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2008年07月03日(木)更新

『神様、この会社が社会のお役に立たないのであれば、

どうぞつぶしてください』・・ダスキンの創業者である鈴木清一氏は、創業時こう祈
ったそうだが、本来あるべき創業の精神とはこのようなものだろう。「はじめに心
ありき」なのだ。(後略)

この文章は、谷口正和さんの新著「日本へ回帰する時代」(繊研新聞社1800円)
の“創業へ。そもそも何のために始めたのか”に、はじめに「心」あり、と小題を
つけて書かれているものです。

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谷口さんは1942年京都生まれ(私と同年)、武蔵野美大を出て現在マーケティング
 コンサルタントとしてご活躍中ですが、3年ほど前、福井県産業支援センターが
企画した「デザインワークショップ」に参加し、講義を拝聴して深い共感をおぼえ、
ご著書の殆どを読ませていただきました。当社は谷口さんの持論を実践、実現
しようとしているといっても過言ではありません。

要は「量産・量販・低価格競争に未来はない。経済活動とその所産である「文明」
ではなく、これからは精神活動とその所産である「文化」を経済・経営の柱に据え、
そこへ回帰していく。すでにその兆候は表れている」という主旨で、私も同感です。

もう一つ「直感」の時代に入ってきた、として、
「特に女性リードの時代においては、ますます直感的判断が重視されるようになる
だろう。いかに政治家や企業家が、とうとうと理論を述べても、テレビの前の女性
たちは直感的に嘘か本当かを見抜いている。「3秒」もあれば十分なのだ。
それは言葉としてのロジックを聞いているのではなく、見た目や表情といった視覚
的要素を見ているからだ。聞いているのではない、見ているのである。言葉は嘘を
つけるが、表情は嘘をつけない。とても動物的ではないだろうか。(後略)

この意見は、賢い消費者が増えているのだ、お客様第一と口では言いながら、
結局は作り手、売り手側の論理が透けて見えるようでは成功しませんよ、という事
だと思います。

著者の意図とは少し論旨が外れるかも知れませんが、恰好のサンプルがあります。
一連の「食品偽装問題」などで、次々とTVカメラの前に立たされた「社長さん」の姿
です。中には「何で?」という表情の経営者もおられましたが、そういう人たちは、
本書でも紹介されている松下幸之助翁の次の言葉、即ち「経営者としての王道」
を踏み外したのではないか、と自戒をこめて思うこの頃です。

『経営というものは、天地自然の理にしたがい、世間大衆の声を聞き、社内の衆知
を集めて、なすべきことを行っていけば、必ず成功するものである』。

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話は冒頭に戻りますが、鈴木清一さんのような「祈りの経営」を実践されておられる
静謐な経営者も内外にきっと多くおられるのでしょうね。 私には程遠いことですが。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2008年07月02日(水)更新

水を考え、絵を考える。

瑞々しい=みずみずしい・・・・大好きな言葉。夏の雨、濡れた街路樹、虹、夏の
果物などなど。

石油の次の戦略物資は「水」ともいわれますが、日本は世界でも稀な水道水を直
に飲める国(他は米国のみとか)。年間の降雨量が豊富で、山岳部に降った水は
伏流水となって、中には100年もかかって除染され、ミネラルをたっぷり含み私達
の体に到達します。古来より「水神様」を祀ってきたのも頷けます。

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深山幽谷のみならず、里山の谷あいにも発生する霧、もやなど日本は水蒸気の
満ちる国でもあります。この水蒸気がおぼろげとか、かすみゆくとかの風景、遠景
を演出するのは、湿度の低いヨーロッパの平野部などと決定的に違うところ。
黒、闇をバックに描きあげてゆくレンブラントなどの泰西名画と絹本や和紙の白を
ベースに、遠景はうすれぼかされる大観などの日本画を比べればわかりやすい、
とも聞きました。(ヴィラデスト農園主の玉村豊男さんから)

乾燥地ではどこまでも堅固でクリアーに見える、水の国日本では水蒸気で遠くは
霞んでしまう、絵画の世界でも「水」は大きく関係しているのですね。
ともあれ、日本は水を大事にし、経済効率で木材を大量に輸入して彼の地の砂漠
化を助長することを止め、世界第2位の緑被率(国土に占める森林の割合が日本
は67%で1位はフインランドの69%、中国は14%と聞いたことがあります)有効な
活用を再度考えれば、未来は明るいと思います。

スイスは水力発電だけで余剰電力を隣国に売っているようですし、ドイツでは最近
半世紀も前の水車発電装置を再び動かし始めたところが数千箇所もあるといいま
す。水こそはクリーンなエネルギーの源泉でもあります。
           地球にとっても人間にとっても。

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ところで水と言えばここのところズッと気になっている水彩画が2点。

マダガスカルの風景(1) マダガスカルの風景(2) 

「SEVEN SEAS」というラグジュアリー誌の中綴じの表紙になっていて、画家は
牧野伊三夫さんという人。雑誌「暮らしの手帖」、サントリーの機関紙「WHISKY
VOICE」などの表紙や挿絵でも高名な方のようです。(Wikipediaから)

パッと見たときから魅せられて、こんな水彩が描けたらと、たびたび取り出して眺
めています。真っ白な紙にシンプルに楽しそうに線と色が交じり合って、白くて強い
日差しの中、マダガスカルの街と人の風景が素敵です。

O先生(私の水彩画の先生)にお見せすると、「うーん、すごいね。なかなかこうは
描けないなあ。ヘタウマに見えるかもしれないけど全然違うんだよね」とか。
・・・・線が生きていて確信に満ちている、遊びはあるが無駄が無いんだそうです。
道の遠さを思い知らされますが、こちらはアマチュアなので、そこは気楽に水と絵
の具がつくる世界も出たとこ勝負、思いがけない喜びと失敗の一喜一憂が楽しい
のです。

若い時代、生活をするということの重みを軽くジャンプして、好きな道をまっしぐら
に進んだ人をこの歳になってうらやましく思いますが、サラリーマンから見れば私も
そう見えるかも知れません。

横山国男

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2008年07月02日(水)更新

7月1日は「半夏生(はんげしょう)」。

「半夏生」とは、二十四節気だけでは農作業の基準が分かりづらかったため、更に
細かく分けた七十二節気から生まれた言葉で、夏至を3つに分けた最後の3分の1
の期間を指す、すなわち夏至から数えて11日目の7月2日頃から七夕頃までの
5日間が半夏生で、田植えの時期の目安とされている。(日本文化いろは事典より)
農家の出だった母はいつも「ハゲンショ」と言っていたような気がします。
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福井や金沢では1日からが「半夏生」。福井ではこの日“サバの丸焼き”を食べる
風習があります。発祥は奥越前の大野といわれていますが、江戸時代、田植えで
疲れた農民に栄養を取らせようと、藩主が推奨してから、と伝えられていますが、
大野市内の一軒の魚屋さんでもこの日1200本のサバを焼くといいますから、
全国版の「土用丑の日・うなぎ」の地方版ですね。生きのいい油の乗ったサバが
近くの海で豊富に採れることも背景にあるでしょう。

「恵方まき・まるかぶり寿司」のように、知恵のある人が現代に甦らせて、上手に
商売にしたという側面もあるかもしれませんが、最近元気の無い地方の「お店」に
とってはいいことだと思います。

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一方、金沢(加賀地方)はこの日から「氷室(ひむろ)饅頭」が売り出されますが、
これはとても有名。(この日、金沢のDデパートの地下の和菓子屋さんはどこも
行列でした)。

7月1日(旧暦6月1日)、この日は藩政時代に加賀藩から幕府へ「氷」を献上する
ため江戸の藩邸へ出発する日。冬の間に「氷室」と呼ばれる半地下室に氷をため
ておいた室(むろ)から、氷を取り出し、筵と笹の葉に何重にもくるんで江戸へ。

無事将軍に届くために、神社に饅頭を供えて祈願すると同時に、暑い夏を越す
体力を養い、無病息災を願う意味もあったようです。
金沢の人は1個くらいでなく、この日はいくつも食べるようです。

毎年小松の仕入先のO君が、名店の「氷室まんじゅう」をたくさん届けてくれ、社員
も楽しみにしています。ありがとう。
あらかた食べてしまい、「あっ、カメラ」と思ったときには残り1コだけでした。

半夏生サバと氷室まんじゅう

横山国男

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