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2007年04月16日(月)更新

息を呑む美しさ・・台湾故宮の青磁

何度か台湾を訪れていますが、今回初めて世界四大博物館の一つ
「故宮博物院」を短時間ですが、見ることができました。

故宮博物院

この春、リニューアルを終えた記念の企画展だったのでしょうか
北宋時代(960~1127年、日本では平安中期)の僅か20年ほどの
間にだけ作られ、世界でも数十点ほどしか現存していないという
汝窯の青磁が展示され、話題となりました。

週間誌で福田和也さんがレポートし、激賞していて「生きてる間に
観られたことは幸せ」という風なことが書いてありましたが、残念
ながら終了してしまい、あきらめていました。


仲良くしている台北の旅行社のKさんと飯を食っているとき、この
話をすると「故宮の館蔵品の数点は今も展示していますよ」と言う
ので、翌朝タクシーで開館と同時に2階の展示スペースに一目散に
急ぎました。団体が入ってくるとすごく混雑する、と聞いていた
からです。

          ・・・・・・・・・・・・・・

その色や形、なんともいえぬ気品ある美しさには「息を呑む」という
表現が当たっていると思いますが、青磁でも汝の青磁にはメノウの
粉末が加えられていたそうで、そのせいかやわらかい緑の色味も感じ
られ独特の温かみがあります。

作り手の美意識の高さ、高潔な生活の姿まで透けて見えるような思い
がして、一気に脳は中世の中国へワープします。
まさに「眼福」とはこのこと。

汝窯の青磁器(蓮花)汝窯の青磁器(水仙)

いくつかの陶磁器や工藝品を見て、あらためて「人間は素晴らしい、
“万物の霊長”とはこのこと」と思いました。

「今あるものに一つとして新しいものはない。すべて昔からある」と
いうような文章を読んだ記憶がありますが、それどころかいにしえの
人間が作り出したものの方が、はるかに力強く、デザインも秀逸で
「美」の根源を感じさせてくれます。

「これいいな」と思って買った「器」など、殆どの原形はこれらの
博物館や美術館にあって「なーんだ」と思わされることも一度や二度
ではありません。

日本の染織「能衣装」だけ例にとっても、その大胆でモダンな意匠と
ともに、織り、染め、刺繍などの気の遠くなる「手仕事」の世界は今
では望むべくもありません。
我々は進歩したのだろうか、と思わされるときです。


もっと陶磁器などの知識を持っていれば、さらに楽しみも深くなった
はずなのでそれが残念。
また「美術・工藝」でのかっての中国の素晴らしさを、あらためて
思い知らされましたが、きっとこのDNAは引き継がれているはず。

超大国を自認するアメリカも、多くの人がこれらの遺産を見たら益々
「中国・中国人」に対する認識が変わるでしょう。それとも近い我々
よりもっと早くから「中国」を識っているのかも知れません。


横山国男
http://www.yosakoiya.jp/
target="_blank">http://echi-zen-art.co.jp/