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2008年10月19日(日)更新

「君を幸せにする会社」を読んで。

何をもって「幸せ」というかは、人それぞれ違うのでしょうが、「幸せになりたい」と
世界中全ての人が願っている、もっと言えば、人だけでなく生きとし生けるもの全
てがそう願っているに違いありません。

「君を幸せにする会社」(天野敦之著・日本実業出版@1300)を読みました。
本書を書かれた公認会計士の天野さんは、「真善美」メルマガでもおなじみです。
久米信行さんもご推奨の一冊です。

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クマ太郎、プー太、コン吉など寓話の形をとった物語に引き込まれました。
例によって「あとがき」を読み返していますが、多くの心に残る文章がありました
ので、その一部を。

『物語のなかでクマ太郎が悩んでいたように、みんなががんばって利益を追い
求めているのに、みんながますます不幸せになっています。何かが根本的に
おかしいのではないかと多くの人たちが感じています。
こうした問題の根底にあるのは、「利益は創造した本源的価値の対価である」と
いう真理を、多くの人たちが忘れてしまっていることにあると思います。
本源的価値とは、お客様を幸せにし世の中をよりよくすることです。つまり企業
の利益はお客様の幸せの対価だということです。』

『しかし、現実には、多くの企業が、自ら本源的価値を生み出すことなく、お客様
をだますなどして他者から利益を得ようとします。
そのようにして一時的に利益を得ても、結局は損失となって還ってくるだけです。
企業が、継続的に利益を得るためには、自分たちのよさを活かした、自分たち
ならではの本源的価値を創造するしかないのです』

『しかし本源的価値を創造するのは、口でいうほど簡単なことではありません。
自分の利益のために無理にお客様を幸せにしようとしても、それはすぐにお客
様に伝わってしまいます』

・・・引用はここまでにしますが、その解決のカギは「まず自らが幸せになること」
とあり、全てが感謝の対象になる、私たちはついないものに目をむけてしまうが、
あるもののほうが圧倒的に多く、幸せになるために必要なものはすべて与えら
れているのですよ、と著者はおっしゃいます。

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折しも「世界金融危機」「地方経済衰退」のさ中、良書に出会いました。
ご一読をお薦めするしだいです。


横山国男

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http://www.ykougei.jp/
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2008年10月03日(金)更新

もし今の仕事がつまらなかったら

「もし今の仕事がつまらなかったら、それは仕事がつまらないのではない。
あなたがつまらないのだ」。

谷口正和著「オンリーワンのつくり方」(講談社@1500円)の”あとがき”に
「マーケティングアーティストのあなたに」と題して書かれている一節です。

私は本屋さんで本を買うとき、あとがきをまず読むくせがあります。
あとがきは著者が長い時間をかけて産んだ、あるいは汗をしぼって運動した
あとのクールダウンにも似た感慨が述べられていて、著書への、著者への共感
を得るのに参考になりやすい気がするからです。

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仕事がつまらないと思ったことはありませんでしたし、自分をつまらない人間だと
思ったこともあまりないように思いますので、今日まではまずまず幸せな方でしょう。

それでもこのような文章に出会うとギクリとするのは、惰性で仕事をしていたり、
面倒なことから逃げることを続けていると、いつか“つまらない人間”になりますよ、
と言われているようにもとれるからです。

心したいと思いました。

横山国男

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2008年09月19日(金)更新

「まだやってんの」

「まだやってんの」とは、1999年4月に初版が出た邱永漢(Qさん)の実用エッセイ
単行本のタイトルです。(久しぶりに読み返しました)

邱永漢著「まだやってんの」
<中経出版 @1400円>

 この本が出たころ、地元銀行の主催でQさんの同名の「経済講演会」があり、
滅多に講演会というものに行かない私ですが、フアンなので拝聴しに参りました。

邱永漢さんを評価するのは、書斎で、あれこれともっともらしい理屈を述べられる
経済・経営評論家と違い、間違えば全財産を失う(実際のところ何度もピンチに
見舞われたそうですが)実業家でもあるからです。85歳を迎えた現在でも、中国、
台湾他、アジア各地などでビジネスを展開、「金、カネ、マネー」の亡者ではなく、
経済を文化として捉え、「直木賞作家」としての読ませる力、特に「人生とお金」に
ついての卓見は、私の金銭哲学にもなっています。

ご著書数百冊の中でも、「まだやってんの」は、ご本人の生の声、風貌を目の当た
りにしたこともあって、“足元が明るいうちに店仕舞いしなさい”の名文句とともに
忘れられないものです。

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グローバル化とかフラット化とか言ってるうちに、構造不況業種の繊維産業界で
仕事をしてきた当社のまわりでも、ジワジワと需要が減り、かって数十社あった
同業者も数えるほどに、それも企業と言えるスケールではなくなってきています。

また、ここへ来ての原油高で当社のお得意先企業の苦悩は一層厳しさを増し、
さらに我々とは関係ないと思っていた「マネーゲームのプレーヤーたち」の破綻、
ほころびが表面化して、悪くすれば「世界同時不況」どころか「恐慌」にまで発展
するのではないかという話を聞くと、「これからどうなるのだろう」と不安を感じて
おられる経営者は私だけではないと思います。

進めてきた企画・デザイン力のアップ、協業・コラボで「マーケットの転換」「限りなく
 顧客(個客)に近づくビジネスへ」を、一層開拓しなければならないと考えています。

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Q先生、足元の明るいうちに店仕舞いできませんでしたが、なんとか後継者ともども
 知恵をしぼって、長年のお客様も大事にしてやっていくつもりです。
これから先でギブアップして、早く土俵から去っていったかっての同業者や友人・
知人から「まだやってたの」と、言われるのは悔しいですから。

横山国男

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2008年09月10日(水)更新

『癌だから死ぬのではない。

生まれたから死ぬのである。すべての人間の死因は、生まれたことである。どこか
違いますかね』(「人間自身 考えることに終わりなく」 池田晶子)。

特に若い人に「本質」を考えることの面白さ、生きることの大切さを分かりやすく、
そして「哲学」というものに無縁だと思っていた私のような老生に「エッ?」と思わせ
てくれた池田晶子さんも、47歳でその癌に倒れてから一年半あまり。

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今日は、37年前、私たち夫婦の「仲人」をしてくださったIさんの告別式に行くのと、
涼しい初秋の朝ということもあって、池田晶子さんのことがフッと頭に浮かびました。

『便利なことは無条件でいいことだと、現代人は思い込んでいます。手間が省ける、
時間が省ける、目的地に早く着く。つまり時間が短縮できるということが、現代人に
とっての価値なのです。時間というのは自分の人生の時間です。現在の時間を
節約することで、将来にそれが貯蓄できるといった感覚なのでしょう。
しかし「将来」なんてものは、どこにも存在していない。現在幸福である以外に、
幸福であることはあり得ない
。(「暮らしの哲学」)

「思い込み」や「固定観念」が人間を不自由にするのです、と池田さんは教えてくれ
たような気がします。

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 高く美しい空、美味しいもの、そして読書の秋も近いですね。
    「生かされている」ことに感謝したいと思います。


横山国男

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2008年08月19日(火)更新

お盆休みに読んだ本の中から。

お盆休みは体調ももうひとつで、猛暑の中をゴルフに出かける気力もないまま、
ダラダラと過ごしてしまって少し反省しました。

実になる読書もしませんでしたが、その中で一気に読了したのは堤未果さんの
「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命ーなぜあの国にまだ希望があるのか」
(海鳴社@1600-)。

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インターネットと関係があるのでしょうか、最近ジャーナリズム、ジャーナリスト不在
と言われているようですが、確かに地方紙などはオリンピックのせいもあって、
紙面の大半がスポーツ記事です。晩年仲良くしていただいた当地新聞社社長Yさ
んに「新聞はこれからどうなるんですか?」と質問したことがありますが「国際的な
 報道は全国紙、地方紙は限りなく“回覧板”に近づくと思う」と聞いて、そういう
ものかと思った記憶があります。そういえば最近は町内会のソフトボールの試合
結果まで載っていて、大きな考えさせられる報道や論考には接しないようにも思え
ます。

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堤未果さんは、偶然9・11の「ワールド・トレードセンター」の崩壊を、勤務先の
「野村アメリカ」が入っている隣のビルで目撃、その衝撃でPTSD(心的外傷後スト
 レス)に悩むのですが、その報復ともいえるその後の「イラク戦争」をとっかかりと
して、現代アメリカの病巣抜きにこの問題を語れないことに気づきます。

確かに小田実や開高健が戦火の中から報道してきた不自由な時代に比べ、今は
インターネットという優れたツールがあるにもかかわらず、我々は今も世界各地で
頻発している紛争、その犠牲者、一部の富める者と大部分の貧しい人の生活の
実態などを知る機会からいよいよ遠ざけられているようにも見えます。

著者は、久しぶりに出現した硬派の日本人女性ジャーナリストで、大きな外国人に
ひるむことなく取材を敢行し、その抑制の利いた、しかしヒューマニズムとユーモア
に裏打ちされた明るい文章はとても魅力的でした。

この著作を読んでもっとも感銘を受けたのは、世界中「母は強い」ということ。理屈
抜きに「戦争をしてはならない」、もし世界を女性が中心で動かしているならこんな
悲劇は起こらないのではないか、愛する子を誰が戦場に送るものか、と。
アメリカの母もイラクのお母さんも同じだとあらためて強く思います。

サダム・フセインも処刑され、大義名分だった大量殺戮兵器も見つかりません
でした。 2003年3月に開始され、その年の5月には終了宣言が出されたのに、
今も「イラク戦争」は続いています。

あらゆる福祉予算のカット、学費の値上げなどアメリカブッシュ政権は戦費の調達
に邁進しているかに見えます。世界の富の四分の一を所有するといわれるアメリカ
で3100万人もの国民が飢えているという現実を知らせる・・
これこそジャーナリストの仕事ではないでしょうか。

『これから数えきれないほどの壊れた若者が帰ってきても、ここには受け皿がない。
問題は、どうしてそうなったのか? じゃないんだ。なぜ俺たちはベトナムから何に
も学ばなかったのか? なんだよ。』
 リック・シンガー(帰還兵ホームレスセンターのディレクター)』(著作から引用)

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堤 未果さんは「あとがき」で、取材に協力してくれたNYの弱くて強い人々や、出版
にあたっての協力者に礼を述べたのち、最後にそれでも「大丈夫、私たちには
未来を選ぶ自由があるのです」と結んでいます。


横山国男

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