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2007年09月01日(土)更新

私流「事業承継論」・・なぜそう考えるようになったか

小企業や商店などの事業承継について、ここ2回ほど他愛のない話をブログ
に書きました。「事業承継」などというとあらたまった感じがしますが、私が
社会に出る頃でも、まだ長男がかなり親の後を継ぎました。

いろいろと理屈をつけても、要は後継者が「継ぎたい」と思わなければ、
事業承継は難しい、「夢」のない話ばかりでは、と強烈に覚えているエピソ
ードが私の「やぶにらみ事業承継論」をブログで披露した主な理由です。

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高校三年の時、同級生の一人が「俺は親父の機屋(はたや)なんか絶対継
がんぞ。朝は早ようから夜遅うまで、織工さんがおらんときは親父とおふくろ
で織機をまわし、合間にや畑や田んぼもやらんとあかん。家族全員で飯を
食ったこともほとんどない。旅行にも行かん。それで月末になると『今月も
赤字や、なんとかせんとな』って二人で相談してる。 俺は就職するぞ。」

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今時、無借金で、経営者が高給取りで、財産もしっかりある、おまけに仕事は
カッコいいなんていうケースもあるのかもしれませんが、おそらくそういう
所で「事業承継」が問題になるとは考えにくいと思います。

大半は経営の環境が変わり、日々競争にさらされていたり、少子高齢化によ
る販売不振や中国からの輸入品に押されている、土木・建築業などでは
「公共事業の削減」が経営に困難を強いているなどなど、継がせる方から
見ても、心配があるからこそ「事業承継」がクローズアップされているとも
言えるのではないでしょうか。

しかし時代は私たちの思惑など関係なく変化していきます。恐れてばかりいた
り、立ちすくんでいてもおそらく何も解決しないでしょう。
若い人は「明るい面」だけ見て、未来を信じて進めばよい、と思います。

創業者の苦労話も小言も本人は「役に立つ」と思ってしていますが、どれほど
の意味があるのか、とも思う此の頃です。

それより、事業を承継できるのは「目の前にやるべきことがある」という幸運を
喜んでほしい、「ネットカフェで今日一日の仕事を探す」常に明日は食えないか
もしれない恐怖と隣り合わせの同世代の人もいるのです。

親父の創ったものを踏み台にして、自分のやりたいことを悔いなくやってほしい、
そしてきっと我々がやってきた時代より、はるかに社会全体で面倒をみなけれ
ばならない人が増える・・こういう境遇の人のことをいつも忘れずにいる経営者
になってくれれば「井戸を掘った」甲斐があろうというものです。 
 この話題オワリ。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2007年08月31日(金)更新

「駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた

草鞋(わらじ)を作る人」という諺があります。正確には文頭に“箱根山”
文末に“そのまた草鞋を拾う人”がくっついているんだそうですが、世の
中にはさまざまな境遇、職業があり、さまざまな立場の人がいて、うまく
社会を構成していることのたとえとして、「昔の人はうまいことを言うなあ」
と私などは思いますが、さて若い人は聞いたことがあるのでしょうか。

前回「事業承継」について、「零細企業の親父さん」が日ごろ考えている
あまり立派でない「作戦」を書きましたが、この「ことわざ」にも考えさせ
られる私なりの解釈があります。

 要は「田舎で草鞋を作り(稼いで)、お江戸では駕籠に乗る人になれば
よい」というような意味ですが、小企業でも頑張れば、夢は実現するはず、
と後継する若い人たちに言いたいのです。

そのためには、普通の「わらじ」を作っていたのではダメですし、販売方法
も工夫しなければなりません。我々にはない「若さと情報入手手段」も持ち
あわせているのですから。

わらじとよく似た「ビーチサンダル」で、そのファッション性、テイスト、価格
などで世界的に売れている南米のメーカーがありますが、おそらくその
会社の社長は「お江戸で駕籠」どころか、世界中を「プライベートジェット機」
で飛びまわっているかもしれません。

インターネットや様々な媒体に加え、この10年あまり企業の行ったなりふり
かまわぬ「非人間的リストラ」は、すっかり若者に「社会ってこんなものか」
という諦観を植えつけてしまったのではないでしょうか。

中小零細な企業でもお店でも、「あとを継ぎたくなる」ように、やせ我慢でも
社長が仕事にも遊びにも元気な姿を見せ、時には「お江戸で駕籠に乗る」
姿も見せねば、「事業承継」は魅力的なものに写らないでしょう。

という言い訳で、大枚をはたいて11月金沢で公演の(あとは東京、大阪)
「ホセ・カレイラス」のチケットを苦労して家内と二人分手に入れました。

娘は「いいなあ」と羨ましそうです。  贅沢してすみません。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
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2007年08月29日(水)更新

「世襲」と「事業承継」

安部新内閣が発足しました。「お友達内閣」から派閥にも気を使った
「実務者中心型内閣」へ、とも言われていますが、支持率は期待もこめて
少しUPしたようです。

どなたでも気がつくのは、総理をはじめ二世、三世の大臣が多いことです。
政治の世界でも「世襲」が目に付き、これがこの国にとって良いことなの
かどうかは個々の政治家の資質しだいということでしょうが、難問山積の
日本国をよい方向に導く「政治家」であってほしいと。・・・お願いします。

「世襲」とは、親の手にしている特定の地位や、肩書き、職業などをその
子や係累が引き継ぎ、それによって社会的な権力や権限を得ること
(Wikipedia)とありますが、たまたま「そこに生まれただけ」で既得権を
引き継ぐのでは、社会のダイナミズムは失われるのではないでしょうか。

もうひとつ引き継ぐという点では、中小企業の「事業の承継」という問題が
クローズアップされています。

中小企業経営者の平均年齢が高くなり、また「後継者がいない」と答える
事業主も増えているそうですから、中小企業が大部分を占める日本では
人口減少と並び「社会の活力」という点でも大きな問題です。

後継者がいる場合は、「事業承継」のプログラムを、顧問の会計士やコン
サルタントと相談しながら計画的に実施に移していかねばなりませんし、
後継者のいる場合、いない場合の相談窓口も増えつつあるようです。

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ザックバランに言いますと、私は「継ぐも継がぬも本人の自由」と思って
きましたが、子供に「夢がない」とだけは思われたくありませんでした、

引き継ぐほどの大した資産や家作もなく、業容・業態からいっても「ビッグ
ビジネスにはなりえない」ような典型的な小企業ですが、それでもサラリ
ーマンも昔ほど気楽な商売でもなくなってきましたから、「自営業も捨てた
もんじゃない」とは思っています。

誤解を恐れずに言えば、事業承継は「娘(息子)に羨ましいと思わせる」
ことで半分成功したようなものと思っています。
サラリーマンには定年がありますが、自営業にはありません。
長い老後を経済的なことを心配しながら暮らすくらいなら、自分がやりたい
間はやればよい、とさえ思います。

定年後の資産の運用とかで、やれ「株」だ、「為替FX」だと怖いことに頭を
使うより「事業利得」の方がはるかに確実で、第一他人や証券会社を恨ま
なくて済みます。納得のできる本当の「自己責任」ですから。

夫婦で役割を分担しながら、つらい時も相談しながら乗り越え、嬉しいこと
があれば社員や家族ともども喜ぶ。自分で決めた目標を達成したときの
快感などは生活全部がかかっているのでサラリーマンでは得られない人生
経験でもあります。

多少の余裕ができれば、自己投資、旅行や買い物、多様な人々との交際
で世界が広がる、サラリーマン世界では役員クラスまでは難しいでしょう。

当社の場合は今のところ何とか30年あまりの年月のなかで自然と蓄えら
れてきた「染織デザイン・プリント」の知識や人的ネットワークなどが、
毎日少しずつ後継者に引き継がれて、新しい企画でも役立っているように
も見えますので、周囲に感謝しながら「この小さな企業」をお客様に喜んで
もらえるものにしていってほしいというのが私の願いです。

「苦労もあるけど、自営業だからこその喜び、幸せもあるんだよ」というのが
厳しい経営環境を前にして、躊躇しているかもしれない多くの「後継予定者」
に申し上げたいことです。

横山国男

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2007年07月24日(火)更新

明大生との毎週一門百答・・「良い会社」とは。

<質問>
経営者のみなさまにとって、「良い会社」、「悪い会社」ってどんな会社でしょうか。
また、その判断基準はどこに置いていらっしゃいますか。

(明大商学部 山崎優さん)


私には課題としてちょっと大きすぎるような気がしますが、考えてみました。

老若男女の個人も法人(企業・会社)も公務員もみんなこの「社会」を構成している要員ですが、「よりよき社会」にすることに反対の人はいないはずです。

そこで「良い会社」「悪い会社」ですが、最近「ステークホルダー」という言葉をよく耳にしますので、調べてみますと、「企業を運営するにあたり、経営者が株主のために株主価値や企業利益の最大化を目指すことは本質的に正しいが、その他にも住民や地域社会なども含めた社会全般も“ステークホルダー”であると認識する必要がある(要約)」と書かれています。(KPMG Japanのホームページ、ビジネスキーワードから)

こういう認識が欠如していると、TVカメラの前で一斉に頭を下げる羽目になり、最悪の場合には、信用が失墜し、企業価値を一瞬にして失うことにもなりかねません。

結論ですが、「良い会社」とは、株主・経営者・従業員にとっての良い会社だけでなく、広範なステークホルダーへの十分な配慮を忘れない会社ではないか、と思います。

以上は企業が存続するには、まず「良質な市民」であることを求められる時代になったことでもある、と思いますが、「市場経済」というのはある意味健全ですね。

なかなか変わらない(潰れないから変える気がない?)「お役所(公務員)」と比較するとよくわかります。「国民や住民、社会の利益の最大化」のために税金を使ってほしいのですが、天下りなど「自身の利益の最大化」に熱心なような気がします。
横山国男

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2007年07月16日(月)更新

倒産した会社社長(知人)にバッタリ合いました。

先日、好天の中、用事のある市役所に向かってビルの角を曲がると、
向こうから大きな書類カバンのようなものを提げてこちらに歩いて
来られるのはまぎれもないA社長さん。

昨年、大きな負債を抱えて行き詰ってしまい、それほどお付き合いの
ある方ではないのですが、温厚で話題も豊富、A社長のご友人が経営
する千葉の立派なゴルフ場へお供したこともあります。

私が先に気づきましたが、一瞬「たじろいだ」ような感じがあったのは
どんな風に言葉をかけるか、迷ったからです。

「やあ、横山さん、元気?」と明るく先に言われてしまいましたので、
こちらも「お久しぶりですねェ、Aさんこそお元気そうで」となんだか
つられてというか、ホッとしてというか、どちらにしても何事もなかった
ような雰囲気のまま、しばらく立ち話をしました。

丁度、法的な整理が済み、事業を引き継ぐ会社も現れてホッとされていた
のかもしれません。中国などへの地すべり的な産業移転の代表業種とも
いえるお仕事でしたから、時々「A社長さん、どうされているだろう」と
思い出すこともあったのです。

短い間でしたが、私の仕事のことなどもお尋ねになり、またご自身の計画や
インターネットの話題まで、「刀折れ、矢尽きた」「いっぺんに年老いた」等
の感じはあまりなく、本当に嬉しく思いました。

もちろん、債権者への責任を感じておられないはずがありません。また苦悩
の夜も数え切れないほどあったはずです。
しかしあらゆる手立てを講じても歴史の流れに勝てない局面もあるのではない
でしょうか。

事業の失敗から、ヌケガラのようになったり、まして自死を選ぶなどという
ことがあってはなりません。
「事業に命を懸ける」というのは「そのくらいの決意で」という分には賛成で
すが、「ビジネスはビジネス」とあらためて自分に言い聞かせました。

別れたあと「Aさん、頑張ってくださいね」というような気持ちで振り返り
ました。人通りの少ない午後の繁華街でしたが、でもやはりちょっとお体は
小さくなられたような気がしました。

横山国男

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