトルは絹織物の織り方というか名前です)


「いつ頃からの御商売ですか」「応仁の乱のころには店があったように聞いており
ますが」と著名な問屋の専務さん。この中庭の土もそのころから変わらないのか、
と思うとちょっと裸足で歩いてみたいような気もしました。
(別室での正倉院”名物裂”などの復元品も見せていただき感激)

能衣装や有職織物の織屋さん、帯や紐、お茶事のお菓子司さんにも”超”のつく
老舗のある京都ですから、特別驚きもしませんが、案内していただいたD百貨店の
呉服担当の方も、「手前共も間もなく創業300年となります」とカルく仰られます。


すごいものがありますが、それにしても近年の「着物」の衰退は目を覆うばかり
です。
昨年も「着物販売に新機軸を取り入れた」商社が倒産、マグニチュード7級の激震
が走り、特に象徴的だったのは室町でも有名な老舗の「問屋」さんにも被害が及ん
だことです。以前なら保守的なこのような「老舗」は取引に応じなかったはず。


京都の着物は独特の分業システムで作られ、その間をつなぐ「悉皆」(しっかい)と
いう業者(制度)が制作全般をコントロールしてきたのですが、糸、織、染め、蒸し、
水洗(水元)、仕上げ、縫いや刺繍などの各工程(工場・工房)の足並みも乱れて
きています。

               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

珍しい織物(着尺地)を見せていただきました。「間道」(かんとう)ですが、織り方に
特別の技巧があり、気の遠くなるような作業の積み重ね、染めの色といい、モダン
な意匠といい「ああこれが間道ですか」と興奮しました。

間道 綾錦
間道            綾錦(縦糸の見本。尺幅で3千本以上ある。織かけ。)

「山道」というのもありますね? と工房から出張ってこられた方に私が尋ねると
「よくご存じですね、ここにはありませんが」とひとしきり伝統織物の話で盛り上が
り、いろいろなことを教えて頂きました。

建築か絵をやりたかった少年でしたが、工業高校や専門学校で選んだ「染職」の
周辺でその後も仕事をするようになって半世紀、「プリント」はまだ100年 くらいの
歴史しかありませんが、いつも憧れてきた「日本の伝統織物」、この春沖縄では
「芭蕉布」と「紅型」のお店で美しい女店主さんと話に夢中になり、集合時間に
遅れそうになりました。

本
「日本の伝統織物」 「鐘紡コレクション」

毎年「初詣」に京都の神社へお参りしますが、3年ほど前ですが愕然としました。
八坂神社へ向かう道路は歩道から人が溢れているほどでしたが、この年着物姿の
人を探すのに苦労しました。

「何かが変わった」と思わずにはいられませんでした。
「着物」だけが消えたのではなく、日本人の大切な何かが急速に消えていくような
気がしました。

世界に誇る日本の衣文化の代表「着物」、衰退を嘆くばかりでなく、シナジーネット
代表の坂口昌章さんにならって、私も「男の着物」を愛用するよう心掛けなければ、
と思います。


素晴らしい織物や着物を見せていただいたあとは、南座で「玉三郎」の舞踊劇を
鑑賞。愛らしくも妖艶、美を超越して幽玄・・・・・・。

「美しいもの」が見られた幸せな1日でした。これをして「眼福」というのでしょうか。

感謝!


横山国男
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【染型工房 横山工藝】
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会社概要

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個人プロフィール

「知るは喜び、調べるは楽しみ、分かるは感動、学ぶは一生」とか。高齢者の仲間入りの年齢ですが、仕事でも趣味でもICT時代の恩恵に感謝しています。趣味・・本好き、水彩画、ゴルフ('05までJGA委員、現在中部ゴルフ連盟ジュニア育成委員ほか。エポック・・還暦のアルバトロス、'06...

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