大きくする 標準 小さくする

2008年08月19日(火)更新

お盆休みに読んだ本の中から。

お盆休みは体調ももうひとつで、猛暑の中をゴルフに出かける気力もないまま、
ダラダラと過ごしてしまって少し反省しました。

実になる読書もしませんでしたが、その中で一気に読了したのは堤未果さんの
「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命ーなぜあの国にまだ希望があるのか」
(海鳴社@1600-)。

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インターネットと関係があるのでしょうか、最近ジャーナリズム、ジャーナリスト不在
と言われているようですが、確かに地方紙などはオリンピックのせいもあって、
紙面の大半がスポーツ記事です。晩年仲良くしていただいた当地新聞社社長Yさ
んに「新聞はこれからどうなるんですか?」と質問したことがありますが「国際的な
 報道は全国紙、地方紙は限りなく“回覧板”に近づくと思う」と聞いて、そういう
ものかと思った記憶があります。そういえば最近は町内会のソフトボールの試合
結果まで載っていて、大きな考えさせられる報道や論考には接しないようにも思え
ます。

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堤未果さんは、偶然9・11の「ワールド・トレードセンター」の崩壊を、勤務先の
「野村アメリカ」が入っている隣のビルで目撃、その衝撃でPTSD(心的外傷後スト
 レス)に悩むのですが、その報復ともいえるその後の「イラク戦争」をとっかかりと
して、現代アメリカの病巣抜きにこの問題を語れないことに気づきます。

確かに小田実や開高健が戦火の中から報道してきた不自由な時代に比べ、今は
インターネットという優れたツールがあるにもかかわらず、我々は今も世界各地で
頻発している紛争、その犠牲者、一部の富める者と大部分の貧しい人の生活の
実態などを知る機会からいよいよ遠ざけられているようにも見えます。

著者は、久しぶりに出現した硬派の日本人女性ジャーナリストで、大きな外国人に
ひるむことなく取材を敢行し、その抑制の利いた、しかしヒューマニズムとユーモア
に裏打ちされた明るい文章はとても魅力的でした。

この著作を読んでもっとも感銘を受けたのは、世界中「母は強い」ということ。理屈
抜きに「戦争をしてはならない」、もし世界を女性が中心で動かしているならこんな
悲劇は起こらないのではないか、愛する子を誰が戦場に送るものか、と。
アメリカの母もイラクのお母さんも同じだとあらためて強く思います。

サダム・フセインも処刑され、大義名分だった大量殺戮兵器も見つかりません
でした。 2003年3月に開始され、その年の5月には終了宣言が出されたのに、
今も「イラク戦争」は続いています。

あらゆる福祉予算のカット、学費の値上げなどアメリカブッシュ政権は戦費の調達
に邁進しているかに見えます。世界の富の四分の一を所有するといわれるアメリカ
で3100万人もの国民が飢えているという現実を知らせる・・
これこそジャーナリストの仕事ではないでしょうか。

『これから数えきれないほどの壊れた若者が帰ってきても、ここには受け皿がない。
問題は、どうしてそうなったのか? じゃないんだ。なぜ俺たちはベトナムから何に
も学ばなかったのか? なんだよ。』
 リック・シンガー(帰還兵ホームレスセンターのディレクター)』(著作から引用)

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堤 未果さんは「あとがき」で、取材に協力してくれたNYの弱くて強い人々や、出版
にあたっての協力者に礼を述べたのち、最後にそれでも「大丈夫、私たちには
未来を選ぶ自由があるのです」と結んでいます。


横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/
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