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2007年06月27日(水)更新

<人・モノ・私(2)-アンチックの革トランク>

西洋アンチックという場合、大体60~70年ほど経ったものなら、ということを聞いたことがあります。

トランク外観 トランク内部

写真の「革トランク」は、日本製で1930年代大阪のBABAMANというメーカーのラベルが内側に貼ってあります。
ものすごく堅牢な作りで、内張りの生地(綿布)も完璧、今でも使えますが、これが空港のターンテーブルから出てきたら、皆さんきっと驚くでしょう。

これは10数年前、小松市の知り合いの骨董屋さんで見かけて即買いました。ラベルやシールの残った「革トランク」を手に入れたいと念願していましたので、小躍りして言い値で買いました。

持ち主はM.T.さんという大阪市の技師だったことがタグに残された名刺でわかります。トランク自体にもしっかりしたイニシャルの刻印があり、誂えで作ったものかもしれません。

ラベルを仔細に見ると、1938年、39年ごろヨーロッパへ旅行して(おそらく仕事だと思われます。地下鉄の関係者であることが名刺の肩書きにあります)N.Y.K.(日本郵船)のKASIMAMARUで渡欧したこと、しかも1等のキャビンだったようです。
タグ ラベル・シール

ヨーロッパはナチスドイツの台頭で、戦雲色濃くなる時代、このカバンは持ち主とともに
ベルリン、ブラッセル、パリへ(ホテルのシールから)、そしてクイーン・エリザベス号やクイーン・メリー号を擁したイギリスの客船会社CUNARD LINEのラベルも貼ってありますから、ロンドンにも渡ったことでしょう。(ROYAL ALBERT DOCK LONDONのラベル)

いろいろ夢想は尽きず、楽しいものです。
あきれたカバン好きで、スーツケースだけでも大小7個ほど、その他ボストン、ブリーフケース、キャリーバッグ、ガーメントケース、などなど30個はくだらないと思いますが、
70年も経ているものはこれのみです。


横山国男

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2007年06月19日(火)更新

次の5年、”自社の環境問題”をテーマに頑張る

6月は世界的に「環境問題」を考える月として、国連その他、学者・研究者から
温暖化、資源の枯渇などに対する提言・警告が連日TV番組などで特集が組ま
れて、「これはえらいことになる」と思わざるを得ません。

日本でも6月を「環境月間」としています。
「年金問題」で頭がそっちの方へいってしまって、「それどころじゃない」という
ことかも知れませんが、資源の枯渇や、新興国のエネルギー需要の爆発的な
伸びが、価格の高騰、物価の押し上げにつながり、「年金暮らし」の甘い老後
などを夢見ていると、ひどい目にあうのでは、と思ったりします。

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当り前のことですが、人間は自分が生きている間の体験や事象の変化しか
「実感」できないわけですが、どう考えても私の経営者としてのこの30年は、
(60年間日本は戦争には直接関係なかったことをのぞいても)、振り返って
「環境」という視点からみると、とんでもない時代だった、と。
私たちはこの点では”A級戦犯”として将来裁かれるかも知れません。


今時、盛大な創立記念のパーティーや、賀詞交歓の年賀会などは、株主から
クレームがつくという理由でも減ったそうですが、あの大量の食べ残しや、
もらっても困ってしまう記念品など、「こんなことをしているといつかはバチが
あたる」と考えたのは私一人ではないと思います。

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先に豊かになった日本(物質的にですが)は、なかなか新興国に対して「資源・
エネルギーの大量消費」を「いけないこと・考えなければならないこと」として
強調できないウラミがありますが、ここはひとつ「自社・自分」からできることを
始めなくては、という気になっています。

3Lの排気量の車に乗って「なにを偉そうに」と言われれば、一言もありませんが、
これからの5年、「省エネ・省資材」をテーマに「コンパクトな会社・工場造り」を
目指すことに決めました。


近くの里山に登って(頂上の茶屋で時々昼飯を食べますが)、市街を見下ろすと、
わが社は周辺に民家が多いので、屋根が結構大きく見えます。
ここに「ソーラー設備」「雨水(中水)利用」など、いろいろなアイデアが浮かんで
きます。
いずれも高額な設備費がかかるでしょうから、おいそれとはいかないでしょうが、
何とか一部でも実現するのを「最後の仕事・地球への罪滅ぼし」にしたい、と
考えています。


親友の建築家で「環境問題の実務家」でもある友人が、「OA機器や湯沸かし
ポット、TVなどすべての待機電力をやめると原発3基が要らなくなる」とか言って
いましたが、とりあえずこのように小さなことから始めなくては、と思います。

その前に、コンセントを抜くため、山になっている本やガラクタの類を片付けなく
てはなりませんが。


横山国男

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2007年06月13日(水)更新

【明大生さんとの一問百答】・・・積善の家(企業)に余慶あり

<質問>
企業が利益を追求することは当然と思いますが、昨今起きている企業不祥事を見ていると、利益を
過度に、あるいは容易に求める体質に原因があるように感じています。
みなさまは、企業の過剰な利益追求について、どう思われますか。

(明治大学商学部 名越蔵人さん)



過剰な利益とは縁遠い地方の小企業主が考えていることです。

ご質問のなかに「体質」という言葉がありますが、簡単に言うと現代社会は
あまりに経済偏重、すべてを「カネ・マネー」というモノサシでしか計れない、
すなわち「拝金主義」が蔓延してしまった、ということにあると思います。


「積善の家に余慶あり」という諺は、「易経」にあるのだそうですが、その方の
素養がありませんので、ただなんとなく今回のご質問で思い浮かんだだけで
すが、「余慶」とは慶事の余ったものの意味のようで、「いいことがやってきま
すよ」の意とか。

「利益」を余慶と考え、「余計」とも解釈すれば、おのずと企業活動の目的や、
その結果としての利益、そして分配も正しいものになるのではないでしょうか。

「陰徳あれば陽報あり」という同様の諺もあるのを最近知りましたが、「積善・・
・・」と同じような意味で、ただどちらも「隠れて善行を積む」という意だそうです
から、私にはなかなか出来ないことですが、実践されておられる経営者個人、
企業もかなりあるのでは、と推察します。(当然表には出されませんので)


逆にいえば「余慶たる利益」は「積善」の結果からしか生まれないし、企業を
永続的に発展させようと思ったら、これが一番確実な方法かも知れません。


横山国男

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2007年06月12日(火)更新

「人・モノ・私」-1。 ”石田縞”と母さんの夜なべ

♪母さんが夜なべをして手袋編んでくれた・・・・という懐かしい唄がありますね。
夜なべの語源はよく知りませんが、現代でいうと「残業」みたいなものでしょうが、
そういう味気ない言葉ではニュアンスが伝わりません。


私たちの年代で、この唄から連想するのは、季節は冬、外は木枯らしか雪、
場所は囲炉裏端、綿入れの半纏を着た頬っぺたの赤い子供たち。
母親がいるシーンとしては「里の秋」もとても好きですが、今の子供たちにはなか
なかイメージするのは難しいでしょう。

子供の頃、私の家は市街と農村の境目ぐらいにあり、中学校はまわりはすべて
田圃、親戚には農家もありましたので、農家、農作業はなじみ深いものでした。
雪深い土地なので、このあたりの農家は冬はもっぱら家の中で「むしろ」「縄」など、
春になると必要になるものを、時には「夜なべ」までして手作りしたようです。

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福井市に隣接する鯖江市に「石田地区」というところがあります。
ここで昔から織っていたのが「石田縞」といわれる綿の小幅の素朴な織物。
たしか「石田藩」というのも聞いたことがありますから、「小藩」の物産としての
位置付けがあったかも知れません。

石田縞1 石田縞2

詳しくは知らないのですが、おそらく産業とか企業というスケールではなく、
農家の女性の副業として、「いざり機(はた)」と呼ばれる手織り機で織られて
いたものと勝手に想像しているのですが、かなり前に姿を消してしまいました。
高度成長期には、採算のとれる仕事ではなくなったからだと思います。


写真のような柄は子供のころの布団に見覚えがありますから、おもに布団の
側(がわ)、紺無地のものは、このへんでいう「さっくり」という上半身は柔道着
のようなもの、下は股引のような農作業着としてよく見かけました。

昔は結構農家で副業として「機を織った」ようですね。私は工業高校で「紡織科」
でしたから、実習でよく機を織りましたが、小幅のこのような綿織物を織るのも
楽しいものでした。

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このような「手機(てばた)」で織られたものには、「信州紬」や「白山牛首紬」
などが現在も工芸品に近い伝統織物として(その多くは機械式織機)残っては
いますが、「石田縞」のような素朴な織物は以前は各地にありました。

母親は「縞割」といって、その糸の本数や配列を、小布の見本を貼った和紙の
小ぶりの帳面に「覚え」として書きつけました。それが「縞帳」と呼ばれるもので、
娘が嫁入りする時、持たせたという話もあります。

中にはコレクター垂涎のものもあり、美しい「デザイン帳」ともいえるものもあり
ます。
おそらく世界各地にこのような例があり、バティックやマドラスチェックなどもそう
いう形で伝えていったのではないかと思います。

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残念ながら私は若い頃、そのような貴重なものという認識がありませんでした
ので、何も持っていないのですが、写真の織物は最近「謝礼」として2mほど
頂いたものです。

「古い呉服屋さんから、石田縞を一反譲って頂いたので、これを改装するホテル
のロビーに飾りたいが、どんな方法がいいですかね、やってもらえませんか」と
いうご相談があり、当社では経験がないので、パネルに仕立てる工房をご紹介
しました。

「もし、余り布が出たら頂戴できませんか」とお願いしておきましたところ、余りは
ほとんど出なかったので、その呉服屋さんにわざわざお願いして、残っていた別
の柄のものを探し出して届けて下さったものです。


手で撫でると節があり、ちょっとゴワゴワしていますが、「絹もの」とはまた違った
土の匂い、おふくろを思い起こさせる「優しさ」を感じさせていいモノです。


横山国男

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2007年06月11日(月)更新

「中国が世界をメチャクチャにする」という本

元『フィナンシャル・タイムズ』北京支局長だったジェームズ・キングという人
の書いた「中国が世界をメチャクチャにする」(草思社 1600円+税)を
読みました。

本の表紙

一気に読ませる理由は、この本が著者(英国人)自身が山東大学に留学し、
その後中国や日本におけるジャーナリストとしてのキャリアと、勿論筆力の
故でしょうが、「現代中国人の特にビジネスにおける所業」を、著者自身が
全て中国と世界の各地で、実地に取材・検証している点にあると思いました。

その点では、ドキュメンタリーでもあるのですが、それにしても直載な表題です。

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この本を読んで考えさせられたことはいくつかありますが、二つほど。

一つは私自身の仕事と関連の深い、繊維・アパレル産地イタリアのプラート
に何が起きたか、です。(プラートは一つの典型的な例です)

プラートは10年ほど前、繊維を地場産業に持つ福井が、モデルとして盛んに
取り上げたことがあります。

しかし、この700年に及ぶ織物の伝統を持つヨーロッパの古い町が、ここわずか
5,6年のうちに繊維関連企業六千社が半分以下になってしまった、という事実
の陰には、中国でも特に起業家精神旺盛な「温州人」が、大挙して移住し、
どん底の下働きから、技術、ファッションビジネスのやり方まであっという間に
習得し、本国へ持ち帰って、強烈な低賃金を武器に世界に進出をはじめたこと
にあるようです。

わが愛すべきプラートのイタリア人にとっては、いったい何が起きたのか、
未だに夢の中での出来事ではないのか、と思っているかも知れません。
700年の歴史がたった5,6年で崩壊したのですから。

最初は蛇頭の手引きで、命がけで渡ってきた温州の少数の人たちが、低賃金
で長時間働いてくれるので、そのうち合法的に移民として、市の商工会議所
等が音頭をとって、積極的に受け入れたのです。
今やプラートの人口18万人のうち中国人は2万人、チャイナタウンが出現し、
帰化した人も多いようです。


二つ目はベオグラードの中国大使館がNATO軍によって誤爆された時の、
著者の親しい友人、中国人外交官(女性)のとった行動の記述です。

この外交官が反米デモの中に加わり、北京のアメリカ大使館に投石している
現場に出くわした著者が、友人とは思えない怒鳴り声に呆然と立ち尽くす
場面です。

アヘン戦争から1世紀半におよぶ屈辱を口にし、「中国人はいつか復讐を
果たすことを思い知らせてやる、その時初めて痛みがわかるだろう」と熱弁を
ふるった、と書かれています。

しかし、話はこれで終わりではなく、1ヶ月後にハーゲンダッツで再会した時、
WTO加盟協議の話題にふれ、彼女は「長い目で見て得になる譲歩をする
用意はあるのよ」と言った、とあります。


この本は私に最近の「反日デモ騒乱」や「日本の移民受け入れ原則拒否の
国是」について深く考えさせられる一冊でした。

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しかし、このあと、さらに二つの考えさせられることがありました。

信州松本に在住するSさんのブログを毎日楽しみにしているのですが、松本と
いう地方都市から、日本人の暮らしと投資感覚、興隆するアジアの経済に関
する的確な分析などに好感と尊敬を持って読んでいます。

先日Sさんのブログに中国本土からの学生と称する人から投稿があり、
「うーむ」と思いました。

「中国は政治は共産党一党独裁、経済は資本主義市場経済、これを矛盾と
いうのはたやすいですが、いったい13憶とも15憶とも言われる多民族国家の
人民が一斉に豊かになりたい、と走り出した現状をコントロールできるのは
強力な(軍の力もふくめて)現政治体制だからこそ」というような主旨のコメントが
載っていました。

そして

昨夜は、「中国琵琶」コンサートに行ってきました。
はじめての中国琵琶は私に遠いシルクロードを吹く風の音、隊商の鈴の音を
連想させて楽しいものでした。それになつかしい「蘇州夜曲」「夜来香」・・・・。

琵琶演奏の閻杰(えんき)さんをはじめ、二胡、これもはじめて聞いた中国古箏
奏者の皆さんはいずれも美人揃い、流暢な日本語でトークも上手、私の少し
とがった中国への思いを和らげてくれました。

パンフレット表紙  奏者紹介ページ

お互いの「文化」を識り、尊重することも理解への第一歩・・・大事なことを
気づかせてくれた日でした。


横山国男
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