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2008年12月03日(水)更新

「プロジェクトX」のDVD。

プロジェクトX DVD (NHK)  NHKの人気番組だった、「プロジェクトX」。
  終了して早くも数年経つようですが、どうしても
  見たい一本があり、先日DVDを購入しました。

  「桂離宮 職人魂ここにあり ~空前の修復作戦~」
  (平成15年9月2日放送分)です。

仕事には直接関係ありませんが、昔から建築に興味があります。

戦前、政治信条でヨーロッパに居づらくなった著名な建築家ブルーノ・タウトが、
日本の建築学界の招きで来日し、そのまま亡命してしまいました。
国際港だった敦賀に上陸したその翌日、憧れていた京都の「桂離宮」を訪れ、
「死ぬほど美しい」と言ったことは有名です。

あの優美な屋根の曲線、対して北山杉の柱、白壁の直線で構成される純木造の
離宮は、今から400年も前の庭園を含めた日本建築の「粋」として、外国からの
賓客も必ず訪れますね。
一度はゆっくり拝観したいものですが、まだ実現せずにいます。
(参観は宮内庁京都事務所へはがきで申し込む)

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「プロジェクトX」のDVDは、この桂離宮が、老朽化し崩壊の危機にさらされている
ことがわかり、京都中の名工たちを結集して、一万もの木材を解体・修理・完全
再組立ての過程を追ったものです。天井裏に積もった400年近い「ほこり」まで
回収、これはあとで大変役に立つことになりました。

こういうモノを見ていると胸がドキドキするのは、つくづく私には父とおなじ職人の
血が流れているんだな、と。生まれ変わったらこういうプロジェクトに参加できたら
どんなに幸せだろうと思います。

昭和51年、6年の歳月をかけて、見事に再生されるわけですが、印象的だった
のは、工事の元請けで大阪に本社のあるゼネコンO組の若き「ビル屋」Mさん。
高卒で入社、20代でビル建設の現場監督はこの人の優秀さを物語りますが、
この世紀の難工事の責任者に34歳で抜擢されるのです。(選んだ会社も偉いと
 思いますが)

和風建築を全く知らない彼は、ある晩一夜にして白髪になってしまうというほどの
プレッシャーに耐え、気難しい「名人・名工たち」を指揮して工事を完遂します。
仕事への責任感は自分への「挑戦」でもあったのでしょう。

当時のお顔も「仁王」というニックネームに似ず、意志の強そうな面立ちの男前で
したが、30年後の平成15年、この番組に登場された際のお顔がまた素晴らしい。
この大きな仕事を成し遂げた自信が、さらに次の仕事を成功に導くという人生を
送られたのでは、と想像しました。
失礼ながら、久し振りに見る優しさと自信にあふれた素敵な日本の「男」でした。

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NHK「プロジェクトX」を毎回見ていたわけではありません。ドキュメンタリーでも
なく、どちらかといえば「物語仕立て」で、あの独特のナレーションもちょっと好み
ではありませんでした。(中島みゆきの主題歌はグー!でしたが)

しかし、戦後日本の復興、高度成長、世界に冠たる先進の技術や手仕事など、
それを支えた多くの無名の技術者や名人・名工たちに光をあてた優れた番組
だったと思います。

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DVDを観た直後、この「プロジェクトX」を制作統括したI氏が、つまらない犯罪で
逮捕されたという報道が流れ、NHKのニュースでも「お詫び」がありました。

Mさんのように生きることができなかったのには、どのようなわけがあったのだろ
うか、とちょっと暗澹とした気持になりました。

桂離宮 森 蘊著 1955年(修理前) 東都文化出版 桂離宮 修学院離宮 2004年(修復後) 京都新聞出版センター

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/
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