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2007年06月11日(月)更新

「中国が世界をメチャクチャにする」という本

元『フィナンシャル・タイムズ』北京支局長だったジェームズ・キングという人
の書いた「中国が世界をメチャクチャにする」(草思社 1600円+税)を
読みました。

本の表紙

一気に読ませる理由は、この本が著者(英国人)自身が山東大学に留学し、
その後中国や日本におけるジャーナリストとしてのキャリアと、勿論筆力の
故でしょうが、「現代中国人の特にビジネスにおける所業」を、著者自身が
全て中国と世界の各地で、実地に取材・検証している点にあると思いました。

その点では、ドキュメンタリーでもあるのですが、それにしても直載な表題です。

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この本を読んで考えさせられたことはいくつかありますが、二つほど。

一つは私自身の仕事と関連の深い、繊維・アパレル産地イタリアのプラート
に何が起きたか、です。(プラートは一つの典型的な例です)

プラートは10年ほど前、繊維を地場産業に持つ福井が、モデルとして盛んに
取り上げたことがあります。

しかし、この700年に及ぶ織物の伝統を持つヨーロッパの古い町が、ここわずか
5,6年のうちに繊維関連企業六千社が半分以下になってしまった、という事実
の陰には、中国でも特に起業家精神旺盛な「温州人」が、大挙して移住し、
どん底の下働きから、技術、ファッションビジネスのやり方まであっという間に
習得し、本国へ持ち帰って、強烈な低賃金を武器に世界に進出をはじめたこと
にあるようです。

わが愛すべきプラートのイタリア人にとっては、いったい何が起きたのか、
未だに夢の中での出来事ではないのか、と思っているかも知れません。
700年の歴史がたった5,6年で崩壊したのですから。

最初は蛇頭の手引きで、命がけで渡ってきた温州の少数の人たちが、低賃金
で長時間働いてくれるので、そのうち合法的に移民として、市の商工会議所
等が音頭をとって、積極的に受け入れたのです。
今やプラートの人口18万人のうち中国人は2万人、チャイナタウンが出現し、
帰化した人も多いようです。


二つ目はベオグラードの中国大使館がNATO軍によって誤爆された時の、
著者の親しい友人、中国人外交官(女性)のとった行動の記述です。

この外交官が反米デモの中に加わり、北京のアメリカ大使館に投石している
現場に出くわした著者が、友人とは思えない怒鳴り声に呆然と立ち尽くす
場面です。

アヘン戦争から1世紀半におよぶ屈辱を口にし、「中国人はいつか復讐を
果たすことを思い知らせてやる、その時初めて痛みがわかるだろう」と熱弁を
ふるった、と書かれています。

しかし、話はこれで終わりではなく、1ヶ月後にハーゲンダッツで再会した時、
WTO加盟協議の話題にふれ、彼女は「長い目で見て得になる譲歩をする
用意はあるのよ」と言った、とあります。


この本は私に最近の「反日デモ騒乱」や「日本の移民受け入れ原則拒否の
国是」について深く考えさせられる一冊でした。

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しかし、このあと、さらに二つの考えさせられることがありました。

信州松本に在住するSさんのブログを毎日楽しみにしているのですが、松本と
いう地方都市から、日本人の暮らしと投資感覚、興隆するアジアの経済に関
する的確な分析などに好感と尊敬を持って読んでいます。

先日Sさんのブログに中国本土からの学生と称する人から投稿があり、
「うーむ」と思いました。

「中国は政治は共産党一党独裁、経済は資本主義市場経済、これを矛盾と
いうのはたやすいですが、いったい13憶とも15憶とも言われる多民族国家の
人民が一斉に豊かになりたい、と走り出した現状をコントロールできるのは
強力な(軍の力もふくめて)現政治体制だからこそ」というような主旨のコメントが
載っていました。

そして

昨夜は、「中国琵琶」コンサートに行ってきました。
はじめての中国琵琶は私に遠いシルクロードを吹く風の音、隊商の鈴の音を
連想させて楽しいものでした。それになつかしい「蘇州夜曲」「夜来香」・・・・。

琵琶演奏の閻杰(えんき)さんをはじめ、二胡、これもはじめて聞いた中国古箏
奏者の皆さんはいずれも美人揃い、流暢な日本語でトークも上手、私の少し
とがった中国への思いを和らげてくれました。

パンフレット表紙  奏者紹介ページ

お互いの「文化」を識り、尊重することも理解への第一歩・・・大事なことを
気づかせてくれた日でした。


横山国男
【オーダーよさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/
【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/

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