大きくする 標準 小さくする
前ページ 次ページ

2009年02月16日(月)更新

元気が出るミュージカル映画「マンマ・ミーア!」

週末は今世界的に大ヒット中の(ミュージカル映画の興収記録を塗り替えている)
英米合作の映画「マンマ・ミーア!」を夫婦で観に。
製作、監督、脚本、主演すべて女性というからたいしたもんです。

チケット売り場で久しぶりに“人生の達人”と私がひそかに敬愛するゴルフ友達の
Y先輩とその奥さん、娘さんと思しき方にお会いして挨拶を交わしました。
「これ、ブロードウエイの舞台を見たんだけど、映画になったというんで観に来た」。

何代か続いた材木屋さんを数年前さっさと閉め、以降はゴルフと世界の船旅に
夢中。 船上ではパソコンを操り、仲良くなった熟年のみなさんの旅の模様を
DVDに編集してあげて大いに喜ばれている、田舎には珍しいトンデルアラセブン。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

内容充実の「プログラム」(600円)も買いましたが、「ウエブを含む転載不可」
なので写真を載せられないのが残念ですが、まだの方にはこの不況感蔓延の
時期、ぜひご覧になることをおすすめします。ドリンクより元気が百倍します。

まずこの映画は中高年の人にピッタリ。全編かってこれも大ヒットしたABBAの
ヒットナンバーが20曲以上も流れる中、下腹がちょっとプックリの男女俳優が
必死で歌って踊ります。知ってる曲ばかりなので観客はノリノリで大いに楽しめ
ますが、かってのフレッド・アステア、シド・チャリッシのようなエレガンスは全くあり
ませんし、「ウエストサイド・ストーリー」のような研ぎ澄まされた画面もありません。

まあ、来し方を感じさせる「ウエストサイ・ストーリー」とも言えて大共感。
それにしてもこの映画もまた、ミュージカルは初めてというアカデミー賞14回
ノミネート(2回受賞)の大女優メリル・ストリープ一人の大タチマワリ。
「メリルのメリルによるメリルのための」映画のような気もしないではありませんが、
なんとオン年59才、これだけ歌って踊って演技して、には感服します。

各国では観客が総立ちになって、手拍子、足拍子、踊り出すものまで出ている
そうですが、そこは中年の観客が多いせいか日本人は静かに観ています。
それでも私同様、足で拍子をとっていたり、自然と肩をゆすったりせずにはいら
れない、久しぶりの底抜けに楽しいミュージカル映画でした。

美しいギリシャの小さな島の石造りのボロホテルと岬の曲がりくねった石段の
先にある丘の教会という舞台・景色を見るだけでもホッとしますし、暗い世相を
ひと時忘れさせてくれます。

大げさに言えば、猥雑で泣かせるセリフも随所にちりばめられたこの映画を観て
みんなが共感している間は、根拠はないけどなんだか世界は大丈夫なんでは、
 と思わされる素敵なミュージカル映画でした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

出口で再びY先輩にお会いする。
「やっと意味がわかったよ。向こうで舞台を観た時はちんぷんかんぷんだった
から」。


横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2009年01月19日(月)更新

「チップス先生さようなら」(1939ー映画)

18日の昨日、「大学入試センター試験」が終わりました。試験会場から出てくる
受験生たちのはじけるような笑顔が例年どおり新聞に載っています。
進学指導の先生もきっとほっとしているところではないでしょうか。

ちょっと不出来だったのでは、と心配はしていても、今後国公立大の一般選抜や
私立大の入試もこれからあるので、新聞の見出しの『ひとまず「ほっ」』・・・よくわか
ります。
とにかく、期末試験のようなものでも、終わったときのあの開放感はどなたも覚え
があるはず。

私はほとんど映画館へ直行していました。この前、この歳までどのくらい映画を
観た(TVでの放映も含めて)ことになるのかな、と考えてみました。
よくわかりませんが、二千本はゆうに超えていると思います。

昨年末、経済紙に広告が出ていた「名画DVD」(120本)も、1本あたりはレンタル
より安いので購入しました。このうち7~8割は観ているはずなのですが、途中まで
見覚えのあるシーンが出てこないこともあります。記憶力も減退の一途ですから、
「新作」と思えばトクしたような気分にもなろうというもの、あまり気にしません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「チップス先生さようなら」は先述の名画シリーズのものではなく、バーゲンで買っ
たものですが、主演のロバート・ドーナットがあの「風と共に去りぬ」のクラーク・
ゲーブルをおさえて、’39年度の「アカデミー主演男優賞」を獲りました。

チップス先生さようならDVD

「教師は素晴らしい職業よ!! 生徒たちの力になり成長を見守り、社会に飛び
出し活躍する姿を見届ける。いつも若者に囲まれ、教師は歳をとらないわ。」
ウブで物堅く、人気もいま一つのチップス先生が、キャサリン(グリア・ガーソン)と
出会い、結婚することによって少しずつ人間味のある教師に変わっていく。
しかし、初出産がうまくいかず、最愛の妻と生まれるはずだった愛の結晶を同時
に失うシーン。・・・・呆然自失のチップスがそれでも向かう先は教壇だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イギリスのとある全寮制のパブリックスクールを舞台に物語は展開しますが、
ワンパクどもをいつも見守り、大戦(第一次)に影響される生徒や、出征する卒業
生とその家族の心の支えになりたいとオロオロしながら、キャサリンが予言した
「あなたは必ず校長になるわ」も、皮肉なことに戦争のおかげで臨時で命じられ、
「お前が言ったとおりだったよ」と照れながら回想して微笑むシーン・・・・・この
静かな、しかし心動かされる演技の数々がゲーブルを打ち破ったのかも。

トーキー初期の、映画がまだシンプルで分かりやすかった時代の名作の一本だと
思います。(監督は“誰が為に鐘は鳴る”のサム・ウッド)

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2008年05月08日(木)更新

素晴らしかった「黒沢明アート展」(2006)。

前回ブログで2年前に当時日本では福井でのみ開催された、巨匠黒沢明監督の
絵コンテ展「黒沢明アート展」が感動ものだったことを書きました。

このブログを書くため展覧会場(福井県立美術館)で買った「図録」と「T-シャツ」を
探しましたが、どうしても見つかりません。そのうち「あれ!?こんなところに」と
なるのは最近は日常茶飯事なのであまり気にしないことにしてますが。

T-シャツの図柄は「床几に腰かけた武将の甲冑姿」で、おそらく信玄の影武者を
プリントしたものですが、この絵は久米繊維さんのギャラリーの壁にもかかって
いました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

160点余りの絵コンテ(原画)は主にスケッチブックなどに描かれたものですが、墨、
水彩、アクリル、油絵と手法はいろいろ、ササッと描いたものもあれば、かなり時間
をかけて描かれたものもあります。そのほかに日本の代表的画像メーカーがインク
ジェットの最先端技術を駆使して2.5mx4mほどのフルカラー出力の拡大画が
精緻な解像度で30点近く展覧され、これもまた素晴らしいものでした。

このあとイタリアなど海外3ヶ所で展示されたようですから、原画はもちろん、日本
のデジタル印刷の高い技術にも驚嘆したことでしょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

前回ゴッホを凌駕するなどと書いたのは大袈裟ではありません。「ゴッホの自画像」
に似た「農夫」の絵は、きれいな赤と反対色(補色)の鮮やかなグリーンを輪郭の
要所に使い、ゴッホの絵には無い強烈な印象を受けましたし、「夢」の絵コンテ
では、街の上を飛んでゆく黒沢少年(と思われる)の幻想的な飛行体、俯瞰する
街並とのありそうでしかし現実にはない時空を感じさせて、今でも鮮やかに思い
起こすことができます。

深い哀しみを宿す眼光の武将、戦乱の中の女たち、軍馬と美しい旗指物、山、川、
炎上する城、槍衾、ハリネズミのようになった落ち武者など、もう百花繚乱手当た
り次第に沸き起こるイメージを絵にしたようにも見えるのですが、結局、稀代の
映画作家黒沢明監督の頭の中には、一本の映画の何万カットというシーンが全て
撮影前に出来上がっていて、そのイマジネーションで俳優を動かし、道具や光に
こだわり続けた完璧主義者のように私には思えます。

もちろん三船敏郎をはじめ、志村喬、宮口精二、加藤大介、藤原鎌足、千秋実など
“顔”ではなく素晴らしい「日本人の風貌(かお)」を持った名優たちも黒沢明監督の
絵コンテを作り上げる際の重要なモチーフだったに違いありません。

「影武者」の信玄公のコンテなどはどう見ても勝新太郎であり、この映画は勝信玄
が頓挫した段階で単なる「絵巻物」に変わったような気がします。双方にとって不幸
なことでした。仲代達也は「用心棒」が当たり役だったと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

もし、黒沢明自身が「本当は画家になりたかった」と語っているように、黒沢明画伯
が実現していたら、あの強烈で類稀な色彩感覚と深い精神性は、ゴッホというより
ルオーに近いのではないか、と2年経った今でもそんな楽しいことも想像させて
くれる、私にとっては思い出に残る素晴らしい展覧会でした。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2008年05月06日(火)更新

黒澤 明・クロサワアキラと戸田正寿さん。

この数年連休の初めに仙台へ旅行することが恒例になっていて、今年は仙台の
奥座敷といわれる秋保(あきう)温泉へ。

小松・仙台間は50分ほど、自宅からでも2時間ほどで仙台空港なのでとても便利
なのです。友人夫妻がどうしても現代和風建築の粋「茶寮宗園」へ案内したい、
とのことなのでこのような所へ泊まれるのは生涯一度あるかどうかわからないので
お供することに。

ただ、着いた日秋保カントリーでゴルフをした際、右ひざを傷めたようで、帰宅後の
連休後半はずっと自宅でカナイと花を植えたり、読書・TVの毎日でした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんな中、昨日のBS2「クロサワ・アーカイブス特集」を、TVの前でカナイとコーヒー
なぞを飲みながら5時間、トイレに立つ間も惜しみながら、喰い入るように観ました。

30本の監督した映画のほとんどを観、黒澤本もかなり持っていますが、何度観て
も飽きませんね。
夜9時過ぎからの「野良犬」も観て、忘れているシーンもあり、またまた引き込まれて
画面に釘付け状態、至福の「クロサワ デー」でした。

評論家でもない私が、このようなブログで「黒澤 明」「黒澤作品」「映画芸術」など
について、まして自身の人生に深く食い込んでいるであろう「クロサワ アキラ」と
いう日本が生んだ偉大な「映像作家」についてチョロッと語るなど不遜とさえ思い
ますが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ジョン・フォードとジョン・ウエインが作り出した「詩情」と同じように、黒澤作品では
「三船敏郎」が全てであったように今でも頑固に思っています。フアッションは勿論
その風貌、バランスがよく強靭な肉体は今時のイケメンなど足元にも及びません。

三船の剣サバキ(七人の侍の菊千代と用心棒や椿三十郎でのタチマワリ)、ジョン
・ウエインがライフルをずーっと馬上疾走するインディアンを追いながら引き金を
弾く独特の呼吸など「この監督にしてこの俳優あり」(その逆も)と感激したものです。

大体黒澤映画といえば、巻頭豪快な筆文字で書かれたタイトルと音楽で完全に
シビれてしまいますよね。映像と音楽で作られる映画は「総合芸術」といわれ
ますが、デジタルで何でも可能のように見える21世紀、我々は黒澤明のような
作家に再び会えるのでしょうか。

ホームシアターまがいのものを作ったので、これから黒澤明の全作品を少しずつ
鑑賞することを楽しみにしています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちょうど2年前の5月、世界で4ヶ所でしか公開されなかった(日本では福井だけ)
黒澤明の2000点におよぶ絵コンテ原画から200点を展示した「黒澤明アート展」
が開かれ、さらに画家としての驚嘆すべき才能に触れました。中にはゴッホ以上
では、と思われる作品まであり、何度も会場を行きつ戻りつしました。

この稀有な展覧会がなぜ福井で開かれたかといいますと、この展覧会のアート
ディレクター戸田正寿さんが福井県坂井市出身だったご縁です。

私がこれまでに最も心に残る「広告デザイン」に40年も前の「フォルクスワーゲン」
の“かぶとむし(ビートル)”の広告(ビートルが機能を追求した結果のデザインで
あることを訴求するために、このような変な形でも人類が初めて月に足跡を着けた、
として月面着陸船を引き合いに出した広告)と、80年代初頭のサントリーローヤル
ウイスキーの広告「ランボー」がありますが、この「ランボーシリーズ」が戸田さんの
作品であることがわかり、ここでもランボーと黒澤映画がつながったような気がした
ものです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いつかブログで「黒澤明アート展」について書きたい、と思っていましたが、その気
になったので思い出を次回に。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2007年12月20日(木)更新

レンブラントの映画から。

「レンブラントの夜警」という“映画”が来春公開されるそうです。

『・・特に注目されたのが、レンブラントの作品に音や光を当て、絵に込められた
物語を浮き彫りにしようという企画で、選ばれた作品は「夜警」(1642年)。いわ
ずと知れた、彼の代表作である。』(週刊新潮12月13日号)

今年、レンブラントとならぶオランダを代表する画家、フェルメールの作品が日本
でも公開され、大変な人気だったようですが、残念ながら見ずに終わりました。
レンブラントは3年ほど前のお正月、京都の美術館「レンブラント展」で、かなりの
作品を見ることができましたが、「夜警」は一度も来日していないとのこと。

レンブラントといえば、『・・レンブラント・ライトと呼ばれる光と影の強弱を巧みに
用いた・・』(同誌)大画家ですが、私の印象は黒いバックから人物や風景のモチ
ーフが浮かび上がる絵ばかりです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昨年の初夏、軽井沢近くの「ヴィラデストガーデンファーム」の農園主であり、
画家の玉村豊男さんの「一日水彩画教室」でご指導を受けたことがあります。
ワイン作り、料理は勿論、玉村さんの絵のフアンもすごく多いのですが、美学を
修められた玉村さんから印象的なお話を聞きました。

『ヨーロッパの油絵は、黒をバックにそこから「光と影」の表現に向かっていくが、
日本画は白を背景に、ハイライト部分は和紙や絹本の白を活かして描き上げて
いくのです。これはヨーロッパでは水蒸気が非常に少なく、遠景でもクリアーに見
える、対する日本では遠景は常に霞み、「ぼかし」とか「おぼろげ」とかの表現が
多いのは、ひとえに水蒸気、湿気の国だからです』。

ストンと胸に落ちましたが、連想したのは「レンブラント」と「横山大観」でした。
どちらも大変な感動を観る人にもたらしますが、「芸術と風土」は切っても切れない
関係にあることをあらためて感じさせて頂いたお話でした。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/
«前へ 次へ»