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2008年10月27日(月)更新

「ことばを旅する」・・・細川護煕から深まる秋の京都へ

’04年6月~’08年5月まで、週刊文春に毎月一回4年にわたり、中央見開きに
連載された細川護煕(もりひろ)氏の表題のエッセイを、旅の写真とともに楽し
みにしていました。

西行、良寛、漱石、与謝野晶子など、著者が「心に残る名言の生まれたゆかりの
地」を旅する紀行エッセイ集。
気に入ったものは時々スクラップもしていましたが、「テーマのある旅」というのも
なかなかいいですね。

先月単行本化されましたので、あらためて読ませてもらいました。
=「ことばを旅する」(細川護煕著 文藝春秋刊 @1600-)

「ことばを旅する」(文藝春秋@1600-)細川護煕著

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著者は熊本県知事から、第79代内閣総理大臣として、初めて自民党以外の
政権を樹立した立役者。 しかし’93年8月から10か月で退陣せざるを得なく
なったのは、氏の人生観が、権力とカネがものいう政治の世界と根本的に相い
れなかったのではないか、と私は想像しています。
細川首相が続くような国なら、日本はもう少し変わっていたかも知れません。

エッセイ第42回、兼好法師の「緒縁を放下すべき時なり」(徒然草)を地でいく、
還暦を迎えた’98年5月、あっさりと議員を辞職し、陶芸家の道へ。
湯河原に隠棲されているわけですが、第二の人生は創作に、というのは私の
憧れる生き方でもあります。

国会中継などで、かっての最高権力者が口を開けて居眠りしている図は、美しい
ものではありません。「老残」という言葉すら思い浮かびます。(失礼)
ロマンチスト、アーチスト・・・細川さんの「美学」では許せないものでしょう。

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細川さんは1938年1月生まれ、とありますから、今年70歳。
その風貌は、さすが肥後熊本藩主だった細川家の第18代です。
私が魅力的だと思う一つ目は70歳とは思えぬダンディぶり。まだ青年と表現する
のは無理でも、50代にも見えるのです。
「美」を追求している人だけが持つ、独特の若さがあるように見受けられます。

週刊文春 切り抜き。本カバーの裏表紙にも

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二つ目は、繊細で絵画のような素晴らしい文章を書かれること。
以下の文章は、先ほどの兼好法師「徒然草」を、生涯の友というべき書として挙げ、
修学院道(京都)を訪れた紀行文の文末に書かれたものです。
情景が浮かび、しっとりと心に沁みました。

 ・・・ 『横川を経て、兼好籠居を偲び訪れた秋の修学院道の紅葉はちょうど
    見ごろだったが、楓葉を散らす無常の風をまだ苦悩の中にいた兼好も
    感じただろうかと、そんなよしなし事を思いつつ、踏むには惜しい落ち葉
    の上をそっと歩いた。』

みなさまのテーマは「仏像」でしょうか、「季節の京料理」でしょうか。
秋真っ盛りの京都を旅したくなりますね。


横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/
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