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2007年03月01日(木)更新

【今週のお題】私の好きな人物ベスト3(幕末・維新編)

ベスト3といっても、幕末・維新の有名人の名前くらいと教科書的
な知識しかなく、恥ずかしい限りですが。

好き・嫌いでいえば好きは西郷隆盛、坂本竜馬それに郷土福井の
志士橋本佐内といったところですが、嫌いの代表は佐内等を斬首
した井伊直弼(1815.11.29~1860.3.24)でした。(安政の大獄)


経歴を調べても、彦根藩11代藩主井伊直中の14男として生まれ、
17歳から32歳までの15年間は三百俵の捨扶持の部屋住み。

自らの境遇に例えて「埋木舎(うもれぎのや)」と称する自宅で
世捨て人同然の暮らしだったとあります。

ただこの間、儒学、国学、曹洞禅、書、絵、歌、剣術、槍術、弓術、
砲術などを修めたほか、「茶の湯」では一派を確立するほどの文武
両道に長けた武士だったことは間違いないようですから、「ものの
あはれ」が分からぬ人とは思えません。

その後彦根藩の後継者になってからは、混乱する幕政を取り仕切る
大老職にまで上り詰め、騒擾の世中にあって強権をもって治安を
回復しようとし、政敵を次々と放逐、尊王の志士たちからは「赤鬼」
と憎まれるようになります。

そしてついに1860年3月24日、江戸城桜田門付近で水戸藩浪士により
暗殺の憂き目に会います。(桜田門外の変)

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・

もう大分経ちますが、草柳大蔵著「日本人のお行儀」という本で
“これぐらいの文章は暗記しなさい”と紹介されていたのが、
井伊直弼の著作「茶湯一会集」にある巻末の短文「独座観念」です。
(この本の“一期一会”という言葉のほうが有名ですが)

これは本当に素晴らしいと思いました。このような文を書く人が
「打ち首」の命令を本当に出したのだろうか、と。
「茶の湯の真髄、人をもてなす心とは」に深く得心したのです。


“独座観念”は「佐藤俊明のちょっといい話」というHPでわかり
やすく要約が書かれていますので引用させていただきます。


        *****************

 茶席終わって主客共々に名残り尽きない思いをいだき、別れの挨拶を
済ませて客が帰路についたならば、客の姿が見えなくなるまで見送り
することが肝要である。
 客がかえったからとて早々に音を立てて戸・障子を閉めるのはもって
の外で、これではせっかくの饗応も台無しになってしまう。
 客の帰る路がみえなくとも、取り片付けはいそいではならない。
心静かに茶席に戻り、炉の前に独座して、まだまだお話もあったろうに、
今ごろはどの辺まで歩みを進められたか、今回この一期一会は二度と
再び帰るものでないこと等と思いめぐらし、または独りでお茶を立てて
一服したりする。
 これが一会極意のきまりである。この時は寂漠森閑としてうち語らう
ものとしては釜一口だけで、ほかに何物とてない。


        ******************

原文を読みますと、シンとした薄暗い茶室にただ聞こえるのは「シュン
シュン」という釜の湯の沸く音と、炭火のほの赤さだけ、そこに独座する
のは直弼なのか自分なのか・・・いつの間にか炉の前にいるような気に
なる名文です。

今年は桜の名所「彦根城」が築城四百年とか。「埋木舎」も傍にある
ようですから、訪れてみたいと思います。


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横山国男
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