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2008年10月31日(金)更新

形見になってしまった赤いセーター

10月最後の日記は悲しいものになってしまいました。
東京の友人Mさんが、つい先日、やはりというか病魔を乗り越えられず亡くなって
しまい、一昨日がお葬式でした。暗澹とはこういうのを言うのでしょうか。

同じ60歳代の友を、しかも私より少し若くて、スキーのインストラクターで、座持ち
の名人、ギターも歌もプロ顔負けだったMさん。
私たちの「佳き仲間の会」は名伯楽を失ってしまいました。

たまたま足のケガでお別れに行けませんでしたが、集まった仲間に見送られて
旅立ったことでしょう。

 私的なことですが、思い出をブログに記しておきたいと思いました。

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Mさんとはアパレル業界の友人を介して知り合いました。そのご縁はその後ドン
ドン広がって「仲間の会」ができ、年に数回、東京周辺や北陸でゴルフや飲み会
をやってきました。

会長を務める私の地元の友人とMさんの人脈や人柄で、中にはアパレル上場企
業の社長さんも数名おられますが、会えば少年に還ったように皆にぎやかに他愛
なく遊びに興じました。

死亡の報を聞いた時、それらの光景は一瞬セピア色となり、Mさんのにぎやかで
ヤンチャな声が耳元でしたように思いました。

今年の春、メンバーの医師S君(同級生。横浜で総合病院を開いています)が
帰郷した際、「Mさん、また入院したらしいね。本人が転移したらしいと言ってる
そうだけど」と聞くと、「よくないな、今年一杯は無理かも」と打ち明けられました。

2回目の手術が成功したので、体力の回復を待って、本人も希望しているから
ということで、この夏、御殿場へみんな集まってゴルフをする計画でしたが、結局
これも実現しませんでした。

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先日、恵比寿のWホテルに泊まったとき、「ああ、そういえばここはMさんの息子
さんの結婚式に来たなあ」、あれは何年前だったかな、などとフッと思いました。

暖かい披露宴で、Mさんの長年の友人である女優の萬田久子さんご夫妻も出席
されておられ、そのあと「佳き仲間の会」の二次会へも顔を出してくれました。
われわれ同様、今は深い悲しみの中におられると思います。

その年の11月、恒例の「北陸シリーズ・かにかも会」のとき、片山津でのゴルフ
はMさんと同組でした。

少しオレンジ味がかった真っ赤なVネックのセーターを着ていたので「その赤いい
なあ、還暦だからくれない?」と言うと「これ、萬田さんのダンナのナントカの記念
品なんですよ。でも還暦祝いならいいか」ということで、終わったあとのお風呂場で
渡してくれたのです。

その後冬のゴルフには愛用のアイテムになりました。
Mさんは巨体だったので少し伸びていますが、この冬、袖を通したらあの時の暖
かいMさんのにおいがするような気がします。

赤いセーター  刺繍のワンポイントはひげのリッキーさん

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Mさんも大好物だった「越前ガニ」は、解禁まであと一週間ほどだったのに。
今年はまだ誰からも連絡はありません。


横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2008年10月29日(水)更新

パレットを洗う。

今年の春から、念願かなって水彩画の教室に月2回通っています。生徒さんは
熟年ばかり12,3名ほどで、女性が少し多いかなという感じです。

先生は金沢美大卒のOさん。 50歳を超えられたくらいでしょうか。
水彩の命である「水」を生き物のように自在に操って、時々私の絵に2~3
筆手を入れてくださるだけで、「ウーム、ナルホド」と感心してしまいます。

何事もプロというのはすごいもんだな、とあらためて思う瞬間です。尊敬とともに
「少しでも近づきたい」、とその手元を食い入るように見つめることになります。

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ここのところ足のケガで休日も家にいるので、今まで描いた10枚ほどの絵を
見直し、自分なりに手直しをしてみました。
よくなったものもあり、描き込みすぎて汚くなったり、悪くなったものもあります。
「過ぎたるは・・・・」ですね。

パレットも一度洗って、絵の具の配列を考えてみました。
同系の濃淡順に、混じり合うと汚くなるものは上段と下段に分けて、色見本も
作ってみました。

この色はあれとこれをこんな感じに混ぜて・・イメージがわきやすくなったように
思います。

パレットとカラーカード

秋も深くなって、数少ない好天でもゴルフにも行けず、こんなことをしているより
他ありませんが、それでも思いがけない発見もあって、カナイが買ってきたバラ
を見て、ちょっと描きたくなりました。


横山国男

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2008年10月27日(月)更新

「ことばを旅する」・・・細川護煕から深まる秋の京都へ

’04年6月~’08年5月まで、週刊文春に毎月一回4年にわたり、中央見開きに
連載された細川護煕(もりひろ)氏の表題のエッセイを、旅の写真とともに楽し
みにしていました。

西行、良寛、漱石、与謝野晶子など、著者が「心に残る名言の生まれたゆかりの
地」を旅する紀行エッセイ集。
気に入ったものは時々スクラップもしていましたが、「テーマのある旅」というのも
なかなかいいですね。

先月単行本化されましたので、あらためて読ませてもらいました。
=「ことばを旅する」(細川護煕著 文藝春秋刊 @1600-)

「ことばを旅する」(文藝春秋@1600-)細川護煕著

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著者は熊本県知事から、第79代内閣総理大臣として、初めて自民党以外の
政権を樹立した立役者。 しかし’93年8月から10か月で退陣せざるを得なく
なったのは、氏の人生観が、権力とカネがものいう政治の世界と根本的に相い
れなかったのではないか、と私は想像しています。
細川首相が続くような国なら、日本はもう少し変わっていたかも知れません。

エッセイ第42回、兼好法師の「緒縁を放下すべき時なり」(徒然草)を地でいく、
還暦を迎えた’98年5月、あっさりと議員を辞職し、陶芸家の道へ。
湯河原に隠棲されているわけですが、第二の人生は創作に、というのは私の
憧れる生き方でもあります。

国会中継などで、かっての最高権力者が口を開けて居眠りしている図は、美しい
ものではありません。「老残」という言葉すら思い浮かびます。(失礼)
ロマンチスト、アーチスト・・・細川さんの「美学」では許せないものでしょう。

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細川さんは1938年1月生まれ、とありますから、今年70歳。
その風貌は、さすが肥後熊本藩主だった細川家の第18代です。
私が魅力的だと思う一つ目は70歳とは思えぬダンディぶり。まだ青年と表現する
のは無理でも、50代にも見えるのです。
「美」を追求している人だけが持つ、独特の若さがあるように見受けられます。

週刊文春 切り抜き。本カバーの裏表紙にも

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二つ目は、繊細で絵画のような素晴らしい文章を書かれること。
以下の文章は、先ほどの兼好法師「徒然草」を、生涯の友というべき書として挙げ、
修学院道(京都)を訪れた紀行文の文末に書かれたものです。
情景が浮かび、しっとりと心に沁みました。

 ・・・ 『横川を経て、兼好籠居を偲び訪れた秋の修学院道の紅葉はちょうど
    見ごろだったが、楓葉を散らす無常の風をまだ苦悩の中にいた兼好も
    感じただろうかと、そんなよしなし事を思いつつ、踏むには惜しい落ち葉
    の上をそっと歩いた。』

みなさまのテーマは「仏像」でしょうか、「季節の京料理」でしょうか。
秋真っ盛りの京都を旅したくなりますね。


横山国男

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2008年10月24日(金)更新

書とは“打つ”こと。

「バァ~ンと打つ!」・・大河ドラマ「武蔵」の題字、タイトルロールでおなじみの
SYO ARTISTを名乗る書家吉川壽一さん(当社顧問)が好んで使うフレーズ
です。

先日、この秋の吉川壽一書展が、東京文京区の「講談社K-スクエア」と新宿
高野ビル「コニカミノルタプラザギャラリー」で開催されたので観に行きました。
この書展は久米さんのメルマガでもご紹介いただきました。ありがとうございます。

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物心ともに絶大な後援者だった、亡き吉田福井新聞社社長は、級友の吉川さん
を「書を床の間芸術から引きずり出した男」と評しました。

フランス、イタリア、中国、中東など、世界各地で「書パフォーマンス」を演じ、
また前衛書の大家として毎日書道の重鎮でもあるのですが、もちろん見事な楷・草・
行書、時には道元の和歌などを書した「かな」の美しさなどには心を奪われます。

あの大きな体をゆすって、時々当社にも現れますが、展覧会間近になると彼の
頭の中はアイデアで一杯、息せきって入ってこようとするので、私が「あっ、靴、
靴脱いで」と言いたくなるほど。岡本太郎を思い浮かべてしまいます。

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今回「講談社」の方は、「漫画タイトルロゴ&ふきだし書の美展」と題して、数多く
のマンガのタイトルを書いてきた経緯から、「ふきだし」をとりあげることに。

小は80c角から大は150c角の15枚の布地に、ふきだしの輪郭をとり、中には
「越前墨流し」の模様をインクジェットでカラー出力したものを当社で用意しました。
この模様の上に「書」した、相変わらずトンだ発想の作品です。

吉川壽一「風雲展」漫画タイトルロゴ&ふきだし書の美展 チラシ  吉川壽一「風雲展」漫画タイトルロゴ&ふきだし書の美展 使用グラフィックアート

その他には、当社で見つけた、「スクリーン印刷技術による視覚の位相」を利用
した3次元フレーム(額縁)に、書を入れた作品も数多く制作しました。

新しいモノを見つけると、子供のように喜々として「SYO」が発想されるようです。

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「無二なる風のSYO・書展」=コニカミノルタプラザ(新宿高野フルーツ4F)

「コニカミノルタ」さんは、数年前から、彼の活動を全面的にバックアップしてくれ
ています。デジタルを駆使する御商売なのですが、究極のアナログ=「書」に
並々ならぬご関心をお持ちのようで、文化支援の意味の他に、技術者の発想に
資すると思われているのかも知れません。

日本のハイテク製品が群を抜いている背景に、このようなバックグラウンドがある
ことを感じます。なにしろ米粒に1000字を書く人がいる国ですから。

さて、「書とは“打つ”こと」の例を。天井まででも足りないデッカイ紙は越前和紙
の第一人者、岩野平三郎さん(本年度伝統文化ポーラ賞受賞)の雲肌麻紙。

大書“心” 宮本武蔵あての手紙・扇面に

そのほか、「剣豪・武蔵」「書聖・王義之」「沙門・空海」「光明皇后」をはじめ、
「ミロ」「ピカソ」にまで、連綿と巻紙や扇面に“手紙”を書くという(!)、その誰も
思いつかない着想と流麗な書に、今回もまたあっと驚かされました。

(講談社会場は26日まで。コニカミノルタプラザ/ギャラリーB&Cは終了)。


横山国男


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2008年10月22日(水)更新

反省猿次郎くん来社・・TV放映から得たもの。

13日と20日、月曜日の夜7時30分から、福井テレビ(FNS系)の制作番組
「福井浪漫 い~ざぁ・ええDay」で、当社を紹介していただきました。

先日ブログにも書きましたが、「猿まわしの太郎さんと反省猿次郎君コンビ」が、
次郎クンのふるさと福井を訪ねる、というストーリーで、いわば「里帰り記念公演」。
10月3日は当社にも来訪し、賑やかでした。

5日日曜日は、満員のTV局のホールで、猿まわしの公演がありましたが、記念に
地元の企業で作ったモノを見せたいとのこと。

次郎クンがステージで使う階段付き跳び箱を永平寺町の家具製造業さんが、
当社は地場産業の合繊織物を加工してコンビの衣装を作ることに。

10月20日(月)19:30放送 福井テレビ(FNS系)制作「福井浪漫 い~ざぁ・ええDay」 10月20日(月)19:30放送 福井テレビ(FNS系)制作「福井浪漫 い~ざぁ・ええDay」

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当社は、主に北陸地区の染工場さん、プリント、シルク印刷業者さんへのシルク
 スクリーン版(型)を30年余り製作してきました。
この10年は、染織や縫製産業が雪崩をうって中国へ移行した時期。お客さんや
同業者さんの中に廃業した所も多く、つらい状況は今なお続いています。

私たちも必死で生き残りの道を模索してきました。その一つがよさこいや太鼓、
音楽グループの少人数のステージ衣装、ユニフォームなどをオーダーで制作
する仕事です。やってみて大変な仕事だとわかりましたが、今では、県外からの
ご注文も少しずつ増えてきました。

産地ですので、素材や加工技術は豊富です。また専務や私が長年テキスタイル
(染織)デザインに力を注いできました。多くの資料やそのノウハウで何ができるか、
何をすべきか夢を語ってきました。

 このような資料や加工手法の知識、人と設備の制作ネットワークが、当社の
「ワンストップビジネス」を可能にしていると思います。
 企画・デザインは当社がやりますが、CADによるパターン制作、豊富な素材の
提案・調達、縫製やプリント等協力工場を含めたあらゆる二次加工など、それも
ほとんど地場周辺で完結できる強みです。

また、了解を得て保存してきた過去の代表的な衣装なども、まだ少ないですが、
新しいヒントやインスピレーションを得るのに役立っていると思います。

このようなモノ作りは、TV局にとっても「絵になる」と思われたようです。
2回の30分番組の中で、かなりの時間、制作過程や作品、現場などをスタッフと
共に放映していただきました。 こちらからお礼を申し上げねばなりません。

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説明役で登場した長女が、私が指示したわけでもないのに、当社のPRは少しに
して、明るく産地全体のPRをしてくれたのをとても嬉しく思いました。
後継修行中の身ですが、私にとってこんなことも今回のイベントでは印象的でした。

専務や私の、どちらかといえば「仕事を遊んだ遺産」を楽しく引き継いで、スタッフ
全員で力を合わせて、これからも日本のモノ作りにがんばって欲しいと思いました。


横山国男

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