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2008年06月03日(火)更新

感動した謄写版絵師・故助田茂蔵さんの法要記念品

昨年の夏、拙ブログでご紹介した最後の「謄写版アーチスト」とも言うべき、助田
茂蔵さんが過日93歳で亡くなられました。

まだこの春まで、植物細密画(ボタニカルアート)の写生を続けられておられたよう
ですが、素朴な設備・手法ながら、戦後とくに簡易印刷としてどこでも使われた
謄写版印刷をアートの領域にまで持ち上げた稀代の職人(絵師・彫師・刷り師)
でもありました。 私の仕事であるシルクスクリーン(染型)、ステンシルの原形とも
いえます。

残念ながら、お目にかかる機会がありませんでしたが、茂蔵さんの作品を昨夏
インクジェットプリントでTシャツ(オーガニックコットン)にする企画を,ご子息の
篤郎さんに提案し、地方紙にも取り上げられて大変喜ばれる結果になったことを
嬉しく思っています。

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先日、篤郎さんから、満中陰法要記念の品(花の色紙)と、ご挨拶状(ともに謄写
印刷です)をいただきましたが、故茂蔵翁の死を目前にした「いのち」の不思議さ
について書かれた短い文章に感動しました。
薄墨で印刷された定型のご挨拶状をいただくことも多いのですが、美しい色紙と
ともにご紹介したいと思いました。ご冥福をお祈りします。

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『 謹啓 父・茂蔵の葬儀に際し、ご丁重な御香資を賜り厚く御礼申し上げます。
六月一日、故茂蔵の忌明け法要をすませることができました。
思えば、病床の父をお見舞い下さる方々やお世話下さる看護師さん達に、父は
ただ「ありがとう ありがとう」の毎日でした。と同時に、絶食の毎日でもありました。
そんな中で、父が私達に残してくれた短い文章があります。それを記させていた
だき挨拶とさせていただきます。

     私は今までお食事を頂くことは、生活の中でも、いちばん楽しく
     幸せな時間だと思って来ました。
     病気になって、食事を頂くごとに、それは今までに味わったことが
     ない苦痛発生の原因になることもあるという体験をしてみると、
     何が善で、何が悪か、自分で解ったような顔をして、かんたんに
     決めていた愚かさに気がつきました。
     いのちは苦痛の中にも生きています 苦しみをとりのぞく必要の
     ない世界を悠々と生きています。  不思議です。

 法名は「釈 相應」で、生前に自分でつけたものです。ありがとうございました。

                    平成二十年六月一日
                                    助田 篤郎   』

助田茂蔵さんの謄写版絵          合掌


横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/
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