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2008年01月29日(火)更新

バーキンが“バーキン”を踏んづけた。

久しぶりに面白いTV番組を見せてもらいました。それは昨夜10時からの[SMAP
xSMAP](フジテレビ系)、フランスの女優ジェーン・バーキンがゲストとして登場
した「ビストロSMAP」のコーナーです。

セーターにダボッとしたパンツで、靴はどう見てもかなり履きこんだコンバースの
バスケットシューズ、靴紐を長くしてふくらはぎにまで巻きつけ、「バレーシューズ
みたいでいいでしょ」と。パンツを捲り上げれば、なんとグレーのタイツ(今はレギ
ンスというのかな)を穿いていらっしゃる。ここしばらくの東京の寒さ対策かも知れ
ませんが、日本のオヤジから見れば、モモヒキといわれかねないいでたちです。

「ナイル殺人事件」「地中海殺人事件」「美しき諍い女」などで、印象的なこの英国
生まれのフランスの名女優さんも、今や60過ぎとあれば、カッコつけないのかも
知れませんが、それよりフランクでスタッフに協力的で、とても人柄の良さが滲み
出て、好感を持ちました。

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J・バーキンといえば、世界中の女性が憧れるエルメスのバッグ「バーキン」。
彼女と飛行機で隣り合わせたエルメスのデュマ前社長との出会いから、制作に至
った経緯も紹介し、持ち歩いている使い込んだ自分の「バーキン」の中身も、中居
クンが「見せて欲しい」と言うと、アッケラカンとテーブルの上にぶちまけて、驚きま
した。

和食を希望して、「おいしい、おいしい」を連発、出てくるものを次々と平らげる健啖
ぶり。勝負は木村拓哉・草薙剛のチームに軍配を上げましたが、ご褒美に持って
来させたのは、ブラウンとキャメル色の「バーキン」一個ずつ。
これには、さすがの木村、草薙の二人も興奮気味。

日本で買えば、先ごろまで一個80万円と聞いたことがあります。(今はユーロ高で
もっとするかも)。しかも一年待ちとか。

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サプライズは続きます。木村クンが「これ、男でも持てますよね」「ウイ、モチロン
デス」と、二つのバッグをやにわに床に置くと、コンバースを履いた足でガンガン
踏みつけ、口を引っ張り、パンパン叩きます。

会場騒然、木村クンも「あーっ、バーキンが、・・・」と口あんぐり。
「ドウ、コレデチョットイイカンジデショ」 木村クンの顔を撫でる仕草は、顔の脂を
つけなさい、手垢のついた感じもいいものよ、いろいろぶらさげて楽しみなさい、
すなわち「長く使って自分のバッグにするのよ」・・・参りました。

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この衝撃的な映像をご覧になった「ブランド命」の日本女性は、眞に幸運だったと
思います。
なぜなら、「ブランドとはなにか」を一発でJ・バーキンが説明してくれたように私に
は思えたからです。

最高級の皮革と高度の縫製、「ブランド」と尊称されるバッグが簡単にへたるもの
ではない、という実証よりも、どのようなモノでもそれは所詮モノであり、大切なの
はそれを使う人間なのよ、ブランド品を使いこなして、ブランドに負けない人間で
あってこそのブランドなのよ、と言ってくれている気がしました。

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長い間、食事や欲しいものを我慢し、憧れの「バーキン」を手に入れたい、と涙
ぐましい努力をするという話も聞きますが、私はケッコウそういうのは好きです。
昔からの日本人の「舶来品崇拝」「ブランド信仰」が、いいものとは何か、を学ぶ
のに大いに役立ってきたし、日本の高品質なもの作り、審美眼にも影響を与えて
きた結果、アジアでは一歩先んじているとも思います。

願わくば「ブランド」というものの本質を学ぶことによって、人と物の関係に思いを
致せば、さらに日本のモノつくりが磨かれる気がします。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
http://www.ykougei.jp/
【オーダー よさこい屋】
http://www.yosakoiya.jp/

2008年01月28日(月)更新

白鵬とASASHOURYU。

久しぶりに、大相撲の中継を見ました。
千秋楽結びの優勝を懸けた「白鵬と朝青龍」の力相撲は、私にとっても永く記憶に
残る名勝負、大一番でした。

それにしても、この同郷の二力士のキャラクターは、朝青龍の事件で一層際立っ
た感じがします。

朝青龍がヒール(悪役)のイメージを相変わらずキープしているように見えるのは、
それが地で、本人は優等生などくそ食らえと思っているようで、私は嫌いではあり
ません。
以前のブログにも書きましたが、土俵外でのオチャメな言動など、頭の回転も
早く、ナイスガイだと思います。何より相撲を「アスリート」感覚で見せてくれる
のは、彼をおいて他にいません。

一方の白鵬については、このところあまり大相撲を見なかったので、よく知りませ
んでしたが、なによりびっくりしたのは「外国人力士」という違和感が全く無い、
それどころかかっての出羽錦とか、北の富士など日本人力士と全く体型も同じ
で、(やはり同じモンゴリアンだからでしょうか、琴欧州などとは上下のバランスが
違います)し、日本語も流暢、識者が強調してやまない横綱としての風格、様式美
までも兼ね備えてきたように見えます。

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それでも朝青龍がプロレスラーに見えるわけではなく、キャラの違う二横綱が、
一敗同士で賜杯を懸けて、ものすごい死闘を繰り広げた初場所千秋楽結びの
一番は、色々な意味で、「大相撲」が新時代に入ったことを予感させます。

日本人新弟子が皆無となった昨年、逆に言えば「大相撲」がグローバルなプロス
ポーツとして生きて行かざるを得ない、エポックメーキングな年として「2008年初
場所千秋楽の大一番」が記憶されるのではないかと、思いました。

フランクフルト在住の日本人ブロガーが書いていますが、衛生中継での大相撲の
人気はドイツなどでも高く、海外各国で放送されているようです。
大相撲は昔から「興行」と称しているのですから、相撲協会は「ロンドン場所」や
「ロサンゼルス場所」も、年一回ぐらいは開くことを考えた方がよいかも知れません。
大リーグでも開幕試合を日本でもやるようになってきている時代ですから。

横山国男

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2008年01月27日(日)更新

赤フン。

先週末、当社の新年会を、近くの居酒屋で開きました。低予算で飲んで食べられる
この手のお店があちこちに出来ていますが、それでもどの部屋も一杯で、年末の
予約申し込みでも、1月末近くになってしまったようです。

ようです、というのは新年会や、たまに行う飲み会は、近年は後継者の娘夫婦に
セッティングを任せています。日ごろあまり物言わぬ静かな従業員でも、飲んだり、
食べたりするうち、従業員同志は勿論、経営者への本音なども聞かれますから、
若い後継者にはいい勉強の機会でもあります。

「飲ミニケーション」とはよく言ったものですが、最近は会の半ばを過ぎると、私は
「お先に失礼」することにしています。その方がなお盛り上がるように思えますので。

「新年おめでとう。創立30周年を迎えられた謝辞と、今年は特に原材料、資材が
更に騰がると思われるので、コストダウンを全社で取り組みたい。社長からの
メッセージ伝達、一日の仕事や作業を振り返る日報を今年は作りたい」など簡単な
挨拶をして、この1月末に還暦を迎える当社の専務に乾杯の音頭を頼みました。

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乾杯のあと、還暦の祝いに贈られたのは、従業員一堂がサインした「赤フン」、
“赤いフンドシ”で、大盛り上がり。早速ジーパンの上から着けると大拍手、本人も
「なんか、久しぶりにエネルギーが充満するな」と言って大いにウケてました。

「はまじい」こと浜本専務は、会社創立後すぐ入社してくれ、気難しい私と長年本当
によくコンビを組んでくれました。
団塊主流で正義感が強く、当時は京都の名門R大で学生運動も結構やった彼が、
なぜ当社のような零細な企業にきてくれたのか、本人曰く「いやー、やんちゃした
ので大きいとこは採ってくれないですよ、それにここは仕事おもしろそうだったし」と
言っていたような記憶があります。

私は30年も会社を続けられたおかげは彼にある、とさえ思っています。
勿論リーダーとしての資質も十分ですが、生活文化関連分野における彼のデザ
インの知識とセンス、黎明期のパソコンに嵌って以来(“マックの神様”と私は尊称
してます)、還暦とは思えない“若いグラフイックス”を今でも自在に生み出す能力、
こんな人材にはその後も会ったことがありません。(ちょっとマニアックな“はまじい
のもの作り日記ーブログ”も書いていますので、当社サイトからどうぞ)。

私は幸運でした。後継者に言いたい。早く第二の「はまじい」を見つけるか、育て
ねばと。

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毎日、顧客とのやりとりの中で、専務にも私にも共通しているのは「お客さんが考
えていること、すなわちデザインのイメージを“共有”できることの重要さ」です。
いろいろな依頼があるわけですが、受ける側がどれだけの「引き出し」を持って
いるか、ということで、そのためには意識して毎日「モノとコト」を注意深く観察し、
意味を考え、美意識に裏付けられた好奇心が欠かせません。

新しく通りに出来た「看板」一つでも、そのデザインの良否は勿論、それが持つ
メッセージの社会的意味にまで興味を持たないと「産業のデザイン」は出来ない
のでは、と思います。事物に無関心な人にはこの仕事は向かないでしょう。

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60歳(還暦)などは、まだまだ若い。これからも頑張って後進の指導をよろしく。
近いうちにまた時間を忘れて、飲んで話しましょ。

横山国男

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2008年01月25日(金)更新

東京新聞「結いの心」を愛読しています。

Web版「東京新聞」に、「結いの心」という連載があって、楽しみに読んでいます。

長野県最北、お隣はもう新潟という日本有数の豪雪地帯、「栄村」からの発信で、
村長は高橋彦芳さん(79歳)、平成の大合併に異を唱え「小さくても輝く自治体
フォーラム」を企画して、2003年には全国の首長も集まったとあります。

『彼(村長)は、よくこんな問いかけをする。「百姓が丹精込めて作ったコメが茶わん
一杯16円ぐらい。汽車で売り子が回ってきてコーヒー一杯飲むと300円。本当の
価値は、どちらにあるか」効率が最優先、カネにならないものは切り捨てるーという
風潮をもたらしたグローバリズム。競争に明け暮れる世界で、モノの値段が決まって
いく。「そんなのわしら百姓が勝てるわけねぇだろ」』(引用終わり)

舌鋒するどく、山里の現実から今の日本という国を語りながら、どうしたら農業を
守ることができるかを、栄村でのいろいろな事例を述べながら、時には愉快に時
には切なく報告をして下さいます。

「結い」とは、村に住む住民全てが参加する無報酬の「共同作業」で、かって住民
の中にも青、壮年者が多かった時代は道を直したり、河川の清掃など奉仕作業
的性格が強いものだったようですが、今はそれに加えて「高齢者の一人暮らし」の
家の雪下ろしなど、命にかかわることまで、それも高齢化した村人で対処しなけれ
ばならなくなって、大変な時代になっていることが読み取れます。

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子供の頃、私の住む地域でも、家の前の小さい川に掛かっている橋を何年か毎に
町内の親父さんたちが、材料を持ち寄り、架け替えたり、補修をしていた記憶が
あり、作業が終わると一杯飲んで、父親は赤い顔でご機嫌で帰ってきました。

これを当地では「結い」といった記憶はありません。こういう「共同作業」を何と言っ
たのか忘れましたが、今でも休日に近郊の農村部の集落を車で通ると、住民が
それぞれ道具を手に、小河川の清掃や、花壇の手入れをされている地区を目に
します。もう長い間、このような作業に参加していないので、ゴルフ場へ行く時など
は、なにか申し訳ないような気持ちでいつも早々と通り過ぎてしまうのですが。

「結い」のことを「普請(ふしん)」という地域もある、とこのブログに書かれています
が、私の地方では「普請」というのは、「道普請」、「家の普請」を指していたように
思います。
職人だった父が「男には普請をさせよ、女には子を産ませよ、と昔から言うもんや」
などと、今から考えると問題発言になりかねない物言いをした記憶がありますが、
考えてみると、新しい家が建ち、子供が次々と生まれるということは、社会がどん
どん成長していく時代だったわけですね。

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今では精々、家内のガーデニングの手伝いぐらいしか土に触れることのない私が、
「お百姓さん」の中身を語ることは僭越ですが、「農業」こそ未来の「日本の産業」
として最も有望だと信じています。

「情報」とか「金融」とか、不確かなものに振り回されるより、戦後の「農業政策」の
失敗とは別に、「品種の改良」や「機械化」「バイオ」などの分野で蓄積されてきた
日本の「農業力」は、「公害防止技術」「環境維持技術」とともに、世界はもとより、
まず自国の食と安全保障に大きく貢献するのでは、と思うこの頃です。

横山国男

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2008年01月21日(月)更新

恐怖のジャカルタを行く。

先週末、駆け足で「日本インドネシア平和条約締結50周年」を記念して、国営の
ガルーダ・インドネシア航空が主催するイベントに参加してきました。

出発直前、NHKスペシャル「新型インフルエンザの恐怖」-世界流行寸前ーという
ショッキングな番組が二夜連続で放映され、インドネシアが取り上げられたので
正直ビビリました。
番組を見て心配した友人から、「タミフル」と「99.5%の効果があるマスク」を頂い
たのですが、「帰国後一週間は会わないから」などと冗談めかして言われました。

ひょっとするとジャカルタの空港には、防護服に身を固めた特殊部隊が配置され
て、緊張した状況にあるのでは、などと妄想しましたが、全くそのような雰囲気で
はありませんでした。冷静に考えてみれば当たり前のことですが。

20日には秋篠宮ご夫妻がジャカルタを訪問され、「友好年オープニング式典」
にご出席されたとのニュースも昨日の新聞に出ています。
ジャカルタは平穏でしたが、他の東南アジア各国に比べ、また過去2回旅行した時
とでは日本人(観光客も)はかなり少ない印象を受けました。
そうは言っても「鶏インフルエンザ」の患者が12月にも確認され、ジャカルタ市内
の病院に隔離されたという報道も影響しているのかも知れません。

出発日には福井は15センチほどの積雪があり、寒い日でしたが、ジャカルタは
日中は30度近い気温、TシャツでOKというのは身も心も開放されます。

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中国は勿論、東南アジアの各国がすさまじい経済発展を遂げつつあるのは、承前
のことですが、年金や格差問題、少子高齢化など内向きになっているといわれる
日本はこれらの国にあまり関心が無いように見えます。やはり若い人が多い国は
活気があって、投資先としても有望な筈ですが。

バンコクもそうですが、ジャカルタも巨大な空港、中心部の高層ビル群は10年前
にはあまり見られなかったものですし、世界の資金が集まってきていることを実感
させられますが、一部郊外にきれいなニュータウンが造成されつつあっても、
通りに面した店や民家でも10年前同様、貧しいたたずまいのままで、このあたり
は韓国などの都市化とは大分違うように思えます。

特にインドネシアの都市のゴミの多さには辟易させられますが、ジャカルタも世界
の大都市と呼ばれるためには、公衆衛生をなんとかしなくてはならないのでは、
やはり「鶏インフルエンザ」などとも関連付けて考えてしまいます。

もう一つは、交通渋滞の恒常化です。人もバイクも車も一緒くたに動いていて
(自転車はほとんど見かけません)信号は幹線でもほとんど無く、不思議なルール
でなんとかなっているようですが、明らかに限界を超えているように見えます。
子供や老女が道路に飛び出し、直進車を止めて、曲がる車を誘導する(運転手
からなにがしかの小銭をもらう)命がけとも思える光景があちこちで見られます
が、思わず「危ないッ」と声が出てしまいます。

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10数年前、インドネシアのバンドンにある繊維工場に製版技術を指導した縁で、
このオランダ統治時代の面影の濃い高原の美しい都市を訪れたことがありますが、
当時は華僑が経済の実権を握っていて、インドネシア人は工場労働者がほとんど
でした。ただし政府や地方の行政府でも中国人はタッチできない、と聞きました。

面積は日本の約4倍、1万5千とも言われる大小の島々で構成されるインドネシア。
首都ジャカルタの人口は1300万人ほど、東京と並ぶ大都市ですが、日本人に似
てシャイといわれ、小柄でスリムな人たちが多いこの国が、世界有数の資源国で
あることを活かして、まず国民の生活環境が良くなることを願わずにはいられません。

超高層のビルを見上げるでもなく、日中でも多くの働き盛りと思われる男たちが
ただその辺に腰掛けて通りを眺めている風景は、シンガポールや上海では今は
あまり見られなくなったように思います。

10年後に果たしてインドネシア・ジャカルタは変わっているでしょうか。

横山国男

【染型工房 横山工藝】
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