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2007年10月17日(水)更新

「次世代の日本の基幹産業はPUC」だそうです。

11月号の「文藝春秋」に、「日本興国論ー米国型経営を超えて」と題して、デフタ・
パートナーズ・グループ会長 原 丈人(じょうじ)氏の論文が掲載されています。
経済学に疎い私は原氏も社名も知りませんでしたが、米共和党のビジネス・アド
バイザリー・カウンセルの名誉共同議長として、米国の多くの産業人とも意見を
交換する立場にあるそうですから、傾聴に値するものと思い興味深く読ませても
らいました。すでに多くの方も読まれたのでは、と思いますが、「羅針盤なき日本
丸はこれからどうすべきか、というモヤモヤ」が結語でスッキリした感じを得ました。

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『アメリカはあと10年くらいは金融中心の国家にとどまります。しかしマネーゲーム
は何も生み出さず、収奪していくばかりなのでいずれ破綻します。金融と言うのは
新たな産業をつくるための脇役です。これを主役だと煽るアメリカの風潮、この
分野の自由化こそが構造改革だと勘違いする一部のメディア、知識人は、世界を
破綻に導きます。いつまでもアメリカの猿真似をしているようでは、日本に未来は
ありません。日本発の新しい基幹産業を創出して、世界経済を牽引する国になる
べく、まず一歩を踏み出すことが必要です。』(同誌299ページから引用)

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勿論上記の結論の論旨は格別目新しいものとは思いませんが、原氏は論文の
中で、明快な分析と「日本だからこそ可能な産業立国図」を描いて見せます。
その主旨が、計算機能中心主義(コンピュテーション)から相互通信機能中心
主義(コミュニケーション)へパソコンの核となる設計思想が移行し、2015年頃
には社会へほぼ普及することになり(この次世代のアーキテクチャをPUCと
呼ぶそうです)ここに日本の大きなチャンスがある、と述べておられます。

PUCはソフトとハードが分離できないビジネスモデルなので、最も精密なものを
小さく作る能力を持つ日本が最有力で、次世代の基幹産業となりうるが、それに
は思い切った基盤作りが必要で、政府も含め産業界の発想の転換、強い意志
と政策が必要と説かれているように読み取れました。

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タイトルの添え書きに「ヘッジファンドに騙されるな。米国を知り尽くした起業家の
提言」とあり、「企業は株主のもの」ではない、ストックオプションを廃止せよ、ヘッジ
ファンドを規制すべし、など大変面白く勉強になりました。

横山国男

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2007年09月13日(木)更新

仕事は楽しみ?

<ご質問>
人生において、仕事は楽しみですか。それとも、成長の手段でしょうか。
                  (東洋大学経営学部4年 渡辺麻貴さん)


大企業、小企業のサラリーマン、そして30年余の自営業を振り返って、幸い
「仕事」を苦痛に思ったことはあまりないように思いますが、ただ経営の責任が
あるようになってからは、「仕事が楽しい」という心境は、やはり業績がそこそこ
よくないと得られないもので、悪い時は“遊び”をしていても心から楽しめない
ものですね。

今、読んでいる「ネクタイと江戸前」(’07年版ベストエッセイ集ー文藝春秋刊)
にとても素晴らしい一文があり、突き動かされました。

作家の高橋三千綱さんのエッセイ「個人再生を夢見て」の文末に、陶芸家の
河井寛次郎がいった言葉が引用されていて、スランプに陥っている高橋さんが
激しいショックを受けた、とあります。

『この世は自分を見に来たところ。この世は自分を発見しに来たところ。新しい
自分が見たい。 仕事する』

芸術家というのはこういう発想をするものなのか。・・・・
ともあれ「仕事」は人間の成長と深く結びついていると思います。

横山国男

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2007年07月12日(木)更新

グーグルというインフラ

ここのところ、続けて「グーグル」にまつわる本を読みました。
「ウェブ進化論」(梅田望夫著・ちくま新書)、「グーグル Google既存のビジネス
を破壊する」(佐々木俊尚著・文春新書)ともに昨年2月と4月の発行で、増刷が
すごいですから、既に多くの方がお読みになっていることでしょう。

結果、私の中に何がおきたか、といいますと、
1.自社の将来に明るい展望を持った。
2.愛読するブロガーが言われるように、個人的にもこれからの人生がネットの
おかげで豊かなものになりそう。
3.「パソコンスクール」に通いはじめた。

などですが、何といってもあらためて「グーグル」のすごさ、「検索エンジン」
などという範疇には収まらない、世界的な「情報インフラ」になりつつあることを
知りました。 一私企業なのに“全能の神か”とすら帯にあります。

何事も「光が強ければ影も濃くなる」ので、いいことばかりではないと思いますが、
1. 2.については、世界中の零細な企業・個人に大企業と伍してビジネスの
チャンスが生まれる(究極はC2Cと考えているので、我が意を得た感じがあります)
個人の生活面ではネット上に膨大な「人類の知」「情報の顕在化」がなされる結果、
豊かな老後を想像させるものがあります。

この小さなディスプレーの向こう側に、“私”という個人にとって「無限」とも思える
世界が広がっていると考えると、「革命」としか考えられません。

というわけで、高齢者の仲間入りを目の前にして、「パソコンスクール」に通いはじめ
ました。

若い人のように、パソコンを自在に扱えないのは悔しい思いがします。時間と費用は
覚悟の上です。
昔、仕事で「船積書類」をタイプしていましたので、何十年たってもキー操作は指が
覚えていてくれるのですが、その他のこと、たとえば「パソコン」や「インターネット」
などというもの自体が我々の年代には「謎」としか思えないのです。

スクールの帰り、書店で「特選街」という雑誌を手に取りました。8月号の
特集は“必勝!Google完璧活用術”“インターネットの不思議99”など。
買わずにはいられません。

横山国男

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2007年06月11日(月)更新

「中国が世界をメチャクチャにする」という本

元『フィナンシャル・タイムズ』北京支局長だったジェームズ・キングという人
の書いた「中国が世界をメチャクチャにする」(草思社 1600円+税)を
読みました。

本の表紙

一気に読ませる理由は、この本が著者(英国人)自身が山東大学に留学し、
その後中国や日本におけるジャーナリストとしてのキャリアと、勿論筆力の
故でしょうが、「現代中国人の特にビジネスにおける所業」を、著者自身が
全て中国と世界の各地で、実地に取材・検証している点にあると思いました。

その点では、ドキュメンタリーでもあるのですが、それにしても直載な表題です。

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この本を読んで考えさせられたことはいくつかありますが、二つほど。

一つは私自身の仕事と関連の深い、繊維・アパレル産地イタリアのプラート
に何が起きたか、です。(プラートは一つの典型的な例です)

プラートは10年ほど前、繊維を地場産業に持つ福井が、モデルとして盛んに
取り上げたことがあります。

しかし、この700年に及ぶ織物の伝統を持つヨーロッパの古い町が、ここわずか
5,6年のうちに繊維関連企業六千社が半分以下になってしまった、という事実
の陰には、中国でも特に起業家精神旺盛な「温州人」が、大挙して移住し、
どん底の下働きから、技術、ファッションビジネスのやり方まであっという間に
習得し、本国へ持ち帰って、強烈な低賃金を武器に世界に進出をはじめたこと
にあるようです。

わが愛すべきプラートのイタリア人にとっては、いったい何が起きたのか、
未だに夢の中での出来事ではないのか、と思っているかも知れません。
700年の歴史がたった5,6年で崩壊したのですから。

最初は蛇頭の手引きで、命がけで渡ってきた温州の少数の人たちが、低賃金
で長時間働いてくれるので、そのうち合法的に移民として、市の商工会議所
等が音頭をとって、積極的に受け入れたのです。
今やプラートの人口18万人のうち中国人は2万人、チャイナタウンが出現し、
帰化した人も多いようです。


二つ目はベオグラードの中国大使館がNATO軍によって誤爆された時の、
著者の親しい友人、中国人外交官(女性)のとった行動の記述です。

この外交官が反米デモの中に加わり、北京のアメリカ大使館に投石している
現場に出くわした著者が、友人とは思えない怒鳴り声に呆然と立ち尽くす
場面です。

アヘン戦争から1世紀半におよぶ屈辱を口にし、「中国人はいつか復讐を
果たすことを思い知らせてやる、その時初めて痛みがわかるだろう」と熱弁を
ふるった、と書かれています。

しかし、話はこれで終わりではなく、1ヶ月後にハーゲンダッツで再会した時、
WTO加盟協議の話題にふれ、彼女は「長い目で見て得になる譲歩をする
用意はあるのよ」と言った、とあります。


この本は私に最近の「反日デモ騒乱」や「日本の移民受け入れ原則拒否の
国是」について深く考えさせられる一冊でした。

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しかし、このあと、さらに二つの考えさせられることがありました。

信州松本に在住するSさんのブログを毎日楽しみにしているのですが、松本と
いう地方都市から、日本人の暮らしと投資感覚、興隆するアジアの経済に関
する的確な分析などに好感と尊敬を持って読んでいます。

先日Sさんのブログに中国本土からの学生と称する人から投稿があり、
「うーむ」と思いました。

「中国は政治は共産党一党独裁、経済は資本主義市場経済、これを矛盾と
いうのはたやすいですが、いったい13憶とも15憶とも言われる多民族国家の
人民が一斉に豊かになりたい、と走り出した現状をコントロールできるのは
強力な(軍の力もふくめて)現政治体制だからこそ」というような主旨のコメントが
載っていました。

そして

昨夜は、「中国琵琶」コンサートに行ってきました。
はじめての中国琵琶は私に遠いシルクロードを吹く風の音、隊商の鈴の音を
連想させて楽しいものでした。それになつかしい「蘇州夜曲」「夜来香」・・・・。

琵琶演奏の閻杰(えんき)さんをはじめ、二胡、これもはじめて聞いた中国古箏
奏者の皆さんはいずれも美人揃い、流暢な日本語でトークも上手、私の少し
とがった中国への思いを和らげてくれました。

パンフレット表紙  奏者紹介ページ

お互いの「文化」を識り、尊重することも理解への第一歩・・・大事なことを
気づかせてくれた日でした。


横山国男
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2007年03月12日(月)更新

50年前の“The Saturday Evening POST"誌

写真は1954年11月13日発行の同誌です。(価格は15セント)
もう一つは'68年11月号の“Esquire”誌(1ドル)です。

2誌の表紙

どちらもアメリカを代表したグラフ誌。
当社の専務が「フィフティーズ」のデザインなどのために資料
として所蔵しているもので、数十冊あります。

POST誌にはまだ日本製品の広告がありませんが、14年後の
Esquireには「SONY」「Canon」の広告が顔を出しています。
懐かしいスターもよく登場していて、パラパラとめくって
いるだけですが、興趣が尽きません。

見開きのGM「Pontiac」の広告イラストレーションなどは巨大な
アメリカそのもので、最近佐世保に入港して話題となった
原子力空母「ロナルド・レーガン」などより大きく見えるような
気がするのも面白いところです。

ポンチャック見開き

アメリカがすごい自信と矜持を持っていた時代なのでしょうね。


横山国男
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http://www.echi-zen-art.co.jp/

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