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2007年05月17日(木)更新

「山道」「間道」「綾錦」・・・伝統織物の今

先週末山登りやハイキングに行ったのではありません。京都の着物問屋さんを
見学しました。(タイトルは絹織物の織り方というか名前です)


「いつ頃からの御商売ですか」「応仁の乱のころには店があったように聞いており
ますが」と著名な問屋の専務さん。この中庭の土もそのころから変わらないのか、
と思うとちょっと裸足で歩いてみたいような気もしました。
(別室での正倉院”名物裂”などの復元品も見せていただき感激)

能衣装や有職織物の織屋さん、帯や紐、お茶事のお菓子司さんにも”超”のつく
老舗のある京都ですから、特別驚きもしませんが、案内していただいたD百貨店の
呉服担当の方も、「手前共も間もなく創業300年となります」とカルく仰られます。


すごいものがありますが、それにしても近年の「着物」の衰退は目を覆うばかり
です。
昨年も「着物販売に新機軸を取り入れた」商社が倒産、マグニチュード7級の激震
が走り、特に象徴的だったのは室町でも有名な老舗の「問屋」さんにも被害が及ん
だことです。以前なら保守的なこのような「老舗」は取引に応じなかったはず。


京都の着物は独特の分業システムで作られ、その間をつなぐ「悉皆」(しっかい)と
いう業者(制度)が制作全般をコントロールしてきたのですが、糸、織、染め、蒸し、
水洗(水元)、仕上げ、縫いや刺繍などの各工程(工場・工房)の足並みも乱れて
きています。

               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

珍しい織物(着尺地)を見せていただきました。「間道」(かんとう)ですが、織り方に
特別の技巧があり、気の遠くなるような作業の積み重ね、染めの色といい、モダン
な意匠といい「ああこれが間道ですか」と興奮しました。

間道 綾錦
間道            綾錦(縦糸の見本。尺幅で3千本以上ある。織かけ。)

「山道」というのもありますね? と工房から出張ってこられた方に私が尋ねると
「よくご存じですね、ここにはありませんが」とひとしきり伝統織物の話で盛り上が
り、いろいろなことを教えて頂きました。

建築か絵をやりたかった少年でしたが、工業高校や専門学校で選んだ「染職」の
周辺でその後も仕事をするようになって半世紀、「プリント」はまだ100年 くらいの
歴史しかありませんが、いつも憧れてきた「日本の伝統織物」、この春沖縄では
「芭蕉布」と「紅型」のお店で美しい女店主さんと話に夢中になり、集合時間に
遅れそうになりました。

本
「日本の伝統織物」 「鐘紡コレクション」

毎年「初詣」に京都の神社へお参りしますが、3年ほど前ですが愕然としました。
八坂神社へ向かう道路は歩道から人が溢れているほどでしたが、この年着物姿の
人を探すのに苦労しました。

「何かが変わった」と思わずにはいられませんでした。
「着物」だけが消えたのではなく、日本人の大切な何かが急速に消えていくような
気がしました。

世界に誇る日本の衣文化の代表「着物」、衰退を嘆くばかりでなく、シナジーネット
代表の坂口昌章さんにならって、私も「男の着物」を愛用するよう心掛けなければ、
と思います。


素晴らしい織物や着物を見せていただいたあとは、南座で「玉三郎」の舞踊劇を
鑑賞。愛らしくも妖艶、美を超越して幽玄・・・・・・。

「美しいもの」が見られた幸せな1日でした。これをして「眼福」というのでしょうか。

感謝!


横山国男
【オーダーよさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/
【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/

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