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2008年06月12日(木)更新

スピード社の水着の謎。

スピード社製の水着が話題になっています。ほとんどの方は何が起きているのか
についてご存知だと思いますが、今年2月以降の世界新記録37のうち35までが
スピード社のレーザー・レーサー着用、日本選手もびっくりしているようです。

ところで一体何が違うのか、繊維加工などの業界にいるものとして、この分野でも
日本のハイテクが断然優位と思っていましたから、ミズノ、アシックス、デサントの
オフシャルサプライヤー3社もショックでしょうが、大変興味がありますので、当社
の顧客で「繊維の表面加工」にも技術があるH社常務に聞いてみました。

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中でも昨年まで長年スピード社と結んでいたライセンス契約を解約したミズノの
苦衷は察して余りありますが、今年から契約したゴールドウインもまさかこんなこと
になるとは予想していなかったに違いありません。(株価上昇だそうですが)

ハイテクの水着はいずれのメーカーも水との相性や人体メカニズムの研究を重ね
て素材は勿論、縫製のやり方まで極限まで追求しているはずですが、面白いのは
ミズノは水になじむ素材で抵抗を減らし、動きやすさのために縫製のパーツも
増やした、対するレーザーレーサーは水をはじく(撥水)加工と、超音波を利用して
縫い目のない無縫製を取り入れていること。

さらにK常務の話では、レーザーレーサーは魚の鱗のメカニズム研究と浮力を
得るのにも独特のノウハウがあるのではないか(きわめて薄いフイルムを布地と
合体させる、いわゆる膜加工?)、また着用するのに20分ほどかかるそうで体の
凹凸をできるだけ減らし、流線型を作り出すようにしているのではないか、など
興味深い話を聞かせてくれました。

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日本の繊維加工の技術の高さは世界一といってよいはずです。旅客機の重量
軽減に突出した性能をもつ「炭素繊維」などは鉄の10分の1の重量で必要な
強度を確保できるといいますし、合繊など人造繊維分野では人工血管や様々な
風合いを持つ糸、織物が次々と今も開発されています。

しかし今回の五輪を前にした「水着騒動」は、自他共に認めていた日本の独壇場
がまた一つ揺らいだような、繊維業界にマグニチュード8くらいの衝撃を与えた
ものとして記憶されると思います。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2008年06月11日(水)更新

薄れ行く「時の記念日」・・「金は時なり」。

昨10日は「時の記念日」でしたが、一昨日このブログに時計の話題を書いたのに
記念日のことはすっかり忘れていたのです。
考えてみればそれで時計の催事があったんですね。

なぜ気がつかなかったのだろう、と思い10日の地方紙をくまなく見直しましたが、
やはり「時の記念日」に関する記事はまったくありませんでした。
例年見たと思う「時計店」の一覧広告もありません。
今や「時の記念日」は祭日でもないので、忘れられつつあるのでしょうか。

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時の記念日は1920年(大正9年)に制定され、欧米人並みに時間を尊重する
意識を国民にもってもらうことを目的に、生活改善同盟(!)が選定したそうです。
6月10日というのは、「日本書紀」天智天皇の条、水時計創設の記からとった
ものだそうですが、「時間の大切さをかみしめる日」と意義付けられている、と
あります。(セイコーホールデイングス(株)の記事より)

またカシオのインターネット調査によると、一日24時間では足りないと考えている
のは世界で日本人が一番で、あと8時間くらい欲しいそうです。
なにかセカセカしている割には能率が上がっていないのではと思いますが、それも
ちゃんと数字に出ています。
各国の1時間の価値は、日本9200円、アメリカ39000円、ドイツ43000円、
中国9700円と、中国よりも低いのです。
よく日本人の労働生産性が問題視されますが、我々は時間をもっと大切に扱う
心構えが必要かもしれません。

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どのような境遇に生まれようとも、時間は人間に平等に与えられているもの。
「時は金(カネ)なり」と言いますが、金(キン)にまでするのは一人ひとりの勉強と
工夫次第。
「ブログBusinessMedia誠」連載“山口揚平の時事日報”(’07.04.17)にこんな
記述があり、膝を打ちました。後継者や若い人に読んで欲しいと思いました。
(私には間に合いそうにもありませんので)

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<前段略>
「今後必要になるのはタイムイズマネー?マネーイズタイム?」(山口揚平)

ところで日本人は、借金が嫌いである。多くの人がお金を借りるのではなく、お金を
貯めてから、何か事を起こそうとする。よく言えば堅実と言えるが、裏を返せば
「お金をコントロール」する力に長けていないという見方もできる。
 私は、お金は、社会への貢献の結果であるとともに、将来の可能性そのものだ
と思う。日本人はこれまでお金の話題を避けてきたが、そろそろお金を肯定的に
捉えるのはどうだろうか。

 お金には生き金と死に金があるはずだ。「消費」のために借金をするのは、愚の
骨頂だが、将来への投資のためにお金を使うスキルと勇気を養う必要がある。
資本主義の世界では明確なビジョンと、可能性の高いプランさえあればお金を
調達することが可能だ。お金がないから何かができない、と考える必要はない。

 そう考えると、これからの私達若者に必要なことは、時間を切り売りしてお金を
得る「時は金なり」の発想ではなく、「金は時なり」と考え、お金をコントロールしな
がら、大きな将来ビジョンを達成してゆくスキルではないだろうか。(引用終わり)

横山国男

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2008年06月09日(月)更新

2億円!の腕時計。

先週末は所用があって京都のD百貨店へ。

全店「割引セール」の最中でしたが、公務員のボーナスもまだでしょうし、このところ
全国の百貨店の売り上げは、対前年比マイナスが続いていますから、心なしか
静かな感じ、消費に元気がないようにも見えました。

夕刻、カナイが地下の食品売り場へ行くといいますが、このごろはすぐ疲れて、
とても付き合う気持ちになれず、中吊り広告で盛んにPRしている「世界の時計
フエスティバル」の催事会場を覗いてみることにしました。

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これだけのブランド(40あまり)が集まると、さすがに「世界の・・・」をつけても納得
ですが、価格は数十万円代は少なく、数百万円から千万単位のものも結構あって
はなっから目の保養、よい仕事を見せてもらういい機会くらいのつもりでしたから、
値段にはビックリもしません。

しかし一番奥まったショウケースの上に、さらに2点だけ別のケースに収まっている
2つの腕時計は、000,000、・・・とタグのお値段の0を数えているとナント2億
ウン千万円。もう一つも一億円以上。さすがに驚きました。

「フランク・ミュラー」の究極の機械式時計で、宝石は使っていますが、宝飾時計
ではありません。「拝見サセテイタダキマシタ」というのが正直な感想でした。
時間があれば手にとって見たい、「持ち重り」も味わいたかったのですが、ともかく
人類が作った最も小さい機械の中で最も高価なものかも知れません。

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勿論国産の高い評価の時計もありました。おなじみの「グランドセイコー」それに
カシオの「Gショックシリーズ」、今回シチズンがマンを持して発売した「カンパノラ」の
ミニッツリピーターとパーペチュアル。30万円前後の価格ですが、これがもし完全
機械式だとゆうに2千万はする、という日本の時計技術の粋を集めたものらしい
です。(クオーツ等を使っているから安く出来るというわけ?)。

同じシチズンなら「経営者会報」の裏表紙にここのところずっと広告が出ている
「ザ・シチズン」(21万円)が「上質」を感じさせて精度、デザインとも私には好感が
もてます。

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時計のメカ(心臓部)ともいえる「ムーブメント」にクオーツ(水晶発振子)を使って、
一時は世界を制覇する勢いだった「日本の時計メーカー」は、量産とコストダウン
の繰り返しの中(最後は1個100円とも)途上国のコピー製品にまで組み込まれて
苦境に追込まれました。一方崖っぷちに立たされたスイスのメーカーは機械式と
意匠にこだわることで息を吹き返しました。日本の産業の未来を暗示する好例で
すね。(私も友人から5000円で譲り受けた「中国製ヴァシュロン・コンスタンタン」
を持っています。嵌めはしないのですが、あまりにもよくできていて、“日中産業
戦争の敗戦記念品”として机の上にあります)

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大概の男なら「車と時計」には興味があるでしょう。時間もよくわからない女性向
「宝飾時計」や「宝石」などにはピクリとも反応しないのは、要するに「メカ」がない
から。
少年時代にラジオや目覚まし時計を分解してしまった経験者も多いはずです。

私も時計好きなほうで、10個ばかりありますが、どちらかといえばメカよりデザイン
の面白いもの、服装との連想(TPO)から買うので値段の高いものはあまりありま
せん。
熱心にショウケースを覗きこんで、あるいは販売員と話し込んでいる老若男女の
お金持ちお客さんたちを横目に会場を後にしました。
比較的安い方のものでも、とても手が出る値段でないことは勿論ですが、機械式
は面倒な方だし「時計マニア」でなくてよかった、と思いました。
こういうのを負け惜しみと言うんですかね。

横山国男

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2008年06月06日(金)更新

上級(高級)と上質の違い。

最近「上質」という言葉が目に付くようになったと思うのですが、私だけでしょうか。
モノのない時代、あるいはある程度ものが行き渡る過程では、「高級」という言葉
の持つ響きがステイタスや夢を感じさせました。

このところ高級品マーケットやブランド品に異変が起きている、販売の落ち込みが
続いており、ユーロ高もあるのか、一部のブランド品が日本マーケットで値下げを
し始めたというのは過去の不景気の場面でもあまり例がないとのこと。
しかし、一方では高価な「客船クルーズ」などは販売と同時に完売らしいので、
いよいよ「モノからココロへ」の動きが顕著になってきたのかも知れません。

また「高級車」「高級旅館」などの「高級」もあまり使われすぎれば、「高級」の条件
の一つ「希少性」が希薄になるのは当然です。
そこへ「上質なライフスタイルへの提案」などと言われると、なにかありそうな感じを
受けてしまいます。
そこで「高級(上級)」って何?「上質」とは?ということになるのですが。

こんなことを考えていて「ああ、これかも」と高級(上級)と上質の違いに思い至った
一つの例は「船場吉兆」さんの話題。
 昨年末不祥事が明るみに出て、「民事再生」がボディーブローのように利いて、
フラフラになったところへ、先日の「お料理使いまわし」や「残り物利用」などの
アッパーカットでついにダウン。廃業に追い込まれてしまったのですが、「高級
料亭」だったけれど、「上質料亭」ではなかった、ということではないでしょうか。
特に経営者の経営理念の「貧しさ」を感じさせられたように思います。

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こういうところでの「お食事」などとは無縁だった人の中には「ザマーミロ」と言う人
もいるようですが、それは「上質」ではありません。
廃業の記者会見で女将が「のれんにあぐらをかいていました」と涙ながらに語って
いましたが、年はとっても女性ですから「あぐら」などはこれは「上品」ではありませ
んし、毎回「涙」を武器に使うのも上質ではないですね。

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ある雑誌でエッセイストの沢樹 舞さんが、経験と知性を重ねて輝きだす「上質を
愉しむ人生」と題して、そもそも「上質」とは何だろうか、華やかなファッションモデル
から一転、物書きとして、またソムリエとして新たな人生を求めてフランスのボルドー
のシャトーに住み込んで畑仕事に明け暮れたという生活から、

『思いがけず、ひとは上質の意味を知ることがある。あの旅の経験こそが、自分
自身に計り知れない自信と勇気を与えてくれた。「上質」を求めるとき、物を選ぶ
目だけでなく、生き方さえも変えてしまうのだ。そんな人生もまた上質なのだと思う』
と書かれています。

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わが敬愛するゴルフマナー研究家鈴木康之さんも、「週刊ゴルフダイジェスト」に
もう5年間、250回以上もエッセイ「AZAMIの教え」を書き続けておられます。
副題は “上級より上質。ゴルフマナー修得講座”です。

思いがけず、船場吉兆さんのケースは「上級(高級)と上質」の意味を考えさせて
くれました。

横山国男

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2008年06月05日(木)更新

倒産しても死んだらあかん!

年をとると朝早く目が覚めます。一昨日でしたか、早朝4時過ぎに目が覚めて、
TV(NHK総合)のスイッチを入れると、表題のショッキングなタイトルで相原和幸
さんと言う方がお話し中でした。

ご自身も会社を倒産させた経験者だそうで、(出資を受けていた会社が経営危機
に陥った瞬間、突然取引銀行が相原さんの会社の当座もクローズしてしまった
とか。すごいことをやるもんですね。)今はNPOを立ち上げて、この経験から企業
再生、悩んでいる経営者への助言をライフワークにされているようです。

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年間3万人を超える自殺者、それも再び増える傾向にあるようですが、この中には
経営に行き詰った中小・零細企業の経営者が多く含まれていると言われています。
相原さんは「倒産しても死んだらあかん」と題して、次のようなことを話されましたが、
真面目な人、努力家であればあるほど過重な責任感に押し潰され、「早く楽になり
たい」と思う気持ちも痛いほど分かるのです。

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<相原語録>
○ 「見栄は捨てよ、誇りは捨てるな」
   毅然とした態度で。そして礼節を失わないこと。
○ 「気力回復の材料を見つけなさい」
   自分よりさらに苦しい人もいる。つらい気持ちを癒してくれる、小さなことでも
   よいからモノ・コトを見つけなさい。(花でもメダカからでも命の尊さを教わる
   ことができる、と言う風に私は受け取りました)
○ 「倒産はオレのせいじゃない、と思うこと」
   但しそれは自分の心の中で。(グローバル化やフラット化の中で頑張ったんだ)
○ 「法を守り、法に守られること」
   法に沿った解決を。(自身の混乱が収拾を難しくするのではないでしょうか)
○ 「償いの気持ちを忘れずに」
   債権者への弁済ということだけにとどまらず、これからはハンディを乗り越え、
   社会に貢献するぞ、という広くて強い心を持つこと。

走り書きでメモしましたので、相原さんの真意を十分伝えられていないかも知れま
せんが、大略そんなお話だったと思います。
また、ITが挫折を生む場合もあるが、話者自身のようにNPOなどでITを利用して
立ち直るきっかけを得ることもできる、とも。

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零細な企業の倒産は、経営者から全てを奪います。家・屋敷・信用はもちろん、
経済的後ろ盾を失くしたと考える子供達も離れていきます。頼みの妻も「なぐさ
め、励ましてくれる人」ばかりではありません。(偏見かも知れませんが、女性は
こんな場合でも本当に強い人が多いように思います。昨日までの何不自由の
ない暮らしでも、状況が変われば人が変わってしまったような亭主をおいて、
さっさとパートにでも出る強さがあるように思います。リアリスト(笑)なんでしょう
が、それはそれで救われますし、翻って男は本当は弱虫だと自分自身思います。)

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想像してみます。 債権者から逃れ、小さなアパートを見つけて、あれからの一人
暮らしももう2ヶ月。踏み切りの前でズボンのポケットに手を入れれば、硬貨が
二つ手に触るだけ・・・・・・・・・“オレはもう終わりだ”。

商売やビジネスがうまくいっているときの「男」は強いものです。なんでも出来る
ような気になります。しかし暗転したとき、「この人は強いな」と思った人にはこの
30年で二人ほどしか会ったことがありません。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
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