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2008年05月22日(木)更新

【明大生との毎週一問百答】・・訪問先では立って待つ。

<ご質問>
新たな人との出会いの場面において、大切にしていること、
心がけていることがありましたら、教えてください。
                          (明治大学商学部 大石絵美莉さん)



なるほどと思って10年来実行していることがあります。それは訪問先(特に初対
面、お願い事がある場合、懇意な間柄では未だないというときなど)へお伺いし、
応接間や商談室などへ通されたら、相手の方が出てこられるまで「立って待って
いる」ということです。
新入社員もそろそろ一人でいろいろな所へ「お伺い」する頃です。何かのお役に
立てば嬉しいですね。

これは私の座右の書の1冊「日本人のお行儀」(草柳大蔵著・グラフ社)に書かれて
いるエピソードで、以来努めて実行するようにしています。
戦後すぐのお話ですが、今も古くなっていないと思いますし、文章が素晴らしい
のでそのままご紹介します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何故立って待つか」
昭和二十三、四年ごろ、私は雑誌の編集部員をしていたが、先輩に急用が出来て、
芦田均氏に依頼した原稿の受け取りにゆかされた。
 応接間に通され、ソファーにすわって読みかけの岩波文庫を読んでいると、芦田
夫人が手に原稿を持ってあらわれた。
「はい、これ」と渡され、礼を言って立ち去ろうとすると、「お待ちなさい」と夫人に声
をかけられた。
「あなたのお父さんはどんなお仕事をされていたの?」と問われて、門塀や墓石を
つくる石屋でしたと答えると、「そう、それではご存知ないのでしょうね」とやさしい
笑顔になって、夫人は教えてくれた。
「他家を訪問したときはね、そこのご主人が出てくるまで座らずに待つのが作法
です。家の方でも、お客様が手持ち無沙汰にならないように、絵を架けたり、花を
生けたりしているのです。これからは、書や絵や花をご覧になりながら、立って
待たれたらいかがですか」

この忠告をありがたく頂戴して、私は私なりに実行してきた。二十数年たって、文藝
春秋に人物論を連載しているとき、当時日本経済の要の位置にいた興銀頭取の
中山素平氏にインタビューを申し込んだ。
銀行の応接室で小林和作画伯の大きな絵を見ながら待っていると、頭取室から
中山氏が出てこられて、開口一番、こう言った。
「キミとは初対面だ。どんな男かと、キミをよく知っている三菱銀行の田実頭取
(故人)に電話で聞いてみた。こちらが出てくるまで応接間で立って待っている
男だよ、という田実さんの返事を聞いて、キミとあってみる気になったんだ。
あとで田実さんに礼を言っておき給え」 (引用終わり)

横山国男

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