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2008年10月19日(日)更新

「君を幸せにする会社」を読んで。

何をもって「幸せ」というかは、人それぞれ違うのでしょうが、「幸せになりたい」と
世界中全ての人が願っている、もっと言えば、人だけでなく生きとし生けるもの全
てがそう願っているに違いありません。

「君を幸せにする会社」(天野敦之著・日本実業出版@1300)を読みました。
本書を書かれた公認会計士の天野さんは、「真善美」メルマガでもおなじみです。
久米信行さんもご推奨の一冊です。

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クマ太郎、プー太、コン吉など寓話の形をとった物語に引き込まれました。
例によって「あとがき」を読み返していますが、多くの心に残る文章がありました
ので、その一部を。

『物語のなかでクマ太郎が悩んでいたように、みんなががんばって利益を追い
求めているのに、みんながますます不幸せになっています。何かが根本的に
おかしいのではないかと多くの人たちが感じています。
こうした問題の根底にあるのは、「利益は創造した本源的価値の対価である」と
いう真理を、多くの人たちが忘れてしまっていることにあると思います。
本源的価値とは、お客様を幸せにし世の中をよりよくすることです。つまり企業
の利益はお客様の幸せの対価だということです。』

『しかし、現実には、多くの企業が、自ら本源的価値を生み出すことなく、お客様
をだますなどして他者から利益を得ようとします。
そのようにして一時的に利益を得ても、結局は損失となって還ってくるだけです。
企業が、継続的に利益を得るためには、自分たちのよさを活かした、自分たち
ならではの本源的価値を創造するしかないのです』

『しかし本源的価値を創造するのは、口でいうほど簡単なことではありません。
自分の利益のために無理にお客様を幸せにしようとしても、それはすぐにお客
様に伝わってしまいます』

・・・引用はここまでにしますが、その解決のカギは「まず自らが幸せになること」
とあり、全てが感謝の対象になる、私たちはついないものに目をむけてしまうが、
あるもののほうが圧倒的に多く、幸せになるために必要なものはすべて与えら
れているのですよ、と著者はおっしゃいます。

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折しも「世界金融危機」「地方経済衰退」のさ中、良書に出会いました。
ご一読をお薦めするしだいです。


横山国男

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2008年10月03日(金)更新

もし今の仕事がつまらなかったら

「もし今の仕事がつまらなかったら、それは仕事がつまらないのではない。
あなたがつまらないのだ」。

谷口正和著「オンリーワンのつくり方」(講談社@1500円)の”あとがき”に
「マーケティングアーティストのあなたに」と題して書かれている一節です。

私は本屋さんで本を買うとき、あとがきをまず読むくせがあります。
あとがきは著者が長い時間をかけて産んだ、あるいは汗をしぼって運動した
あとのクールダウンにも似た感慨が述べられていて、著書への、著者への共感
を得るのに参考になりやすい気がするからです。

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仕事がつまらないと思ったことはありませんでしたし、自分をつまらない人間だと
思ったこともあまりないように思いますので、今日まではまずまず幸せな方でしょう。

それでもこのような文章に出会うとギクリとするのは、惰性で仕事をしていたり、
面倒なことから逃げることを続けていると、いつか“つまらない人間”になりますよ、
と言われているようにもとれるからです。

心したいと思いました。

横山国男

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2008年09月19日(金)更新

「まだやってんの」

「まだやってんの」とは、1999年4月に初版が出た邱永漢(Qさん)の実用エッセイ
単行本のタイトルです。(久しぶりに読み返しました)

邱永漢著「まだやってんの」
<中経出版 @1400円>

 この本が出たころ、地元銀行の主催でQさんの同名の「経済講演会」があり、
滅多に講演会というものに行かない私ですが、フアンなので拝聴しに参りました。

邱永漢さんを評価するのは、書斎で、あれこれともっともらしい理屈を述べられる
経済・経営評論家と違い、間違えば全財産を失う(実際のところ何度もピンチに
見舞われたそうですが)実業家でもあるからです。85歳を迎えた現在でも、中国、
台湾他、アジア各地などでビジネスを展開、「金、カネ、マネー」の亡者ではなく、
経済を文化として捉え、「直木賞作家」としての読ませる力、特に「人生とお金」に
ついての卓見は、私の金銭哲学にもなっています。

ご著書数百冊の中でも、「まだやってんの」は、ご本人の生の声、風貌を目の当た
りにしたこともあって、“足元が明るいうちに店仕舞いしなさい”の名文句とともに
忘れられないものです。

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グローバル化とかフラット化とか言ってるうちに、構造不況業種の繊維産業界で
仕事をしてきた当社のまわりでも、ジワジワと需要が減り、かって数十社あった
同業者も数えるほどに、それも企業と言えるスケールではなくなってきています。

また、ここへ来ての原油高で当社のお得意先企業の苦悩は一層厳しさを増し、
さらに我々とは関係ないと思っていた「マネーゲームのプレーヤーたち」の破綻、
ほころびが表面化して、悪くすれば「世界同時不況」どころか「恐慌」にまで発展
するのではないかという話を聞くと、「これからどうなるのだろう」と不安を感じて
おられる経営者は私だけではないと思います。

進めてきた企画・デザイン力のアップ、協業・コラボで「マーケットの転換」「限りなく
 顧客(個客)に近づくビジネスへ」を、一層開拓しなければならないと考えています。

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Q先生、足元の明るいうちに店仕舞いできませんでしたが、なんとか後継者ともども
 知恵をしぼって、長年のお客様も大事にしてやっていくつもりです。
これから先でギブアップして、早く土俵から去っていったかっての同業者や友人・
知人から「まだやってたの」と、言われるのは悔しいですから。

横山国男

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2008年09月10日(水)更新

『癌だから死ぬのではない。

生まれたから死ぬのである。すべての人間の死因は、生まれたことである。どこか
違いますかね』(「人間自身 考えることに終わりなく」 池田晶子)。

特に若い人に「本質」を考えることの面白さ、生きることの大切さを分かりやすく、
そして「哲学」というものに無縁だと思っていた私のような老生に「エッ?」と思わせ
てくれた池田晶子さんも、47歳でその癌に倒れてから一年半あまり。

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今日は、37年前、私たち夫婦の「仲人」をしてくださったIさんの告別式に行くのと、
涼しい初秋の朝ということもあって、池田晶子さんのことがフッと頭に浮かびました。

『便利なことは無条件でいいことだと、現代人は思い込んでいます。手間が省ける、
時間が省ける、目的地に早く着く。つまり時間が短縮できるということが、現代人に
とっての価値なのです。時間というのは自分の人生の時間です。現在の時間を
節約することで、将来にそれが貯蓄できるといった感覚なのでしょう。
しかし「将来」なんてものは、どこにも存在していない。現在幸福である以外に、
幸福であることはあり得ない
。(「暮らしの哲学」)

「思い込み」や「固定観念」が人間を不自由にするのです、と池田さんは教えてくれ
たような気がします。

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 高く美しい空、美味しいもの、そして読書の秋も近いですね。
    「生かされている」ことに感謝したいと思います。


横山国男

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2008年08月19日(火)更新

お盆休みに読んだ本の中から。

お盆休みは体調ももうひとつで、猛暑の中をゴルフに出かける気力もないまま、
ダラダラと過ごしてしまって少し反省しました。

実になる読書もしませんでしたが、その中で一気に読了したのは堤未果さんの
「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命ーなぜあの国にまだ希望があるのか」
(海鳴社@1600-)。

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インターネットと関係があるのでしょうか、最近ジャーナリズム、ジャーナリスト不在
と言われているようですが、確かに地方紙などはオリンピックのせいもあって、
紙面の大半がスポーツ記事です。晩年仲良くしていただいた当地新聞社社長Yさ
んに「新聞はこれからどうなるんですか?」と質問したことがありますが「国際的な
 報道は全国紙、地方紙は限りなく“回覧板”に近づくと思う」と聞いて、そういう
ものかと思った記憶があります。そういえば最近は町内会のソフトボールの試合
結果まで載っていて、大きな考えさせられる報道や論考には接しないようにも思え
ます。

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堤未果さんは、偶然9・11の「ワールド・トレードセンター」の崩壊を、勤務先の
「野村アメリカ」が入っている隣のビルで目撃、その衝撃でPTSD(心的外傷後スト
 レス)に悩むのですが、その報復ともいえるその後の「イラク戦争」をとっかかりと
して、現代アメリカの病巣抜きにこの問題を語れないことに気づきます。

確かに小田実や開高健が戦火の中から報道してきた不自由な時代に比べ、今は
インターネットという優れたツールがあるにもかかわらず、我々は今も世界各地で
頻発している紛争、その犠牲者、一部の富める者と大部分の貧しい人の生活の
実態などを知る機会からいよいよ遠ざけられているようにも見えます。

著者は、久しぶりに出現した硬派の日本人女性ジャーナリストで、大きな外国人に
ひるむことなく取材を敢行し、その抑制の利いた、しかしヒューマニズムとユーモア
に裏打ちされた明るい文章はとても魅力的でした。

この著作を読んでもっとも感銘を受けたのは、世界中「母は強い」ということ。理屈
抜きに「戦争をしてはならない」、もし世界を女性が中心で動かしているならこんな
悲劇は起こらないのではないか、愛する子を誰が戦場に送るものか、と。
アメリカの母もイラクのお母さんも同じだとあらためて強く思います。

サダム・フセインも処刑され、大義名分だった大量殺戮兵器も見つかりません
でした。 2003年3月に開始され、その年の5月には終了宣言が出されたのに、
今も「イラク戦争」は続いています。

あらゆる福祉予算のカット、学費の値上げなどアメリカブッシュ政権は戦費の調達
に邁進しているかに見えます。世界の富の四分の一を所有するといわれるアメリカ
で3100万人もの国民が飢えているという現実を知らせる・・
これこそジャーナリストの仕事ではないでしょうか。

『これから数えきれないほどの壊れた若者が帰ってきても、ここには受け皿がない。
問題は、どうしてそうなったのか? じゃないんだ。なぜ俺たちはベトナムから何に
も学ばなかったのか? なんだよ。』
 リック・シンガー(帰還兵ホームレスセンターのディレクター)』(著作から引用)

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堤 未果さんは「あとがき」で、取材に協力してくれたNYの弱くて強い人々や、出版
にあたっての協力者に礼を述べたのち、最後にそれでも「大丈夫、私たちには
未来を選ぶ自由があるのです」と結んでいます。


横山国男

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2008年05月13日(火)更新

雑誌も読者とともに歳をとる。

何も手近に読むものがないと、カナイが購読している何種かの「婦人雑誌」でも手に
とります。特にラグジュアリー系といわれる「F画報」や「K画報」などは、上質紙に
美しいカラーの誌面、内容もなかなか楽しい記事があり、オジサンのセンスが少し
は磨かれるような気がしないでもありません。

そんな中、今月6月号をもって「主婦の友」が、創刊から91年の歴史に幕を下ろし、
休刊となったようです。(通巻1176号)
昔、読んだことがあるような記憶もありますが、ライフスタイルの変化が、息の根を
止めたようです。

毎月のように色々な分野、特に生活文化関連の新しい雑誌が創刊されるよう
ですが、なかなか100号、200号と続く雑誌は少ないようで、中には5号あたりで
早くも休刊宣言、ギブアップするケースもあるようです。(廃刊でなく休刊とするのは
苦心してつけた“誌名”をキープしたい、あるいは他社に使わせないという意図だと
聞いたこともあります)

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10年ほど前、「K画報」(今年創刊50年)の通販ページに、「トートバッグにペットの
写真をプリントします」という企画が採用され、綿のバッグが有名な京都の
「I 帆布店」さん製だったこともあって結構売れました。
現在のようにデジカメもまだ普及していませんし、オンデマンドのプリンターも手軽な
ものはない時代、編集部から送られたきた読者のペットの写真をスキャンして、
トリミングや画像補整、名前を入れてカラーコピー転写をしました。

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この企画で通販の責任者である、ベテランの編集者Iさんと何度か打ち合わせに
市ヶ谷の本社でお会いしたことがありますが、あるとき主力の「K画報」を手にとり、
「横山さん、雑誌も読者とともに歳をとるんですよ」と言われたのが、とても印象に
残っています。

中心の購読者層の年齢が上がっていけば、雑誌の方も当然それに対応するような
企画・編集になる、すると若い層の支持を得られないので「別冊」とか「ミスK画報」
などを出すことになるんですよ、というようなお話でした。

日本のファッションのブランドなどにもそのような傾向があるかも知れません。
好きなブランドでも対象年齢層を動かさなければ、いずれ古いお客さまは来店しな
くなるでしょう。このあたりは当然マーケティングが進んでおり、さらに年齢が上がっ
た顧客を引き続いて自社の購買層として確保するため新ブランド開発や戦略を練る
わけですね。

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昔に比べ、本を読まない人が増えている、情報は勿論のことネット上でも本が読める
という時代。
かって「週刊女性」編集長から「K画報」の編集長に就任し、リニューアルを成功
させて60万部雑誌にしたといわれる名編集者「諸井薫」(故人)のような人が出現
したとしても、出版を元気な時代に戻すことはもう無理なのでしょうか。

およそ1世紀、最後まで残った老舗の婦人生活雑誌の休刊(廃刊?)は、時代の
変化、世代の交代を実感させる出来事に思えます。

横山国男

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2008年04月21日(月)更新

【明大生との毎週一問百答】好きなマンガ作品・影響を受けたマンガ

<質問>好きなマンガ作品、影響を受けたマンガがあったら教えてください。
                               (岡田光太郎さん)


自分をそれほど「マンガ好き」と思ったことはないのですが、それでも
「ビッグコミック オリジナル」などは読み始めて25年以上にもなるのでマンガ
フアンの一人かなとも思います。

それ以前は青年漫画誌の嚆矢といわれる「漫画アクション」のフアンで、中でも
小島剛夕の「子連れ狼」、長谷川法世の「博多っ子純情」などが大好きでした。
もっと昔でいえば文藝春秋から「漫画讀本」というオシャレな大人の漫画誌が
出ていたのですが、今は知る人も少ないでしょう。

「ビッグ」では、「浮浪雲」(ジョージ秋山)「黄昏流星群」(弘兼憲史)
「釣りバカ日誌」(やまさき十三・北見けんいち)などを飽きもせず読んでいますが、
こういう愛読作品からあらためて自分の性格を考えると「面白くて悲しい人間と
いうものへの興味」が尽きないということかも知れません。

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それにしても漫画家、コミック作家は「偉大」とすら思えるときがあります。先日も
ある総合雑誌でさいとうたかを氏と麻生太郎さんが対談していましたが、ゴルゴ13
氏の博識・見識に麻生さんがたびたび絶句、感心することしきりで、「あなた、総理
大臣やってよ」と言わんばかりでした。

「マンガばっかり読んどらんと勉強せえ」と親から言われた世代ですが、 文字だけ
の小説より「画」と「吹き出し」で生半可な文学作品を凌駕するコミックはいくらでも
あります。

先日TVで低迷する「少年漫画誌」を復活させる現場の映像を視て、編集者と作家
の死闘ともいえるせめぎあい(キャラクターの設定などについてですが)を経て、
それでも最後に編集長が「掴んだと思ったらスルッと逃げられるかも」と、新しい
百科事典ほどもある分厚い(なんと重量1.5キロの)新刊を前にして、ターゲットで
ある現代中学生読者の「掴み所の無さ」を述べていました。残酷でしかしもっとも
正直な読者層を相手にする辛さが出ていたように思いました。

しかしこのような深いマーケティングが、日下公人さんや麻生太郎さんが推奨して
やまない「日本のアニメ・マンガが世界に通用する文化・文芸ソフト」であることを
たらしめていることは間違いない、と実感したのでした。

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さて本題。
「土着感」が溢れているので海外向けではないと思いますが、私が唯一全巻
(53冊)そろえているマンガは「まんだら屋の良太」(畑中純)です。
1979年より10年間、300回にわたって「漫画サンデー」に連載されたそうです
が、「漫サン」を読んでいなかったので知りませんでした。
(’81年第10回漫画家協会賞受賞、その後NHK「銀河テレビ小説」にも)

’93年ごろ近所の古本屋で立ち読みし、あまりの面白さに全巻その場で買って
帰りましたが、カナイが「何買ってきたの?」と驚きながらパラパラとめくって見て
「うわー・・・」と放り投げました。エログロ漫画だと思ったようです。


単行本写真
<「まんだら屋の良太」単行本>

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作家村松友視さんはこう激賞しています。
『「まんだら屋の良太」の主人公である良太の、吹き出しの中のセリフを読んで
いると、畑中さんが並の文学好きでないことがわかります。というより畑中さん
自身が文学者であることが分かるといった方が当たっているだろうな。いま、こう
いう味わいの文学はすっかり影をひそめてますから、すべて愛読しています。
良太と月子の関係は、スケベを突き抜けた抽象的な男と女のロマンみたいで、
本当に不思議な世界だと思ってます。(中略)
九鬼谷温泉世界は、すさまじい文学空間といったイメージ。どうしてこんなに
多彩な人物を登場させることができるのか・・やっぱり畑中さんがすばらしい
文学者という証拠でしょう。(後略)』
【引用=楽天ブログー畑中純「まんだら屋の良太」ー「梁塵秘抄」または
“わしふぃーるど”から】

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中学・高校生の時代にはクラスや学年に必ず月子のような「頭が良くて美人で
スタイルのよい女子生徒」がいましたよね。
男子生徒はひそかに憧れ、実現性に乏しい夢想というか妄想を勝手に描いた
覚えのある人も多いはず。
今の若い人と少し違って女性を「神聖視」していた向きもあって、女性の方にも
そのような感情があって当然とはこの年になって分かったことなのですが。

悪ガキだけど時には大人顔負けの分別で事件を解決したりしながら、月子には
子供っぽいいたずらを繰り返す良太、プリプリ、ツンツンしながらそれでも良太が
他の女(の子)に興味を持つのは気になる幼馴染の月子姫とのスラプスティックで
ナンセンスなエロい人情噺・・・・「畑中ワールド」にドップリと共感してしまったのです。

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アシスタントを使わず、一人で大河ドラマなみの「まんだら屋の良太」を描き続けた
作者畑中純さんは自身が述べている計画どおりその後はこれもまた非凡な才能を
見せる「版画」の世界に傾倒しているようです。

「まんだら屋」でも時々秀逸な版画が出てきて、特に三好達治の「風の又三郎」の
版画などはこの人の才能に驚かされて更にフアンになったものですが、現在は
愛してやまない「宮沢賢治」作品がテーマのようで、共に作品のキーワードが
「土着」であることを考えれば納得のいくものです。

長岡輝子さんの朗読で「賢治作品」を愛聴している私には作者の版画シリーズも
またとても楽しみです。

版画
<版画ー畑中純。 宮沢賢治より 同上ブログから>


横山国男

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2007年12月21日(金)更新

「百姓」と名乗る古野隆雄さんに感動しました。

「自分の仕事は自分でおもしろくする」 百姓 古野隆雄

現在、事務局から「今年一番感動したブログ」の投稿募集があるようです。ブログ
ではないのですが、人間学を学ぶ月刊誌を標榜する「致知」(致知出版社)10月号
に「人生の大則」と題されたインタビュー記事があり、、ここにもこんなに素晴らし
い日本人がおられることを知り、感動しました。

古野隆雄さんをご存知の方は多いのでしょうか。私は恥ずかしながら知りません
でした。「アイガモ農法」の権威です。平成12年スイスのシュワブ財団より「世界で
最も傑出した社会起業家」の一人に選出され、「ともに考え、ともに学ぶ」という
信条で中国やベトナムをはじめ、その国の伝統農法を大事にしながら、農薬や
化学肥料を使わずに、アヒルやアイガモに働いてもらって完全循環型の農法を
広めている「日本の百姓」です。(昭和50年九州大学農学部卒)

古野さんのプロフイルの肩書きには堂々と「百姓」と書いてあります。
「百姓」。・・・今の日本ではあまり名乗りませんね。いわく「農業」とか「農家経営」
とか書いてあるケースが多いように思いますが、古野さんは以下のように述べら
れて、誇り高く「百姓」を使われます。

『私は百姓なんですよ。アイガモ農法が有名になったから米ばかりつくっている
ように思われますが、あらゆる野菜もつくるし、カモや鶏を飼って畜産もします。
百姓は百の作物をつくるという意味と同時に、山の手入れもするし、土木の仕事
もするというように、百の仕事ができる、要するに何でもできるという意味でもあり
ます。本来人間はみんな百姓で、すべての仕事を自分でやっていたんです。
それがすべてお金を出して人にしてもらうようになり、農家ですら単一のものだけ
を大量生産する世の中になった。百姓百作が農業のおもしろさだと思います』。

インタビュアーが ― 自分で自分の仕事をおもしろくする努力が人生で大切な
ことだといえそうですね。 に答えて、
古野『それをやり続けられる人をプロと呼ぶのでしょう。そのためには一度始めた
ことは簡単に諦めないこと。そして一日一日をよく生きることが肝要だと思います』
『一つ問題を解決すると、また一つ問題が出てきます。でもそうやって技術の
“井戸”を掘り続けることが、自分の仕事をおもしろくするのではないでしょうか。
私がアイガモ農法を追求してきたのも、世のため人のためというよりは、自分の
仕事をおもしろくしたかったからだと思います』

アイガモ農法を知るまでは、朝4時に起きて、炎熱の中、地を這うようにして一日
中草を取るが、一週間後にはもう別の草が生えている、という過酷な農作業の
繰り返しの中、「いつか必ず無農薬でやれる方法は見つかる」という根拠はなか
ったけれど自信があったと述べておられます。

記事には古野さんのカモを持っている写真がありますが、こんなにいい顔をした
日本人を最近見かけません。読む人に「仕事」とは何かを「謙虚」に、そして力強く
教えていただいたような気がしました。

横山国男

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2007年12月06日(木)更新

『目のあたり先師みる、これ人に会うなり』  道元

『わたしたちは、いわば二回この世に生まれる。一回目は存在するために、二回
目は生きるために』  ルソー

『読書をする人は二度人生を送れる』 神谷美恵子

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先日初めて台湾へ旅行を共にした友人M氏が、帰国後「私の接した珠玉の言葉」、
「記憶に残る短歌」集のプリントを約束どおり早速届けてくれました。
上記はその中に掲載してあるものです。

M氏とは誕生日も一ヶ月ほどしか違わぬ同い年ですが、地域も学校も違い、ここ
10年ほど、それもゴルフを中心のお付き合いなので、ゆっくりと話をしたことはあ
りませんでした。

「ビールでも飲みましょう」と台北のホテルのバーに腰をおろしたのは、「士林の
夜市」から帰った10時ごろ、それからバーが終了する深夜の1時まで、お互い
堰を切ったように話しました、と言いたいところですが、彼の読書歴、その量と質、
思索の深さに圧倒され、あらためて私などは乱読というより「雑読だな」と思い知ら
されました。

さらに追い討ちをかけられたのは「横山さん、Sさん知ってる?」「知ってますよ」と
やはり同年の最近までマスコミ関係の要職にあったSさんが出てきました。
「彼は蔵書2万冊らしいよ」・・・窓際OLコラムニスト斉藤由香じゃありませんが、
「ヒョエーッ!」と絶句。

  無為に過ごした65年が悔やまれます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

M氏は、文化、芸術、宗教、学問、思想、道徳など洋の東西を問わず、幅広く読ん
でこられたようですが、特に「良寛」に魅かれるとのこと。
岡潔の言葉『道元、西行、芭蕉とともに、良寛のような二千年に一人という人たち
と活字を通して友達になれるとは、私はなんと幸福な境涯なんでしょう』も紹介して、
「大愚良寛」と題したご自身のエッセイのプリントも添付してくれました。

当地でも名の通った中堅企業の社長M氏、「オシャレ」などには一切関心がない、
といって笑いますが、その強い眼の光、ゆるぎない言葉、強靭な心・体から発散
するモノはこれだったのか、「経営は全てオープンにしている」という自信ある発言
にも得心しました。


『友なきはさみしかりけり しかりして こころうちあわぬ友も欲しなし』 橘 曙覧
 (幕末の福井の歌人)


横山国男

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2007年11月14日(水)更新

老後の読む楽しみは「夏目漱石」がよいかと。

12日(月)は、錦糸町の久米繊維工業さんをお訪ねして、今年させていただい
た仕事のお話とか、来年ぜひ共同で実現したい企画の提案なども久米社長、
スタッフの皆さんとお話することができました。
絶滅寸前の「和綿」復活プロジェクトのDVDも見せていただき、「これはロマン
ですねー」と感激。

また「エコロジー・チャリティー2007 Tシャツ・アート展」のプロデューサーで、
イラストレーターの竹本明子さん(デザインスタジオバンブー)にも、久米社長の
お計らいで、お会いすることができました。
今夏アート展の参加作品のほとんどを、当社のインクジェットシステムで制作さ
れました。出来上がりを喜んでいただきましたが、こちらこそ感謝しております、
と御礼を申し上げました。

==============

ところで、今回久米繊維さんをお訪ねした折に、もう一つ手前の「両国」の江戸
東京博物館で開催されている「文豪・夏目漱石―そのこころとまなざし」展を家内
と観ることも楽しみにしていました。

「夏目漱石」に詳しくありませんが、(“猫”と“坊ちゃん”くらいしか読んでいないの
で)いずれ全集を読み通したいもの、とかねがね思っていたところ、京都の漱石
研究家で茶道家の「椿わびすけの家」という、とても心癒されるサイトを見つけま
した。(主筆―丹治伊津子さん)

ご案内で漱石のお孫さんである松岡陽子マックレインさん(米オレゴン大学名誉
教授=日本語・近代文学、83歳)の「漱石夫妻 愛のかたち」(朝日新書)を読ん
で、よく話題になる「鏡子夫人悪妻説」に関してもサラリとしたユーモアあふれる
文章を書かれていて、ぐっと漱石を身近なものに感じました。
同時に発刊されたこの展覧会の「公式ガイドブック」から、懸命に勉強した跡が
残るノートや、ロンドンの留学先から妻子に宛てた漱石の誠実で情愛溢れる
手紙類、俳句や絵なども豊富に展観されていることがわかりました。
(18日まで)
・・・・・・・・・・・・・・・・

公式ガイドブックに「おわりに」と題して、当博物館の橋本由紀子、金子未佳
両学芸員の記述があり、漱石の魅力の源泉に触れた気がしました。
(以下一部を引用させていただきます)

・・・むかしの人の一生は、平均寿命が80歳を超えた現代人に比べてずっと短く、
それゆえに早熟で、一事を成し遂げるのも早かったかもしれない。しかし明治の
文豪・夏目漱石が、小説家として世に出たのは遅く、人生も後半にさしかかって
からだった。(中略)
悩み彷徨する時間も長かったが、いくつになっても新しい世界に挑戦した漱石。
漱石の生き方は、進路を模索している若い世代や、第二の人生を歩みだそうと
する団塊の世代など、現代を生きる私たちに、勇気や示唆を与えてくれるものだ。
明治という時代とともに歩んだ漱石が、見ていたものは何だったのか、考えていた
ことは何だったのか、それを解き明かしたい・・・(略)。

出口近くの漱石のデスマスクを眺めながら、私の両親も明治生まれで、子供の
頃、正月には絣の着物に黒い足袋をはかせてもらい、祖母の家に行ったこと
などをふっと思い出したりしました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

偉大なエンターティンメント小説「吾輩ハ猫デアル」「坊っちゃん」から、「草枕」
「虞美人草」「三四郎」を経て、「それから」「門」へ。 そして晩年の「行人」「心」、
絶筆となった「明暗」まで、その他の作品も含め老後の「晴ゴ(ルフ)雨読」は、
じっくりと「夏目漱石」を楽しみたいな、と思った展覧会でした。

横山国男

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「知るは喜び、調べるは楽しみ、分かるは感動、学ぶは一生」とか。高齢者の仲間入りの年齢ですが、仕事でも趣味でもICT時代の恩恵に感謝しています。趣味・・本好き、水彩画、ゴルフ('05までJGA委員、現在中部ゴルフ連盟ジュニア育成委員ほか。エポック・・還暦のアルバトロス、'06...

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